『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第67弾~

2023年3月23日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 第67回目の放送です。

今回の放送のテーマは『動悸』です。

本地洋一さん: この地方では、よくドキドキすることを心臓がアブツクという表現を使いますが、動悸とは脈が速くなっていることを意識するときの言い回しなのですか?

松尾仁司院長: 正常の方が安静にしている時心臓は1分間に60-70回規則正しく拍動しています。このとき皆さんは自分の心臓が規則正しく拍動していることは感じていないと思います。

『動悸』とは、心臓の拍動が自分で感じられる状態のことを言います。『動悸』の感じ方は人によって千差万別でこの状態が『動悸』ですと定義しづらいところもあります。

また、『動悸』の中には病気ではなく正常な人にも起きるものと、治療介入をしないと危険な病気が原因の『動悸』があります。

『正常でも起こる動悸』

激しい運動をした直後などで脈拍数が早くなっている時に『動悸』を感じることがありますし、先日のWBCの決勝で、サムライジャパンの村上選手がホームランを打ったときや、大谷選手がトラウト選手から三振を取った時には『動悸』を感じた方は非常に沢山みえたのではないでしょうか? このような精神的な感動によって引き起こされる動悸は人生を彩る上でも良い『動悸』と言えます。

吉田早苗さん: 確かに大谷選手が最後に投げて逃げ切った時は本当にドキドキを感じました。人生を彩る『動悸』というと、素敵な異性を目の前にしたときに起こるドキドキもありますよね!

『病気が原因の動悸』

松尾仁司院長: “何もしていないときに急にドキドキする”場合や、 “ちょっと動いただけで胸がアブツク”といったような症状がある場合は、その後ろに病気が隠れている場合があります。

他にも、貧血がある場合や甲状腺の病気による内分泌ホルモンの異常も『動悸』の原因となります。

吉田早苗さん: 私の年代の女性もいわゆる更年期の症状の一つなのかちょっとした際に『動悸』や息切れを感じるという方が多いような気がしますが・・・

松尾仁司院長: 更年期障害とは、かみ砕いて表現すると「更年期に現れる、検査をしても異常は出てこないけれどなんとなく体調が悪い状態で、症状も現れたり消えたり、強くなったり弱くなったりと一定でない」状況のことで、自最も多い症状は『動悸』です。

ただ、年を重ねますと、更年期障害以外にも心臓の病気になる確率も高くなってきますし、ほかにも貧血や、甲状腺の病気も女性に多いと言われていますので、『動悸』でお悩みの方は、ご自分で更年期障害だと思い込んでしまわずに、ほかに『動悸』の原因となる病気が隠れていないかは精査することをお勧めします。

吉田早苗さん: 私は『動悸』とともによく息切れも感じるのですが・・・

松尾仁司院長: 『動悸』と息切れはセットで現れることが多いです。運動をすると手足の筋肉はより多くの酸素を必要としますので、息切れを感じます。その結果呼吸回数を増やして多くの酸素を肺から血液中に取り込み、心臓は多くの血液が筋肉にいきわたるように心拍数を増やして対応します。

ただし、ごく軽い労作時に起こる『動悸』や息切れの場合は、心臓病をお持ちの方の他に、肺に病気がある方にも表れる症状です。

心臓の病気を例に挙げますと、不整脈の他にも狭心症、心臓弁膜症、心筋症などたくさんの病気がありますが、いずれも症状として『動悸』や息切れを訴えられる場合が多くあります。

そのため、患者様の訴えだけで正しい診断をつけることは出来ません。

特に『動悸』や息切れの頻度が増えてきたり、感じ方が強くなってきた場合はなるべく早めに病院を受診することをお勧めします。

比較的頻度の高い不整脈に心房細動があります。この不整脈は加齢とともに頻度が高くなり、70歳を超えると10%を超える頻度で心房細動を発症していると言われています。

心房細動を放置すると心臓の中に血栓といる血の塊ができて、その血栓が脳卒中などの恐ろしい病気を引き起こす可能性があるということです。

これらの病気が隠れていることを早く見つけて正しい診断と治療につなげるためには、定期的に健康診断を受けることが大切です。

本地洋一さん: 健康的な老後を送るために定期的に健康診断を受けることによって、重大な病気をより早く見つけることが重要ということですね!

その他、今は3月末で岐阜市内の桜は満開なのですが、動悸と季節は関係がありますか?

『季節と動悸の関係』

松尾仁司院長: 脈拍数は自律神経によって自動調整されています。交感神経が優位に働くと脈拍数は上がり、リラックスして副交感神経が優位な時は脈はゆっくり目になります。

冬場は屋外が非常に寒く、家の中が暖房で暖かいのでその寒暖差によって自律神経が大きく揺さぶられる季節とも言えます。これによって脈拍や血圧が大きく変動しやすいと言えます。

また、夏場は汗をたくさんかきやすい季節で脱水、つまり体の中が水分不足になりがちです。そうなると血管内を流れる血液の水分量が減り血液がドロドロになり、流れにくくなるため、冬場とは異なる機序で脈拍や血圧が上昇しがちになります。

我々循環器の領域では、冬場が最も忙しい季節で、身体への負担が少なく心地よい春と秋はわりと緊急の患者様が少ない季節と言えます。

吉田早苗さん:今自律神経と言われましたが、春は卒業や就職、転勤などで生活環境が大きく変わる季節とも言えますよね。これらの環境の大きな変化も自律神経に影響を与えるのではないですか?

松尾仁司院長: 確かに春は別れと出会いの季節でもありますね、環境が大きく変わることに順応できる方は特に問題ないのですが、上手く順応できない方はメンタルの不調から体調を崩す方もお見えになるかもしれませんね!

本地洋一さん: 今日のお話で悪い『動悸』を早く見つけて対応することが大切だということが良くわかりました。

吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2023年4月13日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。