皆様、ぎふチャンのラジオ番組で『きょうもラジオは!? 2時6時 』ってご存じでしょうか?
11月5日午後3時30分、『本地洋一のハート相談所』第10回目の放送です。
心臓や血管の病気は急激に症状が悪化したり、重症化したりするケースが少なくありません。「どんな治療法があるのか?」、「急に悪化した場合どうすれば良いのか?」
「予防策として、普段の生活でできることは何か?」など、岐阜ハートセンターの松尾仁司院長とパーソナリティの本地洋一さん、吉田早苗さんが対談の中で、地域の皆様の命を守るのに役立つ情報を発信していきます。
今回も3密と飛沫対策されたスタジオからの放送でした。
今回のテーマは前回に引き続き『高血圧症』についてです。
吉田早苗さん:『高血圧症』ってよく耳にします。私の周りにも血圧が高くてお医者さんでお薬を処方してもらい、それを内服してコントロールしている方がたくさん見えます。
本地洋一さん:前回は『高血圧症』とはどのような病態で、どのような症状が出るのかをお話しいただきましたが、今回はその続き、『高血圧症』を放置するといったいどんなことになるのか?を教えてください。
松尾仁司院長:『高血圧症』は別名サイレントキラー(静かなる殺し屋)と呼ばれることもあります。その理由は『高血圧症』という病気は当初は自覚症状がないにもかかわらず、『高血圧症』を放置すると徐々に全身の血管や臓器に重大で恐ろしい病気を引き起こす病気だからです。
前回の放送で、安静にしているときの上の血圧が常に140mmHgを超えているときに『高血圧症』という診断をしますとおはなししました。
つまり、『高血圧症』とは安静にしている時でも全身の血管、特に動脈に常に高い圧力がかかった状態なのです。一口に動脈といいましても、大動脈のような太い動脈から脳、心臓、胃・腸・腎臓といった腹部の臓器、さらには目や手足の筋肉、骨など体中すべての臓器や器官に分布して酸素や栄養を届けています。
『高血圧症』を放置するということは、年余にわたり全身の動脈すべてに常に高い圧力がかかり、ストレスがかかった状態を放置するといっても過言ではありません。
つまり、『高血圧症』の放置により引き起こされる病気は全身に及ぶということなのです。
『高血圧症』の放置が引き起こす頻度の高い病気、頭でいうと脳梗塞、脳出血をあげることができます。特に脳出血は脳の血管が破れて血液があふれ出し、固まって「血腫」となって周囲を圧迫し、脳細胞を破壊してしまう恐ろしい病気で、血圧が高ければ高いほど脳出血の発生する頻度が高くなることが知られています。
今から50年以上前は高血圧と脳血管疾患の因果関係がわかっていませんでした。このため本邦では昭和30年~40年代後半は死因別にみた死亡率(人口10万体)脳血管疾患の死亡率が第1位でした。これに対し、日本では高血圧治療の意義、血圧コントロールの重要性が広く啓蒙され、多くの人々が血圧コントロールの意義を理解し、意識するようになってきました。このため、昭和45 年をピークに減少しはじめ、昭和60 年には心疾患(高血圧性を除く)にかわって第3位となり、その後は死亡数・死亡率ともに減少と増加を繰り返しながら減少傾向が続き、平成30 年の全死亡者に占める割合は7.9%となっています(厚生労働省平成30年人口動態統計月報年計の状況より抜粋)。
『高血圧症』の放置は腎臓にも悪影響を及ぼすことが知られています。腎臓という臓器は血液中にたまった老廃物や塩分を尿として体の外へ捨て、体にとって必要なものは再吸収する働きを担っています。このため腎臓にはたくさんの細かい血管により多くの血液が出入りします。この腎臓の糸球体へ血液を送る細動脈が『高血圧症』が原因で動脈硬化を起こすと腎硬化症という病気になり、徐々に腎機能が低下し進行すると人工透析が必要になる場合もあります。
本地洋一さん:『高血圧症』の放置が脳卒中や腎臓病といった恐ろしい病気を引き起こすことがあるということですが、血圧が高いだけではあまり自覚症状がないため、なかなかお医者さんの指導を受けなかったり、お薬が処方されていてもきちんと内服しなかったり、いつの間にかやめてしまったりする患者様がおられるのではないですか?
松尾仁司院長:おっしゃる通り『高血圧症』は初期にはほとんど症状はありません。また処方されたお薬を毎日規則正しく服用したり、生活習慣を改善するために食事制限や運動を継続することは大変なことはわかります。私自身100%継続できるかというとあまり自信がありません。しかしながら、血圧を下げるための降圧治療を途中でやめてしまうと、その後の人生で脳卒中や心筋梗塞、大動脈解離などの心血管事故の発生率が降圧治療を継続した人よりも高いことが知られています。したがいまして、5年後10年後にも元気に生活していくためにも血圧のコントロールは大変重要であることをご理解いただきたいですね。
本地洋一さん:あと、『高血圧症』のお薬にもたくさんの種類があると思いますが、その効き方の違いなんかを教えてください。
松尾仁司院長:『高血圧症』のお薬のことを降圧薬と言います。おっしゃる通り血圧が高くなる原因やメカニズムはいくつかあります。
血液中の昇圧ホルモンが多いためにおこる『高血圧症』、末梢の血管が動脈硬化により弾力を失って血管抵抗が高くなってしまったためにおこる『高血圧症』、自律神経の一つの交感神経の活動性が高くなっておこる『高血圧症』などさまざまです。我々医師は、患者様の『高血圧症』の原因を精査しそれにあった降圧薬を選択し、処方します。お薬以外には、『高血圧症』の原因が昇圧ホルモンを産生させる腫瘍である場合は、外科的に腫瘍を摘出することを選択しますし、腎臓の動脈が動脈硬化により細くなったことが原因の『高血圧症』に対してはカテーテルを使った治療で狭窄を解除する治療法を選択する場合もあります。また、腎臓の血管には血圧を上昇させる交感神経が多く分布していることが分かっていて、難治性の『高血圧症』の中にはカテーテルを使って血管を焼灼することにより、改善させることが可能な場合があることが知られてきて、近い将来実臨床で行われるようになることが期待されます。一方で生活習慣が及ぼす影響を考慮することが大切です。お子さんのうちから塩分を取りすぎないような生活習慣を学校や家庭で教育することにより、将来の『高血圧症』予防につながると良いと思います。
吉田早苗さん:とはいえ、まだまだ私の周りにも塩分の多い濃い味が好みのひとがおおいですよ!
松尾仁司院長:最近は社会全体が食生活に対し健康志向が強くなってきていると思います。例えば、減塩の調味料なども近所のスーパーで手軽に手に入れることが出来るようになってきましたよね!そういった意味では以前よりもご家庭で減塩の食生活が容易になってきているのではないでしょうか。
とはいえ、若い人たちが普通に生活をした場合に一日の塩分量を6g以内におさえるとか、カロリーを控えめにすることはなかなか難しいとも言えます。
例えば、“調味料は控えめに”、“減塩の醤油やナトリウム含有量の少ない塩を使う”、“うどんやラーメンのスープは残す”などからはじめてはいかがでしょうか。
本地洋一さん:インスタントラーメンのスープを残すことにより2~3gの塩分摂取を抑えることが出来るということですね。いずれにせよ『高血圧症』と言われている方はきちんとお医者さんの指導を受けて必要に応じて生活習慣の改善と内服を続けるということですね!
吉田早苗さん:この続きは11月19日(木)にお送りいたします。
また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。
きょうもラジオは!?2時6時 | ぎふチャン | 2020/10/22/木 14:00-16:00 http://radiko.jp/share/?sid=GBS&t=20201105153153
聴取可能期限:2020年11月06日 16:54まで