こんにちは。理学療法士の久世です。すっかり肌寒い季節になりました。この時期は感染症のリスクが非常に高くなりますので、手洗いやうがいを徹底しましょう!

先日患者様からのやり取りでこういったことを言われました。

「健康診断で『ちょっと血圧が高めですね』と言われたんですけど症状もないしほっといたんですよね」

実は、この『ちょっと高め』が重大な病気への入り口かもしれません。今回はこの事例から「メタボリックドミノ」についてお話させていただきます。

メタボリックドミノとは

先ほどの患者様のお話のように小さな健康問題が、放置すると次々と深刻な病気を引き起こしていく様子を、**ドミノ倒しに例えた概念が「メタボリックドミノ」**です。慶應義塾大学の伊藤裕教授が提唱したもので、下記の図は生活習慣病の進行を分かりやすく表しています。

具体的な例で見てみましょう。

第1段階:生活習慣の乱れ

仕事が忙しくなり、外食が増える。運動する時間がなくなる。ストレスで夜更かしが続く。この段階では「まだ病気じゃない」と思いがちです。

第2段階:肥満(特にお腹周り)

気づけば体重が5kg、10kgと増加。ベルトの穴が一つ、二つと増えていきます。それでも「少し太っただけ」と軽く考えてしまいます。

第3段階:数値の異常

健康診断で「血圧が少し高いですね」「血糖値に注意しましょう」と指摘されます。でも薬を飲むほどではないので、多くの人がここで何もしません。実は、ここが最大の分岐点なのです。

第4段階:臓器への負担

目に見えないところで、血管の壁が傷つき、動脈硬化が静かに進んでいきます。心臓や腎臓にも少しずつ負担がかかり始めます。自覚症状はほとんどありません。

第5段階:重大な病気の発症

ある日突然、胸が苦しくなる。救急車で運ばれ、心筋梗塞と診断される。あるいは脳梗塞で倒れる。糖尿病の合併症で目が見えなくなる、透析が必要になる――こうした事態に至ります。

このように、最初の「食べ過ぎ・運動不足」から「命に関わる病気」まで、まさにドミノのように次々と倒れていくのです。

 

なぜ「負の連鎖」と言われるのか

メタボリックドミノが特に怖いのは、悪循環を生み出すことです。

太ると動きにくくなり、ますます運動不足になる。血糖値が上がると血管が傷つき、さらに血糖コントロールが難しくなる。高血圧と糖尿病が重なると、それぞれ単独の時よりもはるかに速く動脈硬化が進みます。

しかも、後になるほど進行が加速し、取り返しがつきにくくなります。初期なら生活習慣を変えるだけで元に戻せますが、臓器が壊れてしまうと、薬を飲んでも元には戻りません。

でも、希望があります!

幸いなことに、「正の連鎖」も起こせます。

体重を5kg減らすと、血圧が下がります。血圧が下がると薬が減り、体が軽くなって運動しやすくなります。運動するとさらに体重が減り、血糖値も改善する――このような好循環が生まれるのです。

ある患者さんは、3か月で体重を7kg減らしただけで、血圧の薬が不要になりました。別の方は、毎日30分歩くことを続けた結果、血糖値が正常化し、「糖尿病予備軍」から脱出できました。

逆転の鍵は生活習慣

**鍵は生活習慣の改善です。**そして最も重要なのは、早ければ早いほど、生活習慣改善だけで逆転できるということです。

「まだ薬を飲むほどじゃない」「ちょっと注意が必要な程度」と言われた段階が、実は最大のチャンスなのです。この時期なら、薬なしで健康を取り戻せます。

具体的には以下の通りです。

①体重を3か月で3-5kg減らす(1か月1-2kg程度)

②1日30分程度の運動を週5日(通勤で歩く、階段を使うだけでもOK)

③野菜を増やし、揚げ物を控えめに

④禁煙(これは絶対に必要です)

完璧を目指す必要はありません。「今より少し良く」を続けることが、10年後、20年後の心筋梗塞や脳卒中を防ぐ最も確実な方法です。

最初のドミノを倒さなければ、後のドミノも倒れません。今日から、できることから始めてみませんか?

理学療法士はあなたにとってベストな運動管理を提供します。ご興味のある方は心臓リハビリテーション室(058-213-0488)までご連絡ください。

また、ご質問がある方は是非ご連絡頂ければ幸いです。