特定行為実践看護師  樋口 善哉

私は、2021年から創傷管理関連の特定行為実践看護師として活動しています。

毎日、褥瘡(床ずれ)、動脈性の足病変(下肢創傷)、静脈性潰瘍、表皮剥離など様々な傷の処置を病棟、外来で行っています。

特に当院では、処置の半分以上が足の傷の患者さまです。足にできた傷の治癒にはとても時間がかかります。また重症化している場合は切断に至るケースもあります。

私が毎日創傷管理を行う中で、傷の状態の変化に早く気づき、次の処置につなげていくことが出来ます。傷が良くなっているときの患者さまの嬉しい顔を見ることが出来ると、いつもホッとした気分になります。

また傷だけを処置するだけではなく、患者さまと関わる中で、傷が出来てしまった原因、今までの生活習慣などの話を聞き、今後の生活習慣などの指導も行っています。特に動脈性の足の傷や、糖尿病性の足の傷の患者さまの中には、悪くなるまで病院にかからないことが、重症化している原因であると考えます。「ちょっとした傷だったからすぐに治ると思っていた。」と油断していると2日後には黒くなってしまっていることはよくあることです。そのため、少しでも早く医療機関を受診することが必要です。患者さまはいつも傷が重症化してしまったことに後悔されています。私はそのような後悔をさせないためにも傷を作らない、大きな傷にしないことが大切であることを伝えています。

2020年に創傷衛生(Wound Hygiene)という創傷管理の新しい概念が注目されました。その中の4つのステップの1つに洗浄があります。傷の清潔を保つために必ず流水と石鹸で洗い汚れを落とすことをお勧めします。皆さん痛いからと丁寧に洗えていないことが現状です。傷の清浄化は最も大切で、傷の表面についている目に見えないバイオフィルムや蛋白質成分を取り除くことが重要なのです。このバイオフィルムを取り除かないと、せっかく塗った薬も傷に届きません。

今まで携わってきた患者さまのほとんどが、傷に対してあまり関心がなかったようですが、毎日傷を処置していくことで関心を持ち、前向きに傷を清潔にするよう取り組んでくださるようになりました。また新たに傷を作らないよう注意してくださるようになりました。しかし、傷ができないように予防することが重要です。自分の体に関心を持ち、傷がないことを確認する習慣を持てるといいですね。