心不全は日常の生活の場で悪くなります。悪くなって入院をするたびに病状は進行し、体力も落ちていくので、なるべく入院にならないように私たちは患者様をサポートする必要があります。そのため、当院では患者様が心不全で入院すると、治療が行われる傍らで、多職種からなる心不全チームが中心となりながら、一連の生活指導介入を行います。患者様の病状のみにとどまらず、生活についてもきちんと目を向けながら、心不全が悪くなる原因を取り除けるようにサポートをしています。

やがて、心不全で入院となった患者様は症状が落ち着くと、退院となり、日常の生活に戻ります。入院中は治療に専念できる環境にありますが、退院後は患者様それぞれの生活があります。私たちと同じように仕事や家事、育児などを抱えていたり、楽しみや趣味があったり、仲間との付き合いがあったりします。そして、病気以外に大切にしたいもの、守りたいものを抱えながら皆生活をしています。そうした中で、心不全が悪くならないようにするには、私たちがいかに患者様の生活に寄り添いながら支援し続けるかが鍵と考えます。そこで、外来においては、患者様からじっくりお話を伺うことに努め、心不全徴候や症状がないかを患者様と一緒に確認し、患者様が頑張っていること、逆に思い通りにいかないと感じることを患者様と共有をします。心不全とうまくお付き合いしていく方法を患者様と一緒に考えながら、退院後も継続的にサポートしています。

そうした経過においても、病状が徐々に進行したり、歳を重ねていくと、通院することがやがて難しくなっていきます。そこで、長年信頼して診てもらっていた病院の医師や看護師から在宅療養について提案をされると、患者様は自分の死が近いことを悟ったり、病院から見放されてしまったという思いを抱いてしまうことも少なくありません。そのため、在宅療養が開始される患者様においては、往診医や訪問看護師に一定期間同行をしながら、患者様の状態はもちろん、患者様を取り巻く生活環境や背景、思いを共有したり、患者様と在宅療養支援チームの関係性が構築できるようにサポートしています。患者様が住み慣れた自宅で安心して療養を継続できるようにするには、患者様を支援するチームの輪を病院のみにとどまらず、地域にも広げる必要があり、その繋ぎ役を担うことが私の大きな役割だと考えます。

慢性心不全看護認定看護師  木山 明香