4階病棟看護師
超高齢社会を迎えているわが国において、心疾患患者は増加の一途を辿っています。2021年6月に厚生労働省が発表した「人口動態統計」では、日本人の死因の第1位が悪性新生物、第2位が心疾患でした。また、死因の内訳を見てみると死亡率が最も高いのが心不全であることが発表されています。さらに、現在100万人程度いるとされる心不全患者は2035年までは増え続け132万人程度になると推定されています。心不全は悪化と改善を繰り返しながら、だんだんと悪くなる病気であり、一度発症すると入退院を繰り返すだけでなく少しずつ症状が悪化する特徴があります。その為、入院から退院までをゴールとせず退院後の生活を見据えた多職種連携による介入が重要とされています。
心不全の急性増悪を防ぐ取り組みとして、当院では入院した心不全患者様を対象に心不全チーム(2016年1月発足)が介入しています。チームメンバーは医師、看護師、理学療法士、薬剤師、管理栄養士、検査技師、医療ソーシャルワーカーで構成されています。各種の専門性を活かし患者様の増悪因子を明らかにするだけでなく、退院後に自宅で心不全が悪くならない生活が送れるかをカンファレンスで繰り返し話し合っています。また、退院後は心不全外来で定期的にフォローさせて頂き、入院中の指導内容が理解出来ているか、血圧や体重測定が継続出来ているか、内服薬がしっかり飲めているか、食事は塩分過多になっていないか、退院後に活動量が減っていないかなどを多職種が継続して関わりを持ち、患者様の病状が悪くならないように確認しています。
私も岐阜ハートセンター入職後、心不全チームに加入し、昨年心不全療養指導士の資格を取得しました。病棟看護だけでなく退院後の患者様とも関わらせて頂く事で継続した看護介入を実践できるようになりました。以前、病棟で高血圧を契機に心不全を発症した初回の心不全患者様と関わらせて頂いた事があります。
「今まで、血圧なんて測ったことないね」とお話しされていたため、入院中からセルフモニタリング(血圧測定習慣)の重要性や心不全増悪時の早期受診行動について、繰り返しお話をさせて頂きました。
「ご飯の後に妻と一緒にデザートを食べたり、晩酌するのが日課だった」とお話しされていたため、入院中から食生活の見直しの必要性を感じ心不全チームへも介入を依頼し、患者様だけでなくご家族も含めて退院後の栄養指導を実施しました。
「仕事をしていて昼の薬を飲み忘れる事がよくあったね、夜は薬飲むとトイレばかりでゆっくり寝られない」と入院生活の中でお話されていた為、内服薬が朝のみで済むように内服調整も行いました。
仕事で過活動にならないように、退院前には心臓に負担をかけない動作の確認や二重負荷とならないように動作の間には休憩を挟むように指導介入を行い、ご自宅に退院されました。退院後に外来で患者様にお会いした際に「ちゃんと教わったことやっていますよ。先生にも調子良いし、頑張ってますねって褒められました」と嬉しそうな表情をして血圧手帳を見せて下さいました。
心不全は入院中だけでなく退院後も継続して患者様と関わることで、再入院予防だけでなく患者様の症状・生活の質(QOL)の改善に繋がると考えています。その為には多職種による多面的なアプローチが重要と感じています。患者様の人生と関わらせて頂き、一緒になって考える医療の提供に今後もチーム一丸となって取り組んでいきます。
私は、看護師として患者様やご家族を精神的に支えることができた時に大きなやりがいを感じ患者様から「ありがとう」・「世話になったね」と感謝のお言葉を頂いた時に大変嬉しく思います。これからも、入院、通院される患者様1人1人に看護する側も感謝の気持ちを持って相手の立場に立った看護介入をしていきたいと思います。