経カテーテル的左心耳閉鎖術について
皆様は「左心耳」と呼ばれる心臓の構造の一部をお聞きしたことがあるでしょうか?
左心耳は心臓を構成する4つの部屋の1つである左心房に付属している袋状の構造物です(図1)。
1900年代前半までは注目されていなかった、この左心耳と呼ばれる構造物が広く知られるようになったのには理由があります。
それは、不整脈があると脳梗塞の原因となる血の塊である「血栓」が左心耳で作られやすいことが発見されたためです。
この血栓がつくられる原因となる不整脈を心房細動といいます。
心房細動は左心耳が付属している心臓の部屋(左心房)が小刻みに震えるため、血液の乱流ができて、血栓ができやすくなります。
これが脳の血管まで飛んでゆくことで脳梗塞になります(図2)。
写真提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
そのため、心房細動になると脳梗塞を予防するには「抗凝固薬」という血液をサラサラにするお薬を内服する必要がありました。
ワルファリンやリバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、ダビガトラン(プラザキサ)、エドキサバン(リクシアナ)と呼ばれるものです。
しかし、これらの薬を内服する点で問題点が2つあります。
それは、
①高齢の患者様では半永久的に内服する可能性が高いこと
②血液をサラサラにするため、出血しやすくなること
の2つです。
心房細動に対しては脈を通常に戻す「カテーテルアブレーション」を行うことで「抗凝固薬」を中止できる可能性があります。しかし、年齢が75歳以上で高血圧、糖尿病のどちらか1つでも病気を有されている患者様は、一般的に「カテーテルアブレーション」後も脳梗塞を予防する目的で「抗凝固薬」を飲み続けることが推奨されております。
そのため常に問題点の②つ目である、出血を起こしてしまうリスクが付きまとうわけです。
特に御高齢の患者様は、皮膚や血管の構造が脆くなってくるため、命に関わる脳の出血、胃や腸からの出血が起こりやすくなります。また、ひどい皮膚の出血や鼻血が止まりにくいなどの命にかかわる可能性は高くなくても、生活の質を下げるようなことも起りやすくなります。
この問題を解決する治療が経カテーテル的左心耳閉鎖術です。
足の静脈にストロー状の管(カテーテル)を入れて、専用の道具で左心耳に蓋をしてしまうという治療方法です(動画1)。
治療は全身麻酔で行いますが、足の付け根に管が1本入るだけの治療なので、管を抜いた後、治療後の痛みは全くと言ってよいほどありません。
治療時間は30分~60分で終わり、治療翌日から通常通り歩くことや、食事をとることが可能です。入院期間は3‐4泊です。
実際に治療をうけた患者様が「抗凝固薬」を中止できたことで、出血することがなくなり、貧血も改善することで、「より良い生活」が送れるようになったと喜ばれております。
《心房細動による脳梗塞を予防する治療》
・薬物治療(抗凝固療法)
脳梗塞を予防する目的で血液を固まりにくくするお薬(抗凝固薬)を使用します。
心房細動がある人が全て脳梗塞を起こしやすいわけではありませんので、以下の指標を参考にして脳梗塞リスクが高い人に使用します。
CHADS2(チャッズ)スコアという指標が一般的に使用されています。
心不全(C) 1点
高血圧(H) 1点
年齢(75歳以上)(A) 1点
糖尿病(D) 1点
脳梗塞や一過性脳虚血発作 2点 / 合計6点
この点数が高いほど脳梗塞になりやすいと言われています。
2点以上(場合によっては1点)あれば抗凝固療法を行った方が良いとされています。
抗凝固療法として使用される薬剤
ワルファリン(ワーファリン)
リバーロキサバン(イグザレルト) アピキサバン(エリキュース) ダビガトラン(プラザキサ) エドキサバン(リクシアナ)
写真提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
・左心耳閉鎖術
抗凝固薬は内服している間は脳梗塞の予防効果がありますが、内服を中断すると脳梗塞のリスクにさらされます。
多くの人は上記の抗凝固薬を安全に使用することができますが、長期間の抗凝固薬の内服ができない患者さんに対して抗凝固薬の代替治療が左心耳閉鎖術です。
脳梗塞リスクを低減する1回限りの治療です。
長期間の抗凝固薬の内服ができない人とは・・・
貧血を伴うような大出血の既往
脳出血の既往
抗血小板薬(バイアスピリン、プラビックス、エフィエントなど)を内服している
何度も転倒しけがをする
高齢や腎機能障害 など。
左心耳閉鎖術は専用の医療器具を全身麻酔下で心臓に留置します。取り換える必要のない永久的なものです。太ももの血管(静脈)に挿入した管(カテーテル)を左心房まで誘導し左心耳に器具を留置します。治療は1~1.5時間かかり、患者さんは治療翌日から歩行が可能です。退院後は今までと同様の生活が可能です。
写真提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
『心房細動』とは。
心臓の拍動が不規則(バラバラ)になる不整脈の一つです。心房という部屋が異常に速く不規則に拍動(細動)している状態のことをいいます。
心房細動には以下の問題点があります。
① 心臓の中(左心房)に血栓ができ脳梗塞の原因となる。
② 自覚症状(自覚症状がない場合もあります)
動悸・息切れ・疲労感・胸の不快感 など
ここでは心房細動による脳梗塞についてさらに詳しくご説明します。
心房細動では心房が不規則に拍動しているために血液が滞留し、心房内に血栓が形成されます。この血栓がとんで脳を栄養する血管をふさぐと脳梗塞を起こします。
血栓の約90%が左心房にある左心耳という袋状の場所で形成されます。
写真提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
心房細動がある人は無い人に比べて脳梗塞を発症する確率が約5倍高いと言われています。
また心房細動による脳梗塞は大きな脳梗塞を生じることが多く、死亡や寝たきりなど重篤な後遺症が生じる割合が高いです。
《心房細動による脳梗塞を予防する治療》
・薬物治療(抗凝固療法)
脳梗塞を予防する目的で血液を固まりにくくするお薬(抗凝固薬)を使用します。
心房細動がある人が全て脳梗塞を起こしやすいわけではありませんので、以下の指標を参考にして脳梗塞リスクが高い人に使用します。
CHADS2(チャッズ)スコアという指標が一般的に使用されています。
心不全(C) 1点
高血圧(H) 1点
年齢(75歳以上)(A) 1点
糖尿病(D) 1点
脳梗塞や一過性脳虚血発作 2点 / 合計6点
この点数が高いほど脳梗塞になりやすいと言われています。
2点以上(場合によっては1点)あれば抗凝固療法を行った方が良いとされています。
抗凝固療法として使用される薬剤
ワルファリン(ワーファリン)
リバーロキサバン(イグザレルト) アピキサバン(エリキュース) ダビガトラン(プラザキサ) エドキサバン(リクシアナ)
写真提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
・左心耳閉鎖術
抗凝固薬は内服している間は脳梗塞の予防効果がありますが、内服を中断すると脳梗塞のリスクにさらされます。
多くの人は上記の抗凝固薬を安全に使用することができますが、長期間の抗凝固薬の内服ができない患者さんに対して抗凝固薬の代替治療が左心耳閉鎖術です。
脳梗塞リスクを低減する1回限りの治療です。
長期間の抗凝固薬の内服ができない人とは・・・
貧血を伴うような大出血の既往
脳出血の既往
抗血小板薬(バイアスピリン、プラビックス、エフィエントなど)を内服している
何度も転倒しけがをする
高齢や腎機能障害 など。
左心耳閉鎖術は専用の医療器具を全身麻酔下で心臓に留置します。取り換える必要のない永久的なものです。太ももの血管(静脈)に挿入した管(カテーテル)を左心房まで誘導し左心耳に器具を留置します。治療は1~1.5時間かかり、患者さんは治療翌日から歩行が可能です。退院後は今までと同様の生活が可能です。
写真提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社