POPAI2022の開催に関して御挨拶申し上げます。

 POPAI2020は一旦新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行のため、お休みさせていただきましたが、POPAI2021を無事に開催することができました。皆様に心より感謝申し上げます。POPAI2022は昨年に引き続き今回もWEB開催することにいたしました。WEB開催とはなりますが、2日間にわたりphysiologyとimagingに関する最新情報を提供していきたいと思います。Imagingとphysiologyの分野では、2020年3月にISCHEMIA試験がNEJMに発表になり、大きな物議を醸しだしました。本研究から、安定狭心症においては、虚血陽性であってもPCIは至適薬物療法と比較して、死亡、心筋梗塞を減少させることができませんでした。薬物療法群においては、以前の報告では虚血陽性患者においては年間5-10%のイベント発生率であったのが、このISCHEMIA試験では年間3%のイベント発生が報告され、ステント治療群の発生率にきわめて近似していることが示されました。

ステント治療は、冠血管抵抗の低下をもたらし、運動負荷時の冠血流の増加を生じることにより、運動耐容能を改善することが実証されていますが、心血管インターベンションがプラークの安定化をもたらし心血管イベントを抑制する効果(プラークシーリング効果)は今まで実証されていませんでした。しかし2020年のTCTにて発表された、PROSPECT ABSORB試験では、虚血のない病変(FFR陰性)において、NIRS IVUSにてプラーク性状がvulnerableであった病変にBVSを留置する群では薬物療法群と比較して、対象病変の血行再建率が低くなる傾向にあることが示されました。このように冠動脈疾患治療における治療戦略の決定に、CFR、FFR、NHPRなどの生理学的指標のみでなく、CT、IVUS、OCT、OFDIなどのプラークイメージングが大きな役割を持っていることが再認識されつつあります。

現在、冠内圧の計測によりカテーテル検査室内において虚血の原因となりえるかどうかを正確に判定し、更にIVUSやOCTを用いて最適な血行再建をすることが、患者様の予後改善につながる最も有効な方法であることが多くのエビデンスとして示されてきています。State of art PCIを検証したSyntaxⅡ研究では、Physiologyとimagingを駆使して最新のステント、最新のCTO治療技術を用いることにより3枝疾患においても、その5年予後においても10年前のCABGに匹敵する成績であることが示され、imagingとPhysiology、両者の重要性が再確認されました。一方でPhysiologyの立ち位置に疑問を投げかけるいくつかの臨床研究の報告もありました。STEMIの非責任病変FFRガイドで血行再建を行う群とアンギオガイドで血行再建を行う群との無作為試験のFLOWER MI試験ではFFRガイドPCIの優位性は証明できませんでした。またFAMEⅢ試験においてもFFRガイドPCIはCABGに非劣勢を示すことはできず、physiologyのみではバイパス治療と同等の臨床的アウトカムを出すことができないことが報告されました。

 従来、Physiologyは治療方針の決定を行うことにその多くの役割が強調されてきましたが、一方でPCIの術中、術後にプレッシャーワイヤーを用いることにより、治療戦略の決定やエンドポイントの選択に利用できる可能性が模索されています。ImagingにおいてもCT、血管造影,IVUS、OCTなどから得られる内腔情報から流体力学を駆使してFFRに匹敵する情報を模索する方向性が検討され、PhysiologyとimagingはますますFusionしていく様相を見せています。2018年12月よりFFRCTが、2020年12月よりFFR angioが保険診療として認可され、すでに多くの施設で利用されています。本会においてこれらのvirtual FFRの可能性をさらに追求していく予定です。

 

 成熟したと考えられるPCIの分野において、複雑病変治療の成功は患者様の予後改善に大変重要です。この命題を遂行するにはカテーテル技術習得だけでは十分ではなく、PhysiologyとImagingの理解は必要不可欠といっても過言ではありません。POPAI2022に2日間参加していただければ、physiologyとimagingに関して最新情報を習得することができる研究会を目指しています。岐阜ハートセンターのスタッフ一同、皆様の御参加を心よりお待ち申し上げます。

岐阜ハートセンター 循環器内科 松尾仁司 拝