みなさんこんにちは。循環器内科の川瀬です。今日は、心臓の血管の病気に関してのお話です。

心臓の血管の病気と言うと心筋梗塞や狭心症を思い浮かべると思いますが、この2つの病気の違いをはっきりと説明出来ますか?実はこの2つの病態は全く異なります。

狭心症は一時的な心筋(心臓の筋肉)の血液(酸素)不足で痛みが生じますが、症状は通常数分で改善します。この状態では、心筋は壊死(死ぬ事)しません。これに対して、心筋梗塞では、痛みが数十分以上持続して時間経過と共に心筋壊死が広がっていきます。壊死してしまった心筋は現在の医療では再生出来ません。ですから、狭心症の段階で発見して治療を開始する事が肝心です。

狭心症ですが、実は胸の痛みの出ない無痛性狭心症と呼ばれる状態も存在し、糖尿病等を合併している患者様に多い事が知られています。冠動脈造影CT検査などをすると、胸痛の無い患者様でも心臓の血管に動脈硬化が進行している方は相当数おみえになります。こういった患者様が、単に動脈硬化が心臓の血管に存在しているのか、それとも心筋に十分な血液が供給出来ないほど動脈硬化が進行しているのかを区別するには、心筋に血液が足りていない状態である”虚血”を診断する方法が必要です。

この虚血を証明する検査方法の代表的なものとしては、非侵襲的な検査(心臓CT検査、心臓核医学検査など)と、侵襲的な検査(心臓カテーテルを用いたFFR、iFRなど)があります。

動脈硬化で心臓の血管が狭くなっているかどうかより、こういった検査方法で心臓の血液不足がある事を確認してから治療する方が治療成績が良い事がいくつかの研究で証明されています。

欧米では、限られたスーパードクターによる治療ではなく、平均的な治療がされた場合にどうするのが良いのかの研究に重きが置かれます。逆に日本では、治療をするならどうやって完璧に仕上げるかの方に重きが置かれます。

ただ、両方の視点が重要であり、虚血が証明された病変に、血管内超音波検査や光干渉断層法(血管の中の状態を評価する機械)等を使用して丁寧に治療を施行する事が、現在におけるState of the art PCIと考えられています。

当院では、この虚血を証明する心臓核医学検査法やFFR、iFRといった検査方法と血管内超音波検査や光干渉断層法を積極的に活用して、虚血性心疾患の治療成績を向上させる事を目指して日常の診療、治療を行なっております。

一人一人の患者さんに最適な心臓カテーテル治療を届けるため、私たちは常に診断と治療の最適解を求め、日々の研鑽に励み続けます。