心房細動のアブレーション治療は、現在、標準的治療として広く受け入れられてきており、2018年度には全国で8万件を超えるアブレーション数が報告されています。このアブレーション数の爆発的な増加に寄与しているのが、各種アブレーション関連デバイスの進化です。その中でも、最も影響が大きかったのは冷凍バルーンシステムの登場です。高周波での心房細動アブレーションは、熟練した術者のいる施設においても、90-120分ほどの時間を要する手技ですが、冷凍バルーンアブレーションは60分前後と短い時間で手技を終了できます。さらに、冷凍バルーンアブレーションは、点による焼灼巣の連続となる高周波と違い、面で肺静脈周囲に接するため、穿孔による心タンポナーデ発症リスクが非常に低いことが報告されています。安全性や時間効率などを考えれば、発作性心房細動のアブレーションには、冷凍バルーンでの手技が第一選択とされるべき方法です。
もちろん、高周波でのアブレーションにおいても、EnsiteやCARTO、RHYTHMIAなど3Dマッピングシステム本体の進歩や、実際にマッピングに利用するPentarayやHD-グリッド、Basketカテーテルの開発、焼灼効果指標を数値化してくれるAblation IndexやFTI、CTIの導入により、その手技時間は以前より短縮し、慢性期成功率も大幅に上昇してきています。それ以外にも、レーザーバルーンアブレーションやホットバルーンアブレーションなどのアブレーション法があります。しかし、これらの手技は手術時間が冷凍バルーンや高周波でのアブレーションより長く、心原性塞栓症や心タンポナーデ発症リスクは低くなく、煩雑であること、高周波での追加アブレーション率が高いことなどにより、今のところ、当院では積極的に行う予定はありません。心房細動を疑うようなめまい、動悸などでお困りの方は、お近くの不整脈外来を受診していただければと思います。
当院不整脈チームは、今後も現状に満足せず、「断らない、あきらめない」を合言葉に、より高いレベルで患者さまを治療できますよう、日々精進して参ります。
皆さま、今後とも岐阜ハートセンターをよろしくお願い致します。
岐阜ハートセンター 不整脈部門 土屋邦彦