基本方針

  1. おのおのの患者様に適した不整脈の高度な専門的治療を行います。
  2. 患者様によく説明し、納得の行く医療を提供します。
  3. 医療連携を重要視し、地域の不整脈診療の向上に貢献します。
  4. スタッフは医療人としてやさしい心を持ち、常に最新のよりよい医療の習得に努めます。

不整脈と不整脈治療

世界中の高齢化の進展とともに、循環器治療の重要性はこれまでになく高まってきております。その循環器治療の中でも、近年、重要視されているのが不整脈に対する治療です。厚生労働省のデータでは、高齢化に伴い、心房細動をはじめとした不整脈疾患を有する患者数は今後、増加の一途を辿ることが予想されており、その一部は心臓突然死の原因として注目されています。不整脈には大きく分けて2つのタイプがあります。脈が速い、動悸症状などの原因となる頻脈性不整脈と脈が遅く、失神などの原因となる徐脈性不整脈です。

正常な脈

通常、脈拍は1分間当たり60回~100回で拍動しております。また、拍動するタイミングは一定で規則正しいです。

 

頻脈性不整脈

正常心拍数(60-100回/分)以上の心拍数(100回/分以上)が持続する状態です。代表的なものには心房細動、心房粗動、心房頻拍や発作性上室性頻拍などがあります。命に関わる不整脈で心室頻拍/心室細動もあります。

心房細動(AF)近年、高齢化とともに著しく増加している不整脈で動悸の原因になります。心房と呼ばれる部位が不規則に細かく動くことで、①動悸症状や心不全症状で生活に支障をきたしたり、②心房内の血液がよどみ血液の塊(血栓)ができやすくなり脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしたりします。①に対しては脈拍管理のための内服治療や後述のカテーテルアブレーション治療により正常な心拍の維持を目指します。②に関しては、脳梗塞の3分の1は心房細動から起こるといわれており、一般的には血液をサラサラにする抗凝固薬という種類の薬を飲むことで予防できます。しかし、血液をサラサラにすることで、消化管出血や脳出血などの副作用に苦しむ患者様も中にはいらっしゃいます。この問題を解消する目的で2019年から日本では経カテーテル的左心耳閉鎖術が行えるようになりました(左心耳閉鎖のページ)。

※心房細動週間ウェブサイトより

 

心房粗動(AFL): 引き起こす症状や脳梗塞の原因となる点では心房細動とよく似ておりますが、こちらの方が発症時の心拍数が高いことが多く、失神の原因にもなります。

心房頻拍(AT): 心房粗動などを含めた一部の頻脈性不整脈疾患の総称です。原因となっている心臓の場所によりいくつかに分類されるため、このような総称を使用しております。やはり動悸や失神の原因になります。

発作性上室性頻拍(PSVT): 主に2つのタイプがありますが、症状はやはり動悸や失神発作などです。突然起こって、突然改善することが多いですが、長く続くと息切れや呼吸困難などの症状も出現する可能性があります。

心室頻拍/心室細動(VT/VF): 上の4つの不整脈と異なり、緊急性の極めて高い、死に至る不整脈です。致死性不整脈疾患と言います。意識消失、呼吸停止などの症状が出現します。発作出現時の突然死予防のために植え込み型除細動器(ICD)移植術の適応となります。またカテーテルアブレーション治療を施行する症例もあります。

徐脈性不整脈

徐脈性不整脈とは、心臓を動かすための電気信号を出せなくなったり、電気信号の通る道が何らかの原因で途切てしまったりした結果、電気信号が届かなくなり、脈拍が低下する病気です。代表的なものに洞不全症候群や房室ブロックなどがあります。

洞不全症候群: 電気信号を出すはずの心臓の場所から電気信号が出なくなると、一時的に心臓が動かなくなるために、めまいや失神などの症状や心不全に陥ることがあります。失神した際に時に転倒して大きな傷を負う場合があります。このような場合には後述のペースメーカー植え込み適応となります。

房室ブロック: 電気信号が出ても、信号が途中で途絶えては心臓が動きません。これを房室ブロックといいます。この状態が長時間続くと失神や心不全などの弊害が出現してしまいます。生命維持に必要な脈拍数を担保する単には後述のペースメーカー植え込み適応となります。

 

いずれのタイプの不整脈も薬物療法で症状が改善しない場合にはカテーテルアブレーション治療やペースメーカーなどの道具を植え込む治療が必要となります。

1.カテーテルアブレーション治療

当院では2009年より行われ、当初は年間総数66件であったものが2019-2021年には年間450-500件まで増加しており、多くの患者様を治療させて頂いてきました。対象となる不整脈は頻脈性不整脈が多く、近年では前述した心房細動に対する治療が増加しております。いくつかの治療手法があり、患者様に合わせて治療を提供させて頂きます。

 

2.徐脈性不整脈、心室頻拍/心室細動、心不全に対するペースメーカー治療

徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療は正確にはいくつかの種類があります。通常のペースメーカー治療は多くの場合は左前胸部に本体を植え込み、電極リードを血管の中を通って、右心房や右心室へ固定します。また既存のペースメーカー治療以外にも心臓の中に直接ペースメーカー本体を植え込むリードレスペースメーカーや、心機能が低下した患者様に対する両室ペースメーカー(心臓再同期療法:CRT-P)移植術を行っております。その他、致死性不整脈である心室頻拍や心室細動を有する患者様に対しては植え込み型除細動器(ICD)やICD機能付き両室ペースメーカー(CRT-D)の適応となり、不整脈担当医が治療を施行しています。最近では原因不明の失神などの診断に有用な植込み型心電計が使用されるようになってきております。

 

3.経カテーテル的左心耳閉鎖術

~心房細動による脳梗塞予防、出血減少のための治療~

前述したとおり心房細動は脳梗塞の原因となる血の塊である「血栓」を作りますが、この血栓に9割が作られてしまう場所が「左心耳」と呼ばれる場所です。左心耳は心臓を構成する4つの部屋の1つである左心房に付属している袋状の構造物です。この左心耳に血栓ができないように血液をサラサラにする抗凝固薬という種類の薬を飲みますが、高齢の方では出血しやすくなってしまいます。御高齢の患者様は、皮膚や血管の構造が脆くなってくるため、命に関わる脳の出血、胃や腸からの出血が起こりやすくなります。また、ひどい皮膚の出血や鼻血が止まりにくいなどの命にかかわる可能性は高くなくても、生活の質を下げるようなことも起りやすくなります。この問題を解決する治療が経カテーテル的左心耳閉鎖術です。足の静脈にストロー状の管(カテーテル)を入れて、専用の道具で左心耳に蓋をしてしまうという治療方法です。

以上のように近年では不整脈に対する侵襲的治療は目覚ましく進歩していますが、岐阜ハートセンターでは常に最新の治療技術を提供できる体制を整備していきたいと考えております。今後はさらに診断や治療レベルを向上させて、地域の皆様に貢献できるよう精進してまいりますのでよろしくお願い致します。

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