『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第39弾~

2022年1月27日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』今年2回目の放送です。

本地洋一さん:今日は心臓弁膜症に対するカテーテルを使った治療についてお話しいただけるということですが・・・。

松尾院長:カテーテルを使った心臓病の治療といっても色々とあります。

今日は、心臓弁膜症、中でも『大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療』のお話をしたいと思います。

心臓という臓器はよくポンプに例えられますよね!

全身から静脈を通って心臓に戻ってきた血液(静脈血)は右心房から右心室を経て肺へ送り出されます。肺で血液は二酸化炭素を放出し、酸素を取り込み再び心臓に戻ります。肺から心臓に戻った血液(動脈血)は左心房から左心室を経て大動脈に拍出され、全身に動脈血が届けられます。

この心臓のポンプ機能が効率よく適切に働くために右心室と左心室の入り口と出口に合計4つの心臓弁(右心室の入口に三尖弁、出口に肺動脈弁があり、左心室には入口に僧帽弁、出口に大動脈弁)があります。

これらの弁が、加齢や何らかの感染などでうまく働かなくなる病気が『心臓弁膜症』です。

統計的には65歳~75歳の方の20人に1人が、75歳以上の方の10人に1人が『心臓弁膜症』と言われています。

『心臓弁膜症』は大きく2種類に分けることができます。

弁が動脈硬化や石灰化で硬くなることで十分に開かず、血液が弁をスムーズに通過できなくなる状態を「狭窄症」といいます。この場合、心臓はより強い力で収縮しないと血液を押し出せないため、負担がかかります。

もう一つは弁が完全に閉まらないために血液の逆流や漏れが生じているもので「閉鎖不全症」といいます。こちらは一度弁を通過した血液が逆流してしまうことにより、必要な血液を送り出すためにより多くの仕事をする必要があり、やはり心臓の筋肉に負担がかかります。

「狭窄症」と「閉鎖不全症」はいずれも心臓に負担がかかった状態ですので、この状態が長く続くと心臓はだんだんバテしまいます。心臓がバテてしまい、ポンプ機能が低下した状態を心不全といいます。

なかでも、『大動脈弁狭窄症』は弁膜症の中では最も頻度が高い病気です。自覚症状としては労作時の息切れ、胸痛、意識消失などがあり、初発症状のことが多いのですが、これらの自覚症状が出てくる前に健康診断の聴診で心雑音を指摘され、心臓超音波検査で診断されることもよくあります。

本地洋一さん:弁膜症の治療というと我々一般人は手術をまず思い浮かべますが、胸を開かずにカテーテルで治療が出来るのですか?

松尾院長: おっしゃる通り、従来の心臓弁膜症治療は、全身麻酔で胸を開き人工心肺をつなぎ、心臓を一時的に停止させて、悪くなった弁を人工弁に取り換えたり、外科的に形成したりする大手術が主流でした。

しかしながら、本邦では約9年前からカテーテルを使った弁膜症治療が行われるようになり、現在では全国各地で行われるようになっています。

今日お話しするのは大動脈弁が加齢などにより石灰化して硬くなり、弁が開きにくくなることで、血液の流れが妨げられてしまう『大動脈弁狭窄症』に対するカテーテル治療で、経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI: タビ https://gifu-heart-center.jp/outpatient_tavi/ )です。

その方法は、足の付け根や、鎖骨の下、心尖部等からカテーテル(治療の管)を用いて小さな穴より劣化した弁の代わりに新しい人工弁(生体弁)を留置してくるという治療です。

岐阜ハートセンターでは、このTAVI(タビ)治療を7年前から行っています。昨年の実績では81例の患者様に対し、ハイブリッド手術室入室から手技を終了して病室に戻るまでの時間は86分、実質の手技時間は平均42分でした。

このようにTAVI(タビ)治療は、外科的開胸手術に比べより低侵襲かつ短時間で行うことが出来るため、従来は開胸手術が出来なかった高齢者や手術リスクの高い患者様にも比較的安全に行うことが可能です。

特に80歳以上のご高齢の方などに対しては、外科的開胸手術に比べ侵襲性が軽度で手技時間も短く、結果として入院期間も短期間となるため、最近ではTAVI(タビ)治療は、『大動脈弁狭窄症に対する侵襲的治療』の第一選択になりつつあります。

吉田早苗さん:リスナーさんからのメールです。

「私も健康診断で(弁膜症が)見つかりました。エコー(心臓超音波)検査で経過観察となりました。」とのことです。

松尾院長:弁膜症は軽症のまま経過して手術が必要ない方も見えますし、進行して重症となり手術やTAVI(タビ)治療が必要となる患者様もお見えになりますので、症状がない方でも1年に2回程度は心臓超音波検査でフォローしていくことが大切です。

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。

次回のハート相談所は2022年2月10日(木)14:30からの放送になります。