『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第58弾~

2022年11月24日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第59回目の放送です。

本地洋一さん:今日スタジオにお越しいただいているのは岐阜ハートセンター副院長の中川正康先生です。

吉田早苗さん:中川先生、初めまして本日はよろしくお願いいたします。

本地洋一さん:今回の放送のテーマは『睡眠時無呼吸症候群』についてです。

なんとなく聞いたことはあるのですが、『睡眠時無呼吸症候群』とはどんな病気でどのような症状が出すのでしょうか?

中川副院長:『睡眠時無呼吸症候群』が世の中にクローズアップされた背景には、2003年の山陽新幹線の運転士の居眠り運転や、2012年の関越自動車道の高速バスの運転士の居眠り運転により、46名が死傷する事故が発生したことがあげられます。

これらの事故は、運転士の『睡眠時無呼吸症候群』と因果関係があることが判明したため、現在では職業運転士へのスクリーニング検査が推奨されています。

『睡眠時無呼吸症候群とは?』

『睡眠時無呼吸症候群』とはその名の通り睡眠中に呼吸が止まってしまうという病気で、定義的には10秒以上の呼吸停止か3%以上の酸素飽和度(SpO2)の低下が1時間に5回以上あると『睡眠時無呼吸症候群』と診断されます。

また、この『睡眠時無呼吸症候群』は、寝たときに息の通り道が閉塞してしまう(閉塞性睡眠時無呼吸症)と睡眠時に脳からの呼吸をするための指令が不安定になってしまう(中枢性睡眠時無呼吸症)2つのタイプに分類されます。

『睡眠時無呼吸症候群』の9割は『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』であることから、『睡眠時無呼吸症候群』とは通常は『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』のことを指していることが一般的です。

『閉塞性睡眠時無呼吸症候群の頻度』

『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』は、50歳代の男性で10から20%、女性で10%弱、70歳代の男性で20%超、女性で10%弱。本邦の潜在的患者数は940万人以上と言われています。

一方で、持続陽圧呼吸(CPAP)療法で治療をしている患者様は65万人です。つまり、『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』の患者様の多くは、ご自分が『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』とは気づいていない可能性があります。

本地洋一さん:寝ている時に頻回に呼吸が止まって、血液中の酸素が低下するということですね!寝ているとなかなか自分が『睡眠時無呼吸症候群』とは、わかりにくい病気なのではないでしょうか?

『閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状』 

中川副院長:おっしゃる通りで『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』はご自分ではなかなか気づかない方が多いです。

自覚症状としては、日中の眠気、熟睡感がない、頭痛、倦怠感、集中力の欠如などの症状がある方、また睡眠中のいびき、無呼吸、睡眠中の呼吸困難、中途覚醒、不眠に気づかれた方は一度検査をすることをお勧めします。

簡易的な検査は、ご自宅で可能で、指先の酸素飽和度と鼻カニューレによる気流を測定することでスクリーニングが可能です。

この簡易的な検査の結果が陽性の場合には、一泊入院して精密検査を行います。これは、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)といって、脳波・眼球運動・心電図・呼吸曲線・いびき・酸素飽和度などの生体活動を一晩にわたって測定いたします。

『閉塞性睡眠時無呼吸症候群が関連した疾患』

本地洋一さん:この状態が続くとどのような不具合が起きてくるのでしょうか? また、命に関わるような恐ろしい病気との因果関係はあるのでしょうか?

中川副院長:睡眠とは、身体や脳を休めるために不可欠な行為です。『睡眠時無呼吸症候群』の患者様は、この休息時間に脳や身体が酸欠状態になってしまいますので、脳内では酸欠の警告アラートが出続けている状態と言えます。特に自律神経をつかさどっている脳の部位は休むことが出来ないまま朝を迎えることになります。この状態が続くと自律神経の乱れを引き起こし、これが様々な病気を引き起こすことが分かってきました。

循環器疾患では、心筋梗塞や心房細動といった病気、糖尿病や高血圧といった生活習慣病にもが潜んでいるという報告もあります。

我々循環器内科医や心臓血管外科医は心筋梗塞に対して、カテーテル治療やバイパス手術を行いますし、心房細動に対してはカテーテルアブレーション手術を行いますが、同時に糖尿病や高血圧などの生活習慣病に対しても血糖や血圧を下げるお薬を処方しています。

近年、これら循環器疾患や生活習慣病の陰に『睡眠時無呼吸症候群』が潜んでいることが分かってきたため、岐阜ハートセンターでも、積極的に『睡眠時無呼吸症候群』の診断と治療に取り組んでいます。

本地洋一さん:『睡眠時無呼吸症候群』は自律神経の乱れの原因となり、自律神経の乱れは様々な病気や生活習慣病に潜んでいることが分かってきたということですね。また『睡眠時無呼吸症候群』の検査としては、侵襲的でないので痛いものではないということですが、このPSG検査で『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』と診断された場合どのような治療法があるのでしょうか?

『閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療』

中川副院長:最もポピュラーで有効な治療法は持続陽圧呼吸(CPAP)療法です。

鼻に装着したマスクから送り込んだ空気の圧で空気の通り道を確保する治療です。患者さんに適した空気圧を設定することで、睡眠中に気道塞がれるのを防ぎ、呼吸がスムーズにできるようになります。

また『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』に関連する因子としては、肥満、男性、加齢などがあることが分かっています。

1. 肥満のある方は、やせる努力をお願いします。

2. 飲酒の習慣のある方、寝る前の飲酒は『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』を悪化することが分かっていますので、睡眠前の飲酒はやめてください。

3. 寝る際の姿勢ですが、仰臥位で天井を向いて寝るといびきをかくけれど、側臥位(横向き)でねるといびきが治まる方は側臥位で寝ることをお勧めします。

吉田早苗さん:中川先生、『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』は完治する病気なのですか?

中川副院長:過度の肥満の方は、やせて完治することもまれにはありますが、基本的には『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』は完治する病気ではなく、管理する病気であるとご理解ください。

吉田早苗さん:ありがとうございます。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。