皆様、ぎふチャンのラジオ番組で『きょうもラジオは!? 2時6時 』ってご存じでしょうか?

2021年1月28日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第15回目の放送です。

関東4都府県に引き続き、岐阜県に発令された緊急事態宣言により年末年始に比べて新型コロナウイルス感染の新規患者数は若干減少してきているように思えますが、まだまだ重症の患者様は多く、予断を許さない感じです。したがいまして2021年新年の第2回目の放送は、前回に引き続きスタジオではなく、岐阜ハートセンター内から携帯電話での出演になりました。

今回の放送のテーマは『コレステロール』についてです。

本地洋一さん:我々の年代になりますと、健康診断とか病院の検査などで『コレステロール』が高いとか低いとかお医者さんに言われることがあって、なにかと心配している方もいらっしゃるかと思います。そこで先生、そもそも『コレステロールってなんなのか?』からお教え願えますか!

松尾仁司院長:本地さんのおっしゃる通り『コレステロール』というのは健康診断を行った際に必ず話題になりますよね。

一言でいうと『コレステロール』とは血液の中の脂分の一つと考えてください。専門的な言い方で血中脂質といいます。これは文字通り血液に含まれる脂肪分を示しまして、最近よく耳にすることが増えてきた『LDL(悪玉)コレステロール』『HDL(善玉)コレステロール』『中性脂肪(トリグリセリド)』などの総称をいいます。

水と油ということわざにもある通り通常水に油は溶けにくいのですが、コレステロールはあるたんぱく質と結合することにより血液という液体に溶け込んでいます。『コレステロール』はこのたんぱく質の種類の違いによって善玉になったり悪玉になったりするわけです。

その理由は、『LDLコレステロール』は肝臓で合成された『コレステロール』を全身の組織に運搬する働きをしています。つまり『LDLコレステロール』が多ければ多いほど全身の組織に多くの脂肪分が運ばれるため、組織の一つである血管内にもその脂肪がしみ込んで蓄えられ、これが動脈硬化の原因となるため『LDLコレステロール』『悪玉コレステロール』と呼ばれているわけです。

逆に『HDLコレステロール』は全身の組織に蓄えられた『コレステロール』を肝臓に戻す働きをしています。そのためが『HDLコレステロール』多いと組織にたまった脂肪を取り出してくる働きをしているため、『HDLコレステロール』の値が高いということは組織に脂分が沈着しにくくなります。これが『HDLコレステロール』『善玉コレステロール』と呼ばれている所以です。

本地洋一さん:なるほど、『HDLコレステロール』は、ある意味お掃除をしてくれている『コレステロール』なんですね!

松尾仁司院長:健康診断や病院の診察で『脂質異常症』という診断がつくことがあります。先ほど『コレステロール』には『LDLコレステロール』『HDLコレステロール』『中性脂肪』の3つがあるといいましたが、『脂質異常症』にはLDLの値が高い“高LDL血症”、HDLの値が低い“低HDL血症”と中性脂肪の値が高い“高中性脂肪血症”の3つのタイプがあるということを知ってください。

本地洋一さん:今教えていただいた悪玉の『LDLコレステロール』が長年血液中に高い値で存在すると、実際にはどのような悪いことが起こるのでしょうか?

松尾仁司院長:先ほども申し上げたように血液中に『LDLコレステロール』が多いと血管内にもその脂肪がしみ込んで蓄えられます。そうすると、それをマクロファージという貪食細胞が血管の中にはいってきてコレステロールを食べて掃除しようとします。その後、食べて死んでしまったマクロファージの死骸が血管内にたまってしまいます。この死骸は粥腫といって動脈硬化のもととなります。

動脈硬化は全身で起こります。頸動脈や脳の血管で動脈硬化が起こば脳卒中の原因になりますし、心臓を栄養している冠状動脈に動脈硬化が起これば、狭心症や前回お話しした心筋梗塞の原因となることが知られています。

本地洋一さん:『脂質異常症』は実際には何歳くらいから増えてくるのでしょうか?

松尾仁司院長:疫学的には、赤ん坊の時は『LDLコレステロール』の値は30mg/dl程度と低い値であることが知られています。これが成長するにつれて徐々に高くなっていき、40歳くらいになると70mg/dlから130mg/dlの間くらいの方が多いと言われています。

しかしながら、遺伝的に『コレステロール』を分解する仕組みがうまく働かない“家族性高LDL血症”の患者様は、20歳代や30歳代の若いうちから動脈硬化性の病気を発症してしまうことがあります。

一般的には『LDLコレステロール』の値が140mg/dlを超えると “高LDL血症”、120mg/dl~140mg/dlくらいが“境界型高LDL血症”と言われています。

ただ、脳卒中や虚血性心臓病の診断が確定している方についていえば、120mg/dlの『LDLコレステロール』値は正常とは言えません。これらの病気をお持ちの方は動脈硬化をこれ以上進行させない、さらに動脈硬化を退縮させるためには、『LDLコレステロール』値は70mg/dl以下にコントロールすることが現在の医学的なガイドラインとなってきています。

本地洋一さん:要するに、動脈硬化性の病気をお持ちの方は一般の方よりより厳しい『LDLコレステロール』値のコントロールが重要だということですね!これはお薬とか食事療法とか運動療法によってどうにかなるものなのですか?

松尾仁司院長:『脂質異常症』の原因はいくつかあります。先ほどお話しした、“家族性高LDL血症”は体質によるものです。一方で、食生活をはじめとした生活習慣の乱れが後天的な『脂質異常症』を引き起こすことも広く知られています。そのほかの原因として加齢、女性の場合は閉経すると『コレステロール』値を正常に保つ働きをしている女性ホルモンの分泌が低下するため、これによって『脂質異常症』を起こすこともあります。

つまり、『脂質異常症』の治療は、その原因を正しく診断する必要がありますが、遺伝的な体質が原因である“家族性高LDL血症”や動脈硬化性の病気をお持ちの方は、お薬をしっかり飲んでいただく積極的な脂質低下療法を行う必要があります。

そういった病気でない『脂質異常症』の方は一般的には食生活の改善、適度な運動など生活習慣を改善することが、『脂質異常症』を治療するうえで重要なポイントとなってきます。

本地洋一さん:もう少し食事と運動についてお聞きしたいところですが、時間が来てしまいました。

吉田早苗さん:次回のハート相談所は2021年2月11日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。