看護師は、日々いろいろな疾患や背景をもった患者様と一緒に過ごしています。同じ疾患の患者様でも、その方の背景や入院までに至った経緯などさまざまなため、だれ一人として同じ看護をすることはありません。

印象に残っているA様とのエピソードを紹介させて頂きます。岐阜ハートセンターは急性期病院ですが、終末期にさしかかった患者様も入院されます。A様は入退院を何度も繰り返し、約半年以上の年月をハートセンターにて過ごされました。A様は、年齢も若く病状の理解はされていましたが、終末期の受け入れが困難で、時に看護師に強い口調で話され、病状や生活についての説明に耳を傾けることができない日もありました。どのように接したら穏やかに関係づくりができるのか私たちは悩みました。

A様がどのようにしたら病院という環境の中で穏やかな日々を過ごすことができるのか、本人の言葉の裏に隠れているものは何かを何度も何度も繰り返しスタッフで話し合いました。その中で私たちは、少しでもA様との「時間」をつくり「そばに寄り添う」ことが大事ではないかと考ました。A様の様子や発言などから特に、夜間帯の時間は不安になりいろんなことを考えてしまい、苦しくなることが分かり、無理に寝ることを勧めるのではなく眠れない時はスタッフと一緒に過ごすことをA様に提案してみました。看護師間でも夜間の関り方について共有することで、スタッフとは、趣味の話やA様の若いころの話などをしながら一緒に過ごしました。一緒に過ごす時間を積み重ねながらA様の想いを考えA様に寄り添う関わりができるように心がけました。A様も徐々に心を開いて下さるようになり最後には「ありがとう」と私たちに言葉を残してくれました。この「ありがとう」の言葉は、少しでも思いを分けていただきたいという私たちの思いが通じたからこそ、いただけた言葉だと感じました。

入院により非日常を体験している患者様にとって看護師は気づいたら横に居てささいではありますが病気と向き合う患者様の心の寄りどころになれたらと思います。また、最後を迎えた際に患者様・家族にとって少しでも「幸せだったな」と思っていただける関わりをもてるよう日々努力していきます。