『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第114弾~

2024年2月27日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 令和7年4回目の放送です。

本地洋一さん:今回の放送のテーマは『ウェアラブルデバイス』についてお話を伺いたいと思います。

『ウェアラブルデバイス』って最近ちょこちょこ耳にすることがありますが・・・

松尾仁司院長: 『ウェアラブルデバイス』とは、身に着けられる(Wearable)と機器(Device)を合わせた言葉で、文字通り身に着けることが出来る機器です。

さまざまな情報がデータ化され共有される昨今、生体情報もデータ化して活用する動きが見られます。スマートフォンなどの「持ち運ぶデバイス」ではなく、「身につけるデバイス」である『ウェアラブルデバイス』は、医療の現場でも活用されています。

吉田早苗さん: 生体情報? 聞きなれない言葉ですね!

松尾仁司院長: 確かに一般の方には耳慣れない言葉かもしれませんね。それではまず、生体情報とは何かからお話ししましょう。

医療分野の『生体情報』は、患者さんの健康状態を正確に把握し、診断や治療、予防、リハビリに役立てるための非常に重要なデータです。

医療分野での主な生体情報の種類には、

1. 生命兆候(バイタルサイン):心拍数、血圧、体温、呼吸数、酸素飽和度

2. 生体電気信号:心電図、脳波、筋電図

3. 血液・体液データ:血糖値、ホルモン値、腎機能・肝機能データ

4. 身体の動きと姿勢:加速度、歩行解析

5. 画像診断データ:X線、CT、MRI、超音波など

があげられます。

これらの生体情報は従来病院などを受診した際に医師や看護師が患者さんから自覚症状などを問診し、病院内にある医療機器で測定され、病状と測定した生体情報から医師が診断や治療に役立てています。つまり、病院内で得られる生体情報はあくまでも患者さんが病院内にいる際の情報で、自宅や職場など病院の外にいる際の情報ではありません。

例えば、患者さんにスマートウォッチなどの『ウェアラブルデバイス』を活用してもらい、心拍数や体温、睡眠時間、消費カロリーなどの生体情報をデータ化することで、患者さんの病院外の状態を確認することができます。医療機器と連動させれば、より効果的な治療にも役立てられるでしょう。

また、生体情報のデータを蓄和していくことで、過去の状態も筒単に確認することが可能です。医療をより適切で効果的なものにするために、『ウェアラブルデバイス』は活用されています。

その他にも、健常者が日々の健康管理のために活用したり、臨床試験における臨床データの取得に活用したりと、さまざまな目的で活用されています。

医療で活用される『ウェアラブルデバイス』の種類や機能

『ウェアラブルデバイス』はさまざまな種類があり、搭載されている機能も異なります。

種類としては、アップルウォッチのような腕時計型やリストバンド型、クリップ型、指輪型などが医原の現場で活用されています。これらのデバイスの主な機能としては、光学センサーによる生体情報の計測や、生体電位センサーによる心電図の取得、脳波の計測などがあげられます。

このような『ウェアラブルデバイス』はネットワークに接続されており、loTの一種ともいえます。医療分野におけるloTは「loMT (Internet of Medical Things)」と呼ばれ、近い将来には必需品になると予想されます。

医療分野で『ウェアラブルデバイス』を活用するメリットとしては、主に次のような点が挙げられます。

・ 人手不足を補える

・ 患者をしっかりケアできる

・ 迅速な対応が可能になる

・ 高精度なデータを得られる

などです。

『ウェアラブルデバイス』は常に身につけているため、リアルタイムに体温や心拍数などを取得できます。生体情報はデータとしてネットワークを介して共有されるため、わざわざ人の手で取得する必要がなくなり人手不足を補えます。また在宅医療の患者さんの生体情報を病院からモニターすることも可能なので、遠隔地や交通の便の悪い場所にお住まいの方や、病院を受診することが難しい独居の患者さんのケアも可能となってきています。

しっかりとしたデータを取得できることから、患者の異変を見落とすリスクを軽減でき、異変もリアルタイムに察知できるため、迅速に対応することが可能です。人手不足を解消しながら患者をしっかりとケアできる手段であり、大きなメリットとなっています。

また、従来のカメラや赤外線などの非接触の情報取得方法とは異なり、直接身につけているものであるため高精度なデータが得られます。この点も、医療をより適切で効果的にするために役立っており、『ウェアラブルデバイス』を活用するメリットの一つです。

本地洋一さん: 最近はアップルウォッチのような腕時計タイプで身に着けるだけで心拍数や酸素飽和度を測定してくれるものがスマートウォッチとして市販されていますね!

松尾仁司院長: アップルウォッチは、Apple Inc.の商標で今のところ医療機器としては認められてはいません。したがってこれら市販のスマートウォッチのデータのみで診断をつけたり、お薬を処方したりすることは出来ませんが、病院できちんと精査するきっかけにはなると思います。

本地洋一さん: スマートウォッチなどの多機能な『ウェアラブルデバイス』を活用すると、日常生活の中で脈や血圧、酸素飽和度などをモニターすることによりご自身の健康状態のチェックが出来、ひいては病気の早期発見につながる可能性があるということですね!

松尾仁司院長: 実際私の外来にもスマートウォッチで不整脈を指摘されたといって受診されたた患者さんを診ることがあります。また病院によってはスマートウォッチ外来という外来を設置しているところもあります。その他、現在糖尿病治療の分野では持続グルコースモニタリング(CGM:Continuous Glucose Monitoring)といって、皮下に刺した細いセンサーにより皮下の間質液中の糖濃度(間質グルコース値)を持続的に測定することで、1日の血糖変動を知ることが出来る医療機器が実用化されています。

この機械は、直接血液を採取して血糖値を測定しているわけではなく、皮膚のすぐ下にある「間質液」という液体から、グルコース濃度を測定し、疑似的に血糖値を予測しています。

様々な種類の製品があり、一度装着すると1~2週間までの連続測定が可能で、センサに測定器を近づけることで数値が確認出来るタイプや、連続的にデータを送信してくれるタイプなどがあります。また、低血糖時にアラートを鳴らすような機能を持っている製品もあります。

 

現在では、インスリンポンプと持続血糖測定を組み合わせて、必要に応じて血糖値の変化を確認しながら、安全にインスリン投与を行う事が可能となりました。

本地洋一さん: 今後 『ウェアラブルデバイス』の進歩によって心拍数や血圧のみでなく、様々な生体情報をリアルタイムに持続的により正確にモニターすることが出来るようになってくると、治療内容もより厳密に効率的に、しかも手間かからずに行うことが出来るようになるということですね。

本地洋一さん・吉田早苗さん: ありがとうございました。

吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2025年3月13日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。