『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第66弾~
2023年3月9日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 第66回目の放送です。
今回の放送のテーマは『心臓病とストレス』です。
本地洋一さん:ストレスは心臓病に影響を及ぼすのでしょうか?
あと、職場環境や生活環境の変化によるストレスについてリスナーの方からの質問も届いておりますので、松尾院長にお答えいただきたいと思います。
『メンタルストレスとは心にひずみがある状態です』
松尾仁司院長:もともと、ストレスは「物のひずみ」を表す物理学の用語ですが、私たちの生活の中でストレスという場合は、心や体がなんらかの原因で、ゆがんで変化している状態を表します。
精神的なストレスのことを『メンタルストレス』と言い、これは心にひずみがある状態になってしまっていると考えられます。
心は英訳するとHeart(ハート)です。また英語のHeart(ハート)は心臓と訳すこともできます。このことからも、心(精神活動)と心臓は密接な関係にあることが類推出来ます。
リスナーの皆様は自律神経という言葉を聞いたことがあると思います。これは内臓の働きや代謝、体温などを調整する働きをもち、皆さんの意思とは関係なく24時間、365日働き続けています。また、アクセルの働きをする交感神経とブレーキの働きをする副交感神経の2種類があります。
人はストレスを感じると自律神経のバランスが崩れて交感神経が緊張し、優位に働きます。
つまり、ストレスが多い方は、心臓にとっては脈拍が速くなったり、血圧が高くなった状態が長く続くことになります。
一方、副交感神経が優位に働けば、血圧が下がり心拍数は減少。瞳孔が収縮し、心と体が休んでいる状態になります。
本地洋一さん:なるほど、それでは『メンタルストレス』により交感神経が優位となることと、心臓病とどのような関係にあるのでしょうか?
『メンタルストレスは循環器疾患の原因となります』
松尾仁司院長:『メンタルストレス』による交感神経の緊張状態が長く続くことは、心筋梗塞や脳卒中等をはじめ様々な病気とリンクすることが知られています。
交感神経の緊張状態が続くと血圧が上昇し、血管そのものに機械的なストレスがかかり続けることになり、脳や心臓、大動脈などの動脈硬化を悪化させたり、粥腫の破綻、動脈の解離や破裂を起こしやすくなります。
つまり、『メンタルストレス』は脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患を悪化させる原因となるということです。
心筋梗塞でいうと『メンタルストレス』を抱えている方は『メンタルストレス』がない人に比べて心筋梗塞の発生率が約1.55倍高いという研究結果が出ています。さらに災害によるストレスと心臓病の関係も研究されています。1995年の阪神淡路大震災の後、心筋梗塞の死亡者数が急に増えたことが分かっています。
このように、『メンタルストレス』と心臓病には非常に強い関連があることが広く知られています。
本地洋一さん:なるほど、そうしますと、心臓病というのは体の中の異変だけで起こるのではなく、『メンタルストレス』などの精神的負荷でも引き起こされることが、疫学的調査でも知られているということですね。
『ストレスの原因をストレッサーといいます』
そもそもストレスとは、外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のことです。 外部からの刺激には、天候や騒音などの環境的要因、病気や睡眠不足などの身体的要因、不安や悩みなど心理的な要因、そして人間関係がうまくいかない、仕事が忙しいなどの社会的要因があります。
日常生活でストレスと呼ぶものの多くは、配偶者や恋人、近しい人の死、職場や学校、家庭での人間関係、仕事の重圧などの心理的要因や社会的要因がストレッサーとなっていると言われています。
これらのストレッサーが重なれば重なるほど体調にも大きな影響を与えます。
本地洋一さん:ストレスをコントロールすることは、病気の予防にもつながるということですね!でもこれはなかなか難しいのではないでしょうか?
松尾仁司院長:おっしゃる通りですね。そもそも人が生きていくうえで、全くストレスなく生活することは不可能に近いと思います。
吉田早苗さん:
『リスナーの方から番組にメッセージが届いています』
本地さん、早苗さんいつも楽しくラジオ聞かせてもらっています。木曜日に放送されている「ハート相談」で、先生に聞いてほしいのですが…
あんまり単純な悩みすぎて。これでも良いでしょうか?私も何年か前に50歳を過ぎ、夫婦共働きですので、今も毎日会社に出掛けています。
1年半ほど前に職場の配置換えがあり、慣れない作業と、仕事で車に乗ることが増え、苦手な運転で心身クタクタになる日が続きました。
今年になってやっと落ち着いて来ましたが、ここのところ時々心臓が痛いと感じることがあります。
車での移動することが増えたためか?体重も少しづつ増えてきて、血圧も少しづつ高くなっています。
松尾先生、ハートセンターには、どのように言って、受診すれば良いでしょうか?
松尾仁司院長:今のお便りを拝聴すると職場の配置転換やなれない自動車の運転など、生活習慣が大きく変わったことによって体調にも影響が出ているのかもしれませんね。
時々心臓が痛くなるとのことですが、狭心症や心筋梗塞の前兆である可能性もありますので、冠危険因子である肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症などをお持ちである場合は特に一度早期の受診をお勧めします。一方で胸の痛みを訴えられる方の半数程度は心臓以外が原因で症状が出ていることも分かっています。お手紙だけではこれらの症状が心臓からくるものかどうか判断することは困難であるため、やはりホームドクターの先生に相談していただくことをおすすめいたします。そのうえで、命に係わる病気がなかった場合、その説明を聞いただけで安心して、それ以降胸の症状もなくなる方も大勢みえますよ。
岐阜ハートセンターは循環器の専門病院ですが、当院の循環器内科の専門医は内科専門医でもありますので、心臓以外の病気も診ることはできます。そのうえで消化器であるとか、呼吸器の専門的な診断と治療が必要と判断した場合はその道の専門の先生に紹介させていただいています。
本地洋一さん:どうしてもハートセンターは心臓の専門病院ということで敷居を高く考えておられるのかもしれませんが、この先長く健康的に過ごすためにも一度診察を受けたほうが良いということですね!
吉田早苗さん:次回のハート相談所は2023年3月23日(木)にお送りいたします。
また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。