血中のコレステロールが高い状態を表します。健康診断などでも必ずチェックされている項目であり、通常は総コレステロール中性脂肪善玉コレステロールであるHDL-コレステロール、そして悪玉コレステロールであるLDL-コレステロールの4項目評価されます。(表1)

表1

表2

狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症など全身の動脈硬化疾患に対する危険因子であり、特に悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)が高値の状態だ続くと動脈硬化の進行から心筋梗塞や脳梗塞を発症する危険が増大します。(表2)

悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)の目標値については、動脈硬化疾患の既往があるか、また糖尿病などのその他の危険因子を持っているか、によって異なります。冠動脈疾患の既往がない方に対する、発症を予防するための悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)んお目標値(一次予防といいます)は120-160mg/dl未満とされます。(糖尿病や脳梗塞、閉塞性動脈硬化症の既往、慢性腎臓病、喫煙歴や高血圧の有無によって目標値は異なります。)狭心症の既往がある患者様の冠動脈疾患の再発予防(二次予防といいます)は100mg/dl未満になり、さらに心筋梗塞の既往がある患者様や、糖尿病を有しかつ脳梗塞の既往や閉塞性動脈硬化症の既往を有する方、糖尿病を有しておりかつ喫煙や慢性腎臓病を併せ持つような方二次予防については70mg/dl未満にコントロールすることが勧められます。(表3:動脈硬化学会ガイドライン)

表3:動脈硬化学会ガイドライン

一般に目標値と現在の値を比較し、まず食事療法や運動療法によるコントロールが基本となりますが、薬物療法としてスタチンと呼ばれる悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)降下薬やこれを補完するような内服薬を用いることが多いです。最近、皮下注射によって悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)を下げるようなPCSK9阻害薬と呼ばれる薬剤も登場してきました。2週間もしくは4週間に1回皮下注射を行うことにより強力な悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)降下作用を有しており、冠動脈疾患のハイリスク患者様に対象となることがあります。上記のように、患者様それぞれの背景によって悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)の目標値は異なりますので、目標値に対するアプローチとしてそれぞれの患者様に合わせた治療法を提案させていただいております。病院に通院しての薬物治療も重要ですが、もちろん食事療法、運動療法が根底にあることは変わりませんので、皆さんがご自分で可能な範囲で食事療法、運動療法を継続していくことが冠動脈疾患の発症予防につながります。

※家系的に若年で心筋梗塞を発症された方がおられる患者様などは、遺伝的にコレステロールが高値である疾患(家族性高コレステロール血症)を有している可能性があります。ご心配な場合は、遠慮なくご相談ください。

50代の男性 右冠動脈閉塞による急性心筋梗塞の既往例。

血管造影上は軽い狭窄病変に見えます(白矢印:狭窄病変、緑線:心筋梗塞でステントを留置された部分)。

しかし、脂質を黄色く染める近赤外線を用いた血管内超音波(NIRS-IVUS)を用いて血管内を観察すると、動脈硬化は180度以上に広がっており、またこの部分には広範囲に黄色く染まり、広範囲に脂質が付着しています。このまま放置すると、この部位で心筋梗塞の再発をしうる危険な動脈硬化であることが分かります。

LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)を強力に低下させるPCSK9阻害薬導入1年後。

血管内超音波(NIRS-IVUS)にて、冠動脈硬化自体は残るものの、黄色く染まる脂質部分が以前と比較して明らかに少なくなっていることが分かります。