『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第41弾~

2022年2月24日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年4回目の放送です。

本地洋一さん:今日のテーマは『肥大型心筋症』です。

『肥大型心筋症』とは聞きなれない病名なのですが、いったいどのような病気なのでしょうか?

松尾院長: このコーナーでは『心臓は筋肉で出来たポンプである』とよく言っていますが、心筋症というのはこの心臓の筋肉の病気です。

通常、成人の左心室の筋肉の厚みは7-8㎜くらいです。

これに対し、心臓の筋肉が肥大して左室壁の厚みが15㎜以上に分厚くなってしまう病気を『肥大型心筋症』といいます。

日本循環器学会と日本心不全学会の合同ガイドラインでは、①左室ないしは右室心筋の肥大と②心肥大に基づく室拡張機能低下特徴とする疾患群と定義されています。

『肥大型心筋症』は心筋梗塞や狭心症に比べると稀な病気で、厚生労働省の調査では病院を受診した人10万人当たり17.3人。男女比でいいますと2.3対1で男性に多い傾向にあると言われています。

しかしながら、一般の住民健診などの心臓超音波検査で原因不明の左室肥大がある方は、500名~1000名に1人見えるという報告もあります。

肥大型心筋症の定義

『肥大型心筋症』の原因は遺伝子の異変で、患者様の約半数が家族性の発症で、約半数は原因不明です。

本地洋一さん:『肥大型心筋症』はどのような症状が出て、患者様にとってはどのような弊害があるのでしょうか?

松尾院長: 心臓という臓器は心嚢という袋の中に入っています。つまり、心臓は心嚢の大きさ以上には拡張できません。

『肥大型心筋症』は心臓の筋肉が肥大して心臓の壁がどんどん分厚くなってくる病気ですが、心臓は心嚢の大きさ以上に外側に大きくなることが出来ないため、結果的に心臓の内腔が小さくなって血液が充満する容積が少なくなってしまいます(拡張機能障害)。こうなると心臓が1回の収縮で拍出できる血液の量が少なくなるため、心臓のポンプとしての機能が低下してしまいます。

自覚症状としては、初期の段階では特に自覚症状がない患者様が多いのですが、労作時の呼吸困難や胸の圧迫感や不整脈に伴う動悸やめまい、重篤な場合失神や突然死を起こすこともあります。

診断としては、『肥大型心筋症』は心電図には左室肥大の所見が現れますので、健康診断の際に心電図異常で見つかることもありますし、心臓超音波検査では心筋の肥大が良くわかりますので、検診での心臓超音波検査はこの病気のスクリーニングに威力を発揮します。

『肥大型心筋症』を疑った場合、病院ではどのくらいの強度の運動が可能かという、運動耐容能の検査や、命に関わる重篤な不整脈を持っていないかをしっかりと調べます。また、診断には心臓超音波検査が極めて有効で、左室肥大の程度や分布、左室流出路狭窄の有無や程度、心機能などを知ることが出来ます。なお、確定診断のためには心臓カテーテル検査や組織像を調べるための心筋生検などを行います。

本地洋一さん:『肥大型心筋症』は初期には無症状で、検診で見つかることもあるということですね!治療法はあるのでしょうか?

松尾院長: 労作時の息切れなどの症状がある方にはβ遮断薬やベラパミルといった薬によって症状の改善が期待できます。不整脈が出る患者様は、不整脈を抑える薬を内服していただくことになります。『肥大型心筋症』で患者様の一部の方は心房細動という不整脈を合併することがあります。そのような方は心臓の中に血栓(血の塊)ができやすくなりますので、血液をサラサラにするお薬を処方しますし、カテーテルアブレーションで心房細動自体をでなくするような治療も行われています。心室細動のような致死的不整脈をお持ちで、お薬の効果があまり見られないような患者様には、突然死予防のため植込み型の除細動器(ICD)を植込むこともあります。

本地洋一さん:これらは、対症療法だと思うのですが、直接的な治療法もあるのでしょうか?

松尾院長: 『肥大型心筋症』は大きく閉塞性肥大型心筋症と非閉塞性肥大型心筋症に分類されます。『閉塞性肥大型心筋症』は左心室の出口(流出路)の筋肉が分厚くなって、心臓が一生懸命血液を全身に送り出そうとしても、流出路の筋肉が邪魔をして十分な血液を送り出せなくなってしまいます。

難治性の『閉塞性肥大型心筋症』の治療は、左室流出路の肥大した筋肉を外科的に心室筋切除術や、カテーテル治療では肥大した心筋に酸素と栄養を送っている冠動脈の枝をわざと閉塞させて、肥大した部分に心筋梗塞を起こし、筋肉を薄くする経皮的中核心筋焼灼術(PTSMA)といった治療法などがあります。

年齢が若くて極めて左室収縮機能の悪い(拡張相肥大型心筋症)患者様には、心臓移植が必要となる場合もあります。

本地洋一さん: これまで、『肥大型心筋症』の病態や発症頻度、検査や治療について松尾院長から教えていただいたのですが、この病気の治療後の経過や予後はどうでしょう?

松尾院長: 統計的なお話をしますと、5年生存率は90%、10年生存率は80%程度と言われています。したがって、『肥大型心筋症』のすべての患者様の予後が悪いわけではなく、一部の患者様は無症状のまま生涯を終えられる方もお見えになります。

また、突然死された方を病理解剖された際、はじめて肥大型心筋症と診断さる場合もあります。

ですから、検診で左室肥大を指摘された時などは、一度病院で心臓超音波検査をやってもらうのが良いと思います。

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。

次回のハート相談所は2022年3月17日(木) 14:30からの放送になります。