脳梗塞を引き起こす原因となる不整脈の心房細動に対して、メイズ手術を行います。その結果、ワーファリンをなるべく使わずに済むようになりました。

抗凝固療法とは?

脳梗塞の予防をするために、ワーファリンを使った抗凝固療法が行われています。ところが、脳出血などの出血性合併症のリスクがある上、定期的に必要な血液検査などの管理が面倒であることから、特に専門外の医師はいまだに消極的です。

しかし、ワーファリン療法は出血の副作用は増えないわりに、しっかりと脳梗塞の予防ができるとの認識が近年広まってきました。現在では、心房細動の動脈塞栓の予防法として、ワーファリン療法が世界の標準となっています。

ワーファリン療法は「きちんと管理すれば副作用の危険性よりも恩恵のほうがずっと大きい」と考えられます。血のさらさら度(INR)を外来で定期的に調べる必要があります。ワーファリンは、肝臓で作られるビタミンKに関係する血液を固まらせる因子を抑制するものです。

ワーファリンが十分効かないと、その血栓を作り出すことになりますし、効きすぎると微小血管からの出血が見られることがあります(鼻血、歯ぐきからの出血、あざ、などの軽いものから、脳出血、消化管出血などの重いものまで)。1年間に起きうる確率は、約1%です。

不整脈手術(迷路手術:MAZE=メイズ)とは?

前述のような心房細動に対して、元の正常のリズムに戻してやろうというのが、この不整脈手術(メイズ手術)です。

大変難しい名前ですが、心臓の中の、乱れた電気の流れる道すじを遮断し、正常な本来の道だけを残すことで正常のリズムにするというものです。

患者様の状況により異なりますが、この手術を行ったのち、正常のリズムに戻る割合は6~7割といわれています。その場合、ワーファリンを飲まなくて済む可能性が出てきます。

しかし、弁置換などで人工弁を植え込んだ場合などは、完全にワーファリンを止めることができないこともあります。慢性の心房細動(10年以上)、左心房拡大(60mm以上)などは、メイズ治療を行っても効果に限界があるのが現状です。

この術式を行うのに適当と考えられている状態は以下のとおりです。

  1. 僧帽弁疾患に合併した心房細動で、弁形成術または人工弁置換術を行う場合
  2. 心臓手術を行う場合、血栓(血の固まり)を溶かす治療がなかなか効かず、心臓内に血栓がある場合
  3. カテーテルアブレーションでの不成功例、再発例など

(不整脈の非薬物治療ガイドライン2006年度版より)