『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第65弾~

2023年2月23日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 令和5年4回目の放送です。

今回の放送のテーマは『運動と健康について』です。

本地洋一さん: 『運動は身体に良いから、健康のために運動をしなさい。』と大雑把に言われたりしますよね!

今日は、なぜ運動が身体に良いのか?運動の重要性を含めてお聞きしたいと思います。

『洋の東西を問わず、昔から運動は身体に良いと言われています』

松尾仁司院長: いくつか例を挙げますと、リスナーの皆様は「貝原益軒」という人を聞いたことがありますか?この人は江戸時代の儒学者で、平均寿命が50歳程度であった江戸時代にあって、ご自身も80歳過ぎまで長生きされた方です。この「貝原益軒」さんが、83歳の時に『養生訓』という健康についての指南書を執筆しています。この中には長寿を全うするためには運動・栄養・休息に過不足なく生活することを奨めるとあります。

また、疫学的なデータでいいますと、今から70年ほど前の1953年に、イギリスの医師モーリス博士がロンドンの2階建てのバスに乗務する運転手さんと車掌さんの心臓発作と心臓病による死亡を比較した有名な研究があります。

これによると、心臓発作および心臓病での死亡ともに、2階建てのバス内をしょっちゅう歩き回っている車掌よりもずっと座って運転をしている運転手のほうが高く、特に55歳以降に、その差が顕著になっていることがわかりました。

『運動不足は肥満の原因です』

運動というのはカロリーを消費することにより、体脂肪の燃焼に有効です。人は安静の状態、つまり動かないでじっとしていても心臓は動いていますし,呼吸をしています。また、考え事をしたり,胃や腸といった内臓は活動していますから、カロリーを消費しています。これを基礎代謝といいます。

若い頃はこの基礎代謝が活発なのですが、年を重ねて高齢となるにしたがって基礎代謝量は徐々に低下してきます。同じ量の食事をした場合、若い人に比べ高齢の方は脂肪が燃えにくい体質になっているということです。

つまり、運動をしないで若い頃と同じ量の食事をし続けると太ってくるということです。若い頃はやせていたのに、年をとったら太ってしまいぽっこりお腹になってしまったというのは、基礎代謝が低下してきているのに運動量が減っているために食事で摂取したカロリーを消費しきれずに,皮下脂肪として蓄えてしまったと言うことです。

『運動不足と生活習慣病はリンクしています』

生活習慣病とは、食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患の総称です。日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患、更に脳血管疾患や心疾患の危険因子となる動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・脂質異常症などはいずれも生活習慣病であるとされています。

運動不足は、肥満の原因となるばかりでなく、糖尿病、高血圧症、脂質異常症といった動脈硬化の原因となる疾患を引き起こし、それが全身の血管で進行すると、命に関わる恐ろしい疾患つながってくるといえます。

つまり生活習慣の改善の一つとして適度な運動習慣を取り入れることは、肥満や生活習慣病の予防や改善、さらには健康寿命を延ばすための重要なカギとなります。

『運動不足は自律神経の働きを抑えてしまいます』

自律神経系の働きが落ちてしまうと、内臓の働きが悪くなったり,ホルモンバランスが崩れたりすることがあります。

『運動不足は精神疾患の引き金にもなります』

運動は精神状態を安定させる効果があることが知られています。逆に言うと運動不足は、精神を不安定にして精神的ストレスが蓄積して抑うつ状態,うつ病などの精神疾患の引き金にもなり得ると言えます。

このように運動不足は身体的な悪影響ばかりでなく、精神的にも悪影響を与えるということが広く知られています。

本地洋一さん: なるほど、運動不足は恐ろしい病気につながる可能性があり、運動習慣は恐ろしい病気にかかりにくくなるということですね!改めて運動の大切さを認識しました。

ただ、運動習慣を継続するのはなかなか難しいのではないでしょうか?

松尾仁司院長: おっしゃる通りで、平成28年の厚生労働省の国民健康・栄養調査では30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している人の割合は男性35.1%、女性27.4%で半数にも満たず、実際には運動は身体活動の10%に満たない2)とも推測されています。

これら運動習慣のない方々の生活の中に運動習慣を取り入れていただくことが社会の大きな課題となっていると言えます。

いわゆる医学雑誌などには、ちょっとだけ頑張るような運動、強度的には少し汗ばむ程度でしょうか、例えば少し速足でのウォーキングなどを一週間に2.5時間程度することが推奨されています。これは週3回運動する人の場合、1回の運動時間は30分~1時間ということになります。別の言い方をすると1日に7000歩から8000歩の歩行を1週間に3回程度行うことが、健康維持のために効果的な運動ということになります。

全く運動習慣のない方にいきなり1日8000歩歩けというのは少し無理があります。このような方(患者さん)に私が診察室でお勧めしているのは、運動習慣の大切さをお話しした後に、まずは普段より1日に10分だけ多く歩くようにしてくださいと言っています。10分間の歩行は約1000歩歩くことと言われています。これが無理なくできるようになったら、次はもう10分余分に歩けるように頑張りましょうというように、徐々に1回に歩く量を増やしていって、最終的に1日に1000歩を1週間に3回歩けるようになっていただけたらと思います。運動は習慣として長く続けることが、効果的です。このためには無理せず、徐々にが重要だと考えています。

『非活動性熱産生をふやして代謝アップ』

ジョギングや水泳などの本格的な運動によるものの他に、家事や通勤など日常の活動の中でエネルギーの消費につながるものがあります。たとえば、立っている姿勢を維持したり家事をしたりという日常生活の動きをする際に発生するエネルギーのことを非活動性熱産生(NEAT)と呼びます。

今までは肥満の改善や予防に対して運動を増やすことが言われてきましたが、運動以外の生活活動において座位で過ごす時間を立って過ごす時間や歩く時間に変換することが、エネルギー消費量を増やし、肥満の改善・予防となることが期待されています。

https://www.heart-center.or.jp/rehabnow/3932/

本地洋一さん: 先生は循環器を専門とされている訳ですが、普段先生が診ておられる心臓の病気をお持ちの患者さんに対しても運動は必要なのでしょうか?

松尾仁司院長: 確かに病気の種類や重症度によっては、運動することによって危険性が増える患者さんもお見えになります。そのような患者さんに対しては、安全に効果的な運動強度や頻度をしっかりと設定する必要があります。患者さんにお薬をお出しする際にはお一人ずつ処方箋というもので薬の種類や内服の頻度などを決めていることはリスナーの皆さんもご存じだと思います。心疾患を有する患者さんに運動をしていただく際には心大血管リハビリテーション、いわゆる心臓リハビリという形で行います。この際には運動負荷心電図検査や呼気ガス分析などで、科学的に運動耐容能を評価して安全に効果的な運動するための運動処方をいたします。

本地洋一さん: よくわかりました。健康寿命をより長くするため、病気の予防ばかりでなく、病気の治療においても運動が大変重要であるということですね!

吉田早苗さん:次回のハート相談所は2023年3月9日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。