『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第64弾~

2023年2月9日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 令和5年3回目の放送です。

今回の放送のテーマは『心臓病 その後のケア』です。

本地洋一さん:実はこの放送のリスナーの方からメールをいただいております。

吉田早苗さん:岐阜市在住の○○さんからの質問です。

「いつも楽しく聞かせてもらっています。特に木曜日のハート相談所は自分にも身につまされる問題なので、聞き逃せません。実は、うちの主人は現在62歳なのですが、50代の時に左冠動脈が詰まりかけてバルーンを使ったカテーテル治療で事なきを得ています。

しかしながら、毎年寒い時期になりますと再発しないかと心配になってしまいます。・・・

カテーテル治療を行った患者はその後のケアはどのようにすると良いのでしょうか?・・・

『心筋梗塞の再発頻度は?』

松尾仁司院長: 2018年度の報告では、年間約7万5000人が心筋梗塞を発症され、カテーテル治療やバイパス手術などで一命をとりとめることが出来た患者様でも、約30%程度の方が、術後3年の間に死亡、心筋梗塞、脳卒中といった心血管イベントを起こしていると報告されています

心血管イベントを再発された患者様の、約半数は以前に治療した部位の再発ですが、残りの半数の患者様は、以前とは別の部位の新規病変によるということも分かっています。

症例: 70歳代 男性

2012年 急性心筋梗塞発症し、○○病院にて右冠動脈にステント留置

2023年1月 雪かきをしようとしたところ意識消失、○○病院で右冠動脈の再閉塞による急性心筋梗塞の再発と診断され当院救急搬送。

① 緊急カテーテル治療を行い再疎通に成功。

② 入院3日目 待機的に左前下行枝の新規病変に対し、ステント治療

 

『なぜ再発の予防が大切なのでしょうか?』

動脈硬化性の疾患は、狭くなったり、詰まったりした冠動脈の病変をカテーテル治療によって血流を改善することにより、日常生活に戻ることが可能な病気です。

その一方で、何年か後に治療した部位が再度狭くなったり、また治療した部位とは別の場所に動脈硬化の進行による狭窄が出来たりする場合があります。

特に、心筋梗塞を起こしたことがある人は、起こしたことのない人よりも、心筋梗塞を再発したり、心不全を起こしたりするリスクが高いことが分かっています。そのため、一度心筋梗塞を起こした人は、さらに注意して再発を予防することが大切です。

本地洋一さん:『急性心筋梗塞』の場合、入院してカテーテル治療などで詰まった血管を治療した後もそれですべて終わりというわけではないということですね!

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『急性心筋梗塞の再発を防ぐためには動脈硬化の予防が重要』

松尾仁司院長: 冠動脈を詰まらせる原因となるのが動脈硬化です。『急性心筋梗塞』の患者様の場合、詰まった部位の他にも、今後進行していく可能性のある部位がいくつか隠れていることが多くあります。また、このような方は冠動脈のみならず、脳や腎臓をはじめとした他の臓器を栄養している血管や、手足の動脈にも動脈硬化という爆弾を抱えていることがわかっています。

本地洋一さん: 冠動脈が悪い方は、全身の動脈も悪いということですね!

松尾仁司院長: 心筋梗塞の再発防止は、これらの隠れた爆弾を爆発させないこと、すなわち全身の動脈硬化の予防が重要です。

特に心臓の血管も悪い、脳の血管も悪い、腎臓も悪い、手足の血管も細いというように全身の動脈硬化が並行して進行してくる方もお見えになります。このような患者様に対しては、詰まった部位を侵襲的に拡げていく治療を行うというよりも、血液中の動脈硬化を悪くする因子を減らす治療を優先したほうが良いと考えます。

本地洋一さん: 動脈を流れる血液の質を改善することが、動脈硬化の進行を抑え、結果心筋梗塞の再発を防止するということですね。

具体的に我々は、日常生活でどのようなことに注意したらいいのでしょうか?

松尾仁司院長: 以前にお話しした、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙習慣、肥満はすべて動脈硬化の危険因子であることが知られています。

・高血圧: 冠動脈疾患の患者さんの降圧目標は130/80mmHg未満とされています。お薬による治療をしっかり続けるとともに食生活の改善、運動習慣、禁煙といった生活習慣を改善することにより血圧をコントロールしましょう。

・ 糖尿病: 早期から血糖コントロールを行うこと、糖尿病にかかっていない人も、予備軍になっていないかを検査でチェックしておくことをお勧めいたします。血糖値をコントロールするためには、薬物療法、食事療法、運動療法を正しく行うことが大切です。

・脂質異常症(高LDLコレステロール血症): 冠動脈疾患再発予防のためには、発症早期から積極的なLDLコレステロール低下療法を行うことが大切です。このためには、普段からコレステロールの多い食事を控えたり、運動するなどの生活習慣の改善を図るとともに、薬による治療をしっかり行う必要があります。

・ 肥満: 太りすぎは心筋梗塞による死亡リスクを高めることが分かっています。一方で、最近ではサルコペニアやフレイルといった高齢者の筋肉減少や虚弱という状態による体重減少も死亡リスクを高めることが分かってきています。そのため、正常体重(BMI: 18.5~25kg/m2)を維持することが勧められています。特に肥満に該当するBMIが25kg/m2を超える方は運動や食事など生活習慣を改善して、理想体重に向けて体重を減らすようにしましょう。

・ 喫煙: 喫煙は心筋梗塞発症リスクを高めます。新型タバコについても、心血管疾患の発症リスクを上昇させる可能性が指摘されています。また、受動喫煙の恐れもあるので、強く禁煙をお勧めします。

これらを実行するためにも、毎日同じ時間に血圧を測る、体重を計る、脈を計る習慣をつけると良いと思います。これらの情報とともに大切なものはご自分の自覚症状です。最近少し動くと息切れがするとか、坂を上ると動悸がする、以前は2階まで階段上っても何ともなかったのに、階段を上ると胸が抑えられるようになったなどの自覚症状の変化を定期受診の際に主治医の先生にお伝えいただくと我々医師はそれに応じた検査をすることが出来、いち早く正しい正確な診断が可能となります。

本地洋一さん: いつも患者様を近くで見ているご家族の情報も大切なのではないですか?

松尾仁司院長: おっしゃる通りです。確かに、ご本人はいつもと変わりないと言われても、付き添いのお嫁さんから「最近おばあちゃんは少し動くだけで肩で息をするようになってきました!」という情報で、CTを撮ってみたら心不全が悪化して胸水が溜まっていたなどということもありますよ。

吉田早苗さん:次回のハート相談所は2023年2月23日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。