大動脈弁狭窄症に対する治療法として、従来の開胸手術に加え2013年10月より経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI、”タビ“)が日本でも施行可能となり、その経験の蓄積とともに多くの患者様が治療の対象となってきております。また使用するデバイス(カテーテル治療器具)の改良もすすみ、当院では多くの患者様は局所麻酔で足の付け根からの治療(大腿動脈アプローチ)が可能となっております。

しかし血管が細いなどの理由から大腿動脈アプローチが困難な患者様が一定数いらっしゃいます。そのような患者様に対しても、以下の3つの方法によるTAVIカテーテル治療を行っております。

  • 鎖骨下動脈アプローチ(肩の血管からのカテーテルを挿入する方法)
  • 直接大動脈アプローチ(心臓の近くの血管からカテーテルを挿入する方法)
  • 心尖部アプローチ(心臓の先端からカテーテルを挿入する方法)

上記の治療のうち、②③は全身麻酔、開胸操作を必要としますが、①の治療は当院では局所麻酔で行っており、体の負担が少なくなるようにしています。

現在国内で使用できるデバイスは、風船にステント(金属のバネ)付き生体弁をつけて拡張するバルーン拡張型TAVI弁(サピエン3)と形状記憶のステント付き生体弁の自己拡張型TAVI弁(コアバルブEvolut PRO+)の2種類があります。

①の鎖骨下動脈アプローチでの使用できるデバイスは自己拡張型TAVI弁に限られていましたが、2021年7月からバルーン拡張型TAVI弁(サピエン3)も使用可能となり、東海北陸地方では当院と名古屋ハートセンターが先駆けて、治療を開始しております。これにより低侵襲治療であるTAVIの選択肢が拡大され、大動脈弁狭窄症に対する全ての治療を提供できるようになりました。

また新しい治療であるTAVIは、治療の安全性を担保するために経験豊富な指導者(プロクター)の指導下に治療を開始・導入することが義務付けられています。当院は大腿動脈アプローチのプロクターとして循環器内科山本真功医長が在籍、また大腿動脈アプローチが困難な場合のアプローチ(上記①②③)のプロクターとして、心臓血管外科小山裕部長が在籍しております。さらに日本経カテーテル心臓弁治療学会が指定する指導医も上記2名に加え、循環器内科大久保部長、平田医長、志村医師の5名が在籍しており、循環器専門病院で多くの心臓治療経験を持った医師・看護師・コメディカルも含めて、万全の体制で治療に当たっています。

患者様ひとりひとりにとって、最適な治療法を提案しますので、相談しながら治療法を決めて、早期回復を目指しましょう。

心臓血管外科 小山裕