『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第42弾~

2022年3月17日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年5回目の放送です。

本地洋一さん:さて、今日のテーマですが、『心不全』です。

『心不全』ってよく聞きますが、『心不全』っていったいどんな病気で、どのような病態なのかをわかりやすく教えてください。

松尾仁司院長:今までこのコーナーでも何度かお話ししてきましたが、心臓というのは血液を全身に送り出すポンプの働きをしています。正常な状態の心臓は一回拍動すると70mlから80mlほどの血液が送り出されます。通常心臓は安静時には1分間に60回から50回拍動しますので、心臓は1分間に5リットルから8リットルの血液を全身に送り出しています。

また、運動すると脈拍が早くなり、心臓が送り出す血液量は安静時の約5倍以上になります。

この心臓のポンプ機能が低下した状態が『心不全』といいます。『心不全』の原因は様々で、心臓を栄養している冠動脈が閉塞することによって『心不全』を起こす場合、心臓の弁が機能不全を起こす弁膜症によって『心不全』になる場合、不整脈によって脈が乱れることが原因で『心不全』になる場合、また前回お話した心筋症のように心臓の筋肉自体の病気が原因で『心不全』を起こす場合もあります。

つまり『心不全』とは、病名と言うよりは心臓のポンプ機能が低下した状態、つまり病態を示す表現というとらえ方が正しいとお考えください。

本地洋一さん:なるほど、『心不全』とは、狭心症や弁膜症などの心臓の病気によって、ポンプ機能が低下した状態のことなのですね!

心臓の病気以外が原因で『心不全』になることがあると聞いたことがあるのですが・・・

松尾仁司院長:心臓は脳や腎臓と関連がありますし、甲状腺などの内分泌をつかさどる臓器とも関連を持っていることが知られています。これらの臓器障害によって起こる『心不全』のことを『二次性心不全』と言います。

日本は今、超高齢者社会に突入したと言われています。人は年をとると老化しますので、ご高齢の方が増えてくると、心臓病だけでなく腎臓病や甲状腺の病気になる方も多くなります。このため『心不全』になる方の頻度も高くなってきていて、年間約35万人の方が『心不全』を発症しており、心不全パンデミックといわれて大きな社会問題となっています。

本地洋一さん:『心不全』になるとどのような症状が現れるのでしょうか?

松尾仁司院長:『心不全』の症状として最も多いのは、労作時の息切れです。

以前は階段で3階まで普通に上がれたのが、2階に上がるのにも息が苦しくなる、ちょっとした坂道を上るだけでハアハアと息が切れて、坂道の途中で休まないといけないといった状態で、これらの症状は『心不全』が進行してきた際によく見られるサインです。

また心不全が進行すると身体の体液・水分量の増加によって全身のむくみ(浮腫)や体重の増加がみられます。

労作時の息切れ、浮腫、体重増加を合わせて『心不全』の三徴といいます。

本地洋一さん:『心不全』というと、どうしても心臓が停止する一歩手前のような状況をイメージしてしまうのですが、実際にはどのような経過をたどるのでしょうか?

松尾仁司院長:たしかに、そのようなイメージをお持ちの方が多いかもしれませんね!

しかしながら、『心不全』とは必ずしもそのような最終局面というわけではありません。

心臓が止まりそうになるよりももっと早い段階から心臓の機能は低下してきていることが知られています。

本地洋一さん:『心不全』には、治療法があるのでしょうか?

松尾仁司院長:さきほど、『心不全』は様々な原因によって引き起こされる病態であるとお話ししました。我々医師は『心不全』と思われる患者様が受診された場合、原因となる病気つまり原疾患を探ります。

治療としては、『心不全』の状態を改善させるための薬物治療と並行して原疾患に対する治療を行います。

『心不全』の原因が冠動脈の狭窄や閉塞が原因となる場合は、カテーテル治療やバイパス手術などで心筋虚血を解除しますし、重症の弁膜症が『心不全』の原因の場合は弁膜症に対する外科的治療やカテーテル治療を行います。

しかしながら『心不全』の治療は原疾患の治療で完結するわけではありません。一旦は状態が改善し、退院してもしばらくするとまた再発して入退院を繰り返すうちに徐々に悪化していく患者様が多くお見えになります。

これは『心不全』という病態が高血圧症や糖尿病、高コレステロール血症、慢性腎臓病など心臓に負担を起こす病態が持続するため、『心不全』を徐々に悪化させる要因となるためです。したがって、原疾患をきちんと治療することに加えてこれらの危険因子をきちんと治療、コントロールすることが、『心不全』の予防や悪化を防ぐに大変重要となります。

心不全の再発を防ぐためには、退院後も処方されたお薬をきちんと服用することや日常生活においても塩分制限や水分制限、運動習慣などで『心不全』の悪い状態が再発しないような生活習慣を守ることも大変重要となります。

岐阜ハートセンターでは医師と看護師のみならず薬剤師、理学療法士、管理栄養士、ソーシャルワーカーらが、心不全チームを結成し、入院中は患者様のみならず同居されているご家族に対しても服薬指導、運動処方、栄養指導などを行い,退院後も定期フォローすることにより患者様の日常生活を含め『心不全』の予防や悪化を防ぐ取り組みを行っています。

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。