私たちの働く病院では、患者さまの入院期間が短くなり、高齢の患者さまが増えています。私たち看護師は、専門的な知識を学ぶ事だけでなく、自分自身や患者さま、ご家族の人としての在り方を考える場面に出会う事があります。
私たちが勤務している岐阜ハートセンターは、循環器疾患の専門病院で急性期治療が行われる病院です。手術や内服治療などの急性期治療を脱した後も後遺症や身体機能低下をきたし、慢性疾患を抱えて長期療養を余儀なくされる患者様もみえます。患者様や御家族は、身体的・精神的・心理的な苦痛だけでなく社会生活上の不安を抱えています。
これらの苦痛や不安の中には、患者さまや御家族の社会背景や生死観を含めた、価値観などが存在すると考えます。私たちは、日々の関わりの中で患者さまや家族の思いを汲み取り、看護を提供できるよう努力しています。しかし、医療者が最善だと思って提案したことが、患者さまや御家族の意思に添えていないかもしれません。それにより看護師との信頼関係が揺らいでしまう可能性もあるため、常に患者様の意思に添えていたのか、また意思に添うために実践した看護や言動を振り返っています。例えば、手術後の患者様に合併症予防のために離床を促す場面で、「頑張ってどんどん歩いて下さいね」と声をかけた事に対して、「傷が痛いのに動くように言われた」と言われることがあります。看護師が言葉を少し加えて説明をすれば、このような誤解を招くことはないと思います。

患者さまの治療後の経過は、個人により異なるため回復に向けて個人差があります。御家族の協力なしでは、治療が進められないことも多くあります。患者さまだけでなく御家族の意向の確認も重要となってきます。看護師をはじめ医療スタッフとの関わりを円滑に進め、治療後に安心して生活できるように支援することを意識しています。
患者さまは病気と向き合い治療を受けて社会復帰や入院前の生活に戻ること、看護師は患者さまの治療段階に合わせて支援を行い、生活の質を確保して病気だけでなく人対人として向き合い、“心身の健康を取り戻し、その人らしい生き方ができるようになること”を目指しています。どの医療者よりも近くにいる看護師だからこそ気付ける患者さまの詳細な変化を見つけられる感性を磨いていきます。
患者さまとご家族が意思決定できるように、医師・社会福祉士・理学療法士など他職種と協力し、“患者さまの望む生き方”を支援できるように、今後も努めていきます。