1. 従来のペースメーカと“リードレスペースメーカ”の違い

脈が遅くなる徐脈性不整脈(洞不全症候群、完全房室ブロック)により息切れ、浮腫、意識消失などの症状を伴う場合、ペースメーカの適応となります。従来のペースメーカは”リード”と呼ばれる導管を鎖骨の下にある静脈を通して心房、心室へ留置し、そして”リード”と電池を接続後に前胸部の皮下へ、ポケットと呼ばれるスペース内へ留置することになります。1950年代より本格的に開発が進み、1960年には植込みが開始され、その後、小型・軽量化が得られ、現在のペースメーカの形となっています。医療およびそれに伴う科学技術の進歩により、より低侵襲かつ安定した現行の形となっていますが、いくつかの問題を抱えています。ペースメーカ植込みに関する合併症として感染があります。ペースメーカに限れば、約0.5~1%の確率で発症するとされ、仮に感染を発症した場合、リードとペースメーカ本体(電池)のシステム全抜去が必要となります。そしてこのペースメーカ感染の大半はリードおよび本体を留置するポケットであることが問題でした。この問題点を解決すべく開発されたものが”リードレスペースメーカ”になります。リードレスペースメーカは文字通り、リードを必要とせず、小指程度の電池本体のみでペースメーカ機能を担うデバイスです。リードレスペースメーカは電池本体のみで心筋の活動を感知し、そしてペーシング(補助)を行うことが可能です。

リードレスペースメーカの植込み方法は鼠径部にある大腿静脈という血管より27Fr(直径9mm程度)のシースと呼ばれる管を右心房まで挿入します。そしてこのシースを通して、小指ほどペースメーカが先端に装着されたシステムを右心房、その後、三尖弁を超え、右心室まで運びます。中隔と呼ばれる右と左の心室を隔てる壁は比較的厚みがあり、右心室側より中隔へリードレスペースメーカを押し当て、留置します。そしてリードレスペースメーカの状態(閾値・感度・抵抗値)が問題ないことを確認できれば、システムから離します。最終的にシステム・シースを抜去し、創部を閉じ、終了します。このようにリードレスペースメーカは、当然リードもなくポケットと呼ばれる本体を留置するためのスペースも必要ありません。

2. リードレスペースメーカの利点~感染、日常生活動作、美容上~

  • リード感染の頻度が非常に少ない。
  • 術後、早期に日常動作を行うことができます。
  • 体外からのペースメーカ植込みは分からず、美容上、利点がある。

3. リードレスペースメーカの欠点・合併症

リードレスペースメーカは従来の経静脈的に留置されたペースメーカとは異なった欠点、合併症があります。

そのため、リードレスペースメーカを選択するかについては主治医と十分に検討のうえ、決定してください。

  • 本体(電池)は現行は抜去不可であり、電池消耗の際には新たな本体留置が必要となる。
  • 現行は心室のみの適応であり、心房への留置はできない。
  • 心室へ押し当てながら留置するため、心穿孔の合併症がある。※心穿孔に際し開胸手術が必要な場合がある。

本体の抜去不可のため、電池消耗に際しては新たな本体留置が必要となります。これまでに3個留置された報告がありますが、基本的にはそれ以上の留置は不可能と思われます。

現行のリードレスペースメーカは心室のみになり、心房への留置は出来ません。心臓の収縮は心房と心室が順に収縮、拡張を行うことで効率よく血液を駆出しています(房室同期)。しかし、心室のみに留置するリードレスペースメーカでは心房の情報を得ることができず、房室同期が得られません。房室非同期の場合、心不全や心房細動という不整脈の新規発症の可能性があります。