あなたのその息切れ、肺循環の異常かもしれません

皆様は肺高血圧症という病気を御存知でしょうか?息切れやむくみが生じる原因として、心筋梗塞、弁膜症、心筋症、不整脈という病名を思い浮かべると思います。肺高血圧症は、稀ではありますが忘れてはならない重要な病気です。血液の流れである循環は二つの系統が直列につながり構成されています。すなわち、心臓から全身に血液(酸素)を送る体循環と、全身を流れた酸素濃度の低い血液を心臓から肺に送りガス交換をして心臓に戻す肺循環です。何らかの原因で心臓から肺に血液を送る肺動脈の壁肥厚、血栓、収縮により血管内腔が狭くなると、肺動脈の圧が異常に上昇します。これが肺高血圧症です(診断の確定には心臓カテーテル検査が必須です)。肺に十分な血液を送るため、右心室はより強い力で血液を押し出さなくてはなりません。全身に十分な血流(酸素)を供給する事ができず「息切れ」を自覚します。肺動脈の圧が高値で持続する事で右心室の力は次第に低下(右心不全の進行)し、血液が右心房に戻りにくくなり「むくみ」を自覚します。最終的に死に至りうる進行性疾患です。全身の動脈の圧が上昇する病気は高血圧症で、約1000万人の患者様がおられ内服治療が確立しています。一方、肺高血圧症は1万人にも満たず、生命予後不良の希少疾患であるため厚労省の難病に指定されています。しかしながら近年、新薬(作用機序の異なる3系統の薬を組み合わせて投与)や手術(カテーテル治療や開胸術)の進歩により治療成績が著しく向上している注目領域でもあります。肺高血圧症の症状は息切れ、胸痛、動悸、めまい、むくみ等であり、他の心臓疾患と区別できません。そのため発症から診断まで数年を要する事も珍しくありません。また、発症初期には症状が軽度である事も診断を困難にしている理由として考えられます。生命予後の改善には早期診断、早期治療が極めて重要です。

肺高血圧症はその原因別に大きく5つのグループ、

  1. 肺動脈性(特発性、遺伝性、薬剤性、先天性心疾患、膠原病等)
  2. 左心疾患
  3. 肺疾患
  4. 慢性血栓
  5. その他

に分類されます。
当院では肺高血圧症外来を設け(毎週火曜午前:平田医師)、専門診療に取り組んでいます。肺高血圧症を来す原因は多岐にわたりますが、適切に診断を行い各々の原因に応じた最適な治療を提供できるように努めています。息切れやむくみ等で診断がつかずお困りの患者様、是非当外来に御相談下さい。

平田 哲夫
平田 哲夫循環器内科 医長

外来担当医表はこちら

当外来の外来担当医表はこちらからご覧頂けます。