『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第68弾~

2023年4月13日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 第68回目の放送です。

今回の放送のテーマは『血圧』です。

本地洋一さん: 最近はドラッグストアーなどでも比較的容易に自動血圧計が購入できるようになってきたこともあり、血圧は多くの人が気にするようになってきた指標ですよね!

吉田早苗さん: 病院を受診しても、まずは血圧を測って、そこから医師の診察が始まりますよね。

『血圧は健康のバロメーターです』

松尾仁司院長: 血圧とは、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力のことで、心臓から押し出される血液の量と、血管の太さ血管壁の弾力性によって左右されます。

言い換えると血圧とは脳や、内臓、筋肉、骨、皮膚などの全身の組織に、血液中の酸素や栄養を送り届けるための力と言えます。したがって、動物が生きていくうえで血圧は絶対に必要な指標なのですが、その値が高すぎる場合を高血圧、低すぎる場合を低血圧といい、どちらも長く健康的な生活を続けるうえで好ましくありません。

一般的には心穏やかに安静にしているときの上の血圧が常に140mmHgを超えているときに『高血圧症』という診断をします。

よく、“上の血圧”とか“下の血圧”という言い方を耳にしますが、上は心臓が収縮して血液 を送り出したときの「収縮期血圧(最高血圧)」のことで、下は心臓が拡張したときの「拡張期血圧(最低血圧)」のことです。

『高血圧症』を放置するということは、血管の壁に常に強い圧力がかかった状態が持続するということです。血管壁はその圧力に対して、次第に厚く硬く変化し、動脈硬化が進行しやすくなります。その結果、血管の弾力性が失われて、血管の内腔はますます狭くなり、さらに血圧が上昇するという悪循環に陥ることがあります。

この悪循環が長年続くと体の様々な臓器に恐ろしい合併症を起こしてくる可能性が知られているからです。

一方で、血圧が低すぎる場合は、組織に酸素や栄養を送ることが出来ないため、命に関わる場合もあります。

通常血圧は自律神経によって適切なレベルでキープできるようコントロールされています。

『キリンは高血圧です』

松尾仁司院長: 哺乳類の中で長い首が特徴のキリンは身長が5mほどで、心臓の位置は地上から3mほどのところにあります。つまり頭の位置は心臓よりも2mも上にあるということになり、心臓は2m上にある脳に血液を循環させるため高い血圧が必要となります。なんとキリンの血圧は260mmHgもあることが知られています。

しかしながら、キリンは首の天辺にある脳に充分な血液を送り込むために高い血圧が必要という自然の摂理からで、キリンが高血圧症に悩まされているわけではありません。

『高血圧症を放置しては危険です』

松尾仁司院長: 疫学調査では日本人の死因に最も強く影響を及ぼしているのは喫煙で、2番目が『高血圧』で、3番目が運動不足、4番目が高血糖あることが分かっています。

『高血圧症』とは安静にしている時でも全身の血管、特に動脈に常に高い圧力がかかった状態です。一口に動脈といいましても、大動脈のような太い動脈から脳、心臓、胃・腸・腎臓といった腹部の臓器、さらには目や手足の筋肉、骨など体中すべての臓器や器官に分布して酸素や栄養を届けています。

『高血圧症』を放置するということは、年余にわたり全身の動脈すべてに常に高い圧力がかかり、ストレスがかかった状態を放置するといっても過言ではありません。

つまり、『高血圧症』の放置により引き起こされる病気は全身に及ぶということなのです。

『高血圧症』の放置が引き起こす頻度の高い病気、頭でいうと脳梗塞、脳出血をあげることができます。特に脳出血は脳の血管が破れて血液があふれ出し、固まって「血腫」となって周囲を圧迫し、脳細胞を破壊してしまう恐ろしい病気で、血圧が高ければ高いほど脳出血の発生する頻度が高くなることが知られています。

今から50年以上前は高血圧と脳血管疾患の因果関係がわかっていませんでした。このため本邦では昭和30年~40年代後半は死因別にみた死亡率(人口10万体)脳血管疾患の死亡率が第1位でした。

これに対し、日本では高血圧治療の意義、血圧コントロールの重要性が広く啓蒙され、多くの人々が血圧コントロールの意義を理解し、意識するようになってきました。このため、昭和45 年をピークに減少しはじめ、昭和60 年には心疾患(高血圧性を除く)にかわって第3位となり、その後は死亡数・死亡率ともに減少と増加を繰り返しながら減少傾向が続き、平成30 年の全死亡者に占める割合は7.9%となっています(厚生労働省平成30年人口動態統計月報年計の状況より抜粋)。

本地洋一さん: なるほど、特に自覚症状がなくても血圧を適正にコントロールすることの重要性がよくわかりました。お薬をきちんと服用する以外に血圧を下げるために我々が日常生活で取り入れるべき方法があれば、教えてください。

『薬に頼らず血圧を下げる方法5選』

松尾仁司院長: 健康日本21というデータで上の血圧が4mmHg下がると脳卒中で亡くなる方が年に1万人、狭心症や心筋梗塞で亡くなる方は年に5000人へるということがわかっています。

ぜひ皆さんも以下の5選を取り入れてみてください。

方法1:減塩

減塩は確実に血圧を下げるというエビデンスが出ています。

減塩によって正常な血圧の方は2.4mmHg、高血圧の方は5.4mmHg血圧が下がるというデータがあります。

日本人が接種している食塩の量は平均12gと言われていますが、厚生労働省が推奨している食塩摂取量は1日6g以下です。しかしながら、実際6g以下の減塩食は味気なくてなかなか続きませんので、味付けに塩の代わりにコショウや唐辛子、酢を使ったり、だしを効かせるといった工夫をすると良いかもしれません。

方法2:減量

高血圧の予防には正常体重(BMI:18.5~24.5)の維持がとても大切です。

BMIが25以上ある方は、正常体重の方よりも高血圧になるリスクが1.5倍~2倍ほど高いことが分かっています。

一方で、体重を1kg減らすごとに、血圧がだいたい0.5mmHg~2mmHg下がると言われていますし、血圧が10mmHg低下すると脳卒中の発症リスクが27%、冠動脈疾患による死亡率が17%減少することが分かっています。

方法3:DASH食

DASH食とは『Dietary Approaches to Stop Hypertension』の略です。

アメリカ発祥の食べ物の考え方で、果物、野菜、ナッツ中心に飽和脂肪酸または総脂肪を減らした低脂肪食を食事の中に取り入れるというものです。

果物や野菜にはカリウムが多く含まれています。カリウムは身体の中で血圧を上げる大きな要因のナトリウムを体外に出してくれますので、結果的に血圧が下がります。

またナッツ類には血圧を下げる働きがあるマグネシウムが多く含まれています。

DASH食を取り入れることによって、収縮期血圧が8mmHg~14mmHg下がるというデータも出ています。

方法4:運動

定期的な有酸素運動を毎日30分、または週に150分行うことで収縮期血圧が4mmHg~9mmHg低下するというデータがあります。

しかしながら普段運動習慣がない方がいきなり、ジョギングを始めるのは長続きしませんので、まずは短時間の散歩などで敷居を低くして初めて見てはいかがでしょうか?

方法5:アルコールを減らす

飲酒の習慣がある方は、塩分の多いおつまみをとる場合が多いため、血圧にとってはさらに悪循環となります。

男性は1日2ドリンク以下、女性や体重の少ない方は1日1ドリンク以下にすることで血圧は2mmHg~4mmHg下がることが分かっています。

本地洋一さん:食事でも運動でもちょっとした工夫をして長続きさせることが重要ということですね!

私も、時々管理栄養士さんとお話しすることによって普段自分が食べている食事を評価していただいて、調味料を変えるなど色々なアドバイスをもらっています。

吉田早苗さん:これまでは高血圧のお話でしたが、私はむしろ血圧が低くて朝などはなかなか起きられなかったり、行動が始められなかったりするのですが血圧が低すぎるというのはどうなのでしょうか?

松尾院長: 赤ちゃんや小学生くらいの子供などの血圧を測ると収縮期血圧は大人に比べると低くて収縮期血圧は80mmHg~90mmHgの場合が多いです。これは子供の頃は血管も柔らかくて弾力があるため、血管に係る圧力を吸収するためです。したがって、この年代の子たちの収縮期血圧が80mmHgであっても組織に酸素や栄養が届かないなんてことはありません。加齢によって徐々に血管の男性が失われるのに伴って血圧は徐々に高くなります。

吉田早苗さん:私は子供ではありませんが、大丈夫でしょうか?

松尾院長: 大人になっても血管の弾性が失われていない方は、たとえ収縮期血圧が90mmHg程度であっても特に自覚症状がなければ問題ないと思います。

ただし、座った状態から立ち上がった時などに眩暈やふらつき、失神などがある方は起立性低血圧によって脳への血流が一過性に減少している可能性があります。

また、血圧をコントロールしている自律神経に障害をきたして血圧が低下する場合もありますし、不整脈や貧血がる場合でも同様の症状は起こることがあります。

血圧は自律神経の状態、心臓のポンプ機能や血管の弾性など様々な因子によって修飾されていますので、高血圧や低血圧など血圧の異常によって症状が出ている場合はこれら様々の因子のどこに問題があるかをしっかりと診断して適切な対処法考える必要があります。

吉田さんが、ご自分の血圧が低く、朝起きるのがつらい、活動性が悪いことなどでお悩みならこの症状に何か悪い病気が隠れていないかをホームドクターに相談して、検査すると良いかもしれません。

それで、問題が無いのであればむしろ運動習慣をつけるなど元気にどんどん動いていただいたほうが良いと思いますよ!

吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2023年4月27日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。