『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第43弾~

2022年3月24日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年6回目の放送です。

 

地洋一さん:さて、今日のテーマですが、『心不全にならないために』です。

前回の放送で『心不全』とは病名と言うよりは心臓のポンプ機能が低下した状態、つまり病態を示す表現で、様々な病気が原因で起こるというお話をしていただきました。本日のテーマはその続きということです。

松尾仁司院長: 心臓病は日本人の死亡原因のうち、悪性新生物に次いで第2位です。その中で『心不全』が最も多いことが知られています。

先週も少しお話ししましたが、『心不全』という病態を引き起こす原因は多岐にわたります。

『心不全』の原因疾患として最も多いものは、虚血性心疾患で、二番目が高血圧性心疾患、その次が心臓弁膜症です。

つまり『心不全』という病態は種々の病気が原因となって引き起こされたポンプ機能低下なのです。

したがって、『心不全にならないために』は、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、心臓弁膜症など『心不全』の原疾患にならないことが大変重要なのです。

また『心不全』はその病状によってステージAからDまでの4段階に分類することが出来ます。

(図-1:厚生労働省.脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会. 脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方について(平成29年7月より引用 ).

・ ステージAは心疾患ではないけれど、危険因子といわれる高血圧症、糖尿病、高コレステロール血症などを発症している状態をいい、この段階では『心不全』の症状は現れません。

・ ステージBはステージAが進行した段階で、冠動脈硬化症や心筋肥大などの心臓に病的変化が生じていますが、『心不全』の症状は起こしていない状態を言います。

・ ステージCになると、労作時の息切れやむくみ、体重増加など『心不全』に特徴的な症状が現れます。この段階の患者様は急性『心不全』や慢性『心不全』の急性増悪を繰り返し、入院治療が必要となります。この段階の治療とは心不全』の再発を防ぐための治療となります。具体的にはお薬で『心不全』の症状を軽減させることや、『心不全』の原因が虚血性心臓病の場合、カテーテル治療や冠動脈バイパス手術、弁膜症の場合は、外科的な弁置換手術やカテーテル治療があげられます。

・ ステージDは難治性の末期『心不全』の状態です。この段階では補助人工心臓や心臓移植手術が必要となる場合もあります。

本地洋一さん:なるほど、つまり 『心不全にならないために』は、ステージAやステージBの段階で高血圧やコレステロール、血糖のコントロールを行い、心臓病の治療をきちんと行うことが大変重要ということですね!

松尾仁司院長:そのとおりです。リスナーの皆様が行っている定期的な健康診断は一般的に健康な人を対象に行うことで、高血圧症や糖尿病、高コレステロール血症、肥満といったいわゆるサイレントキラーと呼ばれる危険因子をいち早く見つけて治療することにより、『心不全』ステージCやDといった状態になることを予防することが目的でもあるのです。

本地洋一さん:一般の方にとって『心不全』というと、どうしても自分からは縁遠い病気と思われがちですが、血圧が高い方、糖尿病の方、コレステロールが高い方や肥満の方は結構身近にお見えになりますよね。

松尾仁司院長:おっしゃる通りで、高血圧症や糖尿病、高コレステロール血症、肥満はそれ自体あまり症状がありません(心不全ステージA)。しかし放っておくと、ある日突然心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気が発症します(心不全ステージB)。

現在の日本は人生100年時代と言われています。40歳で生活習慣病を指摘された場合、残りの人生60年を健康的に幸せに暮らすためには、自覚症状が出る前に生活習慣を改善し、お薬を正しく服用することによって心不全ステージCに移行しないようにすることが大変重要です。

 

本地洋一さん:本日のテーマは『心不全にならないために』です。これにはステージAとかBの段階で生活習慣病をしっかりとコントロールすることだということはよくわかりました。しかしながら『心不全』ステージCの方にはどのような治療をされているのでしょうか?

松尾仁司院長:ステージCになると、労作時の息切れやむくみ、体重増加など『心不全』に特徴的な症状が現れます。この段階になるとステージAやBで行っていた危険因子に対する治療、心筋梗塞や弁膜症といった器質的な心臓病に対する治療に加え、弱った心臓をいかに元気な状態に近づけ、元気な状態をより長く維持するための治療を行います。

近年『心不全』という状態に陥った方の心臓を長期的に良くするためのお薬が続々と開発されて本邦でも臨床使用可能となってきています。このおかげで今までは治療が極めて困難であったステージDの患者様の予後も徐々に改善する傾向にあります。

また超重症のステージDの患者様の中にはペースメーカーを用いて心室全体を同期させて、効率的な心筋収縮を促し、心機能を改善させる心臓再同期療法と呼ばれる治療法や、補助人工心臓や心臓移植術といった最新の医療が提供できる時代になってきています。

加えて患者様ご自身にはこれらのお薬を正しく服用していただくための服薬指導、食生活の改善や運動習慣をつけることによって生活習慣病をコントロールするための、栄養指導や運動処方などを行っていきます。

本地洋一さん:ステージAとかBの状況での治療と患者様自体の食生活や運動習慣の重要性は大変よくわかりました。

しかしながら、自覚症状がない比較的若い方にとってこれらを厳格に行うことはなかなか困難なことなのではないでしょうか?

松尾仁司院長:診察室で患者様とお話ししても『好きなものも食べられないうえに、嫌いな運動をしてまで長生きしたくない!』『自分の人生は自分で決める!』などと言われる患者様もお見えになります。

これに関しましたは、患者様それぞれ人生観が異なりますから強要は出来ません。

しかし、医師としては患者様ご自身のご家族やご友人をはじめ元気に長生きしてもらいたいと思っている人たちが周囲におられる状況であるのなら、生活習慣の改善とかお薬の内服はきちんとしたほうが良いとお伝えするようにしています。

本地洋一さん:ありがとうございました。

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。

次回のハート相談所は2022年4月14日(木) 14:30からの放送になります。