開院初年度、私と三宅医師の2人で始めた2009年のカテーテルアブレーション数はわずか66例でしたが、2015年度には年間300例を超えました。2016年に神谷医師、2017年に祖父江医師が加わり、2019年度には年間480例を超え、2020年3月には遂にアブレーション総数が3000例に達しました。今年度は年間500例以上も夢ではないハイペースで進んできています。

振り返ってみますと、開院以来、一人でも多くの患者さまを笑顔にするという理念の下、非常に難しい症例にも随時、対応してきました。その中で、今でも、忘れられない症例は、開院初年度に遭遇した80歳代の高齢男性の心室頻拍と70歳代女性の心房頻拍症例です。この2例は薬剤治療では効果がなく、不整脈による心不全を起こしており、アブレーションで根治できなければ救命不能で、重篤な状態でした。とにかく”治るまで”やるしかないと、緊急アブレーションを施行。今のように素晴らしい道具がない中、8時間以上の時間を要して、何とか不整脈を治すことができ、無事退院に漕ぎ着けました。アブレーションは本来、緊急性のない手技ですが、アブレーションをやっていて、本当に良かったと実感しました。この2名は、今でも私の外来に通院していただいております。

現在、当院に限らず、全国的にアブレーション数は激増しています。このアブレーション数増加に大きく寄与したものは、心房細動に対するワーファリン以外の抗凝固薬の登場や、先端荷重を測定できるアブレーションカテーテルや3次元画像構築機器の改良、心房中隔穿刺を安全にした高周波ニードルの開発、冷凍バルーンアブレーションの導入ではないかと思います。これらは、アブレーションの導入期間を短縮し、合併症を大きく減らし、手技時間を短縮、成功率を上昇させました。当院においても、これらの手術機器や手術手技の進歩の恩恵を受けて、ここまで順調にアブレーション数を伸ばすことができたものと考えています。

最後に、この3000例のアブレーション実施を支えてくださった、同僚医師、看護師、臨床工学技士、放射線技師、検査技師など、多くのスタッフの方々に深く感謝申し上げます。今後も現状に満足せず、より高いレベルで患者さまを治療できますよう、日々精進して参りますので、今後ともよろしくお願い致します。

岐阜ハートセンター スーパーバイザー 土屋 邦彦