1.新型コロナウイルスだけではない、この冬の備えを
10月も後半になり、朝晩の冷え込みが冬の訪れの近いことを証明しています。
すべての患者さまおよびそのご家族さまにおかれまして、体調を崩すことなく健康にこの冬を乗り切っていただくことを切に願っております。
以前、“【肺炎球菌ワクチン】接種のおすすめ”という話題を掲載したのを覚えていますでしょうか。肺炎を発症すると、発熱により体力が奪われ、身体を維持するために心拍数が上がるため心臓に負担がかかります。また、肺での空気の交換が十分に行えず身体が酸素不足の状態になるだけでなく、肺で起きた炎症は心臓の働きを抑え込んでしまいます。肺炎は、心不全を急激に悪化させる大きな原因となるのです。私自身も、肺炎が原因で酷い心不全状態になり、緊急入院される患者さまを何人も見てきました。
肺炎球菌により引き起こされる感染症は様々ですが、心臓病を患った方が肺炎球菌による“肺炎”を引き起こすと、特に重症化することが知られています。そのため、当院では心臓に不安を抱えた患者さまには、肺炎球菌ワクチンの定期的な接種を推奨しています。
さて、今回は、今秋より変更になった予防接種についてお話をさせていただきます。
新型コロナウイルスと向き合い、早半年以上が経過しました。手洗いなどの手指衛生、外出の際のマスク着用など感染予防に努めていらっしゃる方が大半かと思われます。それでも、感染の拡大と縮小を繰り返し、不安を完全に拭えないまま、季節性のインフルエンザウイルスが流行する時期となりました。咳や発熱などが現れた場合、新型コロナウイルスに感染したのか、単なる季節性のウイルス感染なのか、非常に判断に迷う時期となります。症状のある方は、まずはお住いの各自治体の「帰国者・接触者相談センター」に電話をしてご相談いただき、対応を仰いでいただきますようお願いします。
2.インフルエンザワクチン予防接種の開始日について
では、本題に入ります。
実は、今年から、インフルエンザワクチン予防接種の開始日が2つに分割されたのをご存じでしょうか。国が定める予防接種法に基づき、65歳以上の高齢者・および60~64歳の重篤な心臓・腎臓・呼吸器の病気を持つ方など(※1)は10/1より接種が開始となっており、それ以外の方は一般的に10/26からとなります。
(※1 )60~64歳の心臓・腎臓・呼吸器の機能、またはヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に異常があり、身体障害者手帳1級をお持ちの方が該当になります。
今年は例年と比較し、ワクチンの供給量が増えているとのことですが、インフルエンザワクチンを接種希望の方は早めの対応を推奨いたします。また、皆さまご存じの通り、ワクチンを接種してもウイルス感染を完全に防ぐことはできません。症状が酷くならないようにするためのものですから、普段の感染予防策は今後も欠かさず行ってください。
3.異なるワクチンの接種間隔について
続きまして、肺炎球菌ワクチンを含む予防接種全体の話題です。
今年の10/1から、異なるワクチンを接種するときに必要な接種間隔が一部緩和されます。
例えば、今までは、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンを同じ日に接種することができず、最低6日間の間隔を空ける必要がありました。10/1からはこの制限が無くなったため、同じ日に接種することが可能となります。ワクチン接種のために何度も病院を受診することが難しいご高齢の患者さまにおきましては、この機会に是非ご検討されてはいかがでしょうか。
もちろん、今までと接種間隔が変わらないものもありますので、ご不明な点はかかりつけの医療機関にお気軽にご確認ください。
参考資料
厚生労働省 ホ-ムページより抜粋
医薬品医療機器総合機構 ホームページより一部抜粋
(医薬品・医療機器等安全性情報 No.375)