『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第72弾~

2023年6月9日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 第72回目の放送です。

本地洋一さん:6月に入り気温が30度を超える暑い日がみられるようになってきました。

そこで、

今回の放送は『夏場に注意をしたい心臓病』とういテーマで松尾院長にお話を聞いていきたいと思います。

 

 

松尾院長: 夏場には心臓病がクローズアップされることはあまりないかもしれません。

むしろ夏場は、脱水症や熱中症によって救急搬送されたというニュースをよく耳にするようになりますよね!

今日の放送のTake home messageは

『夏場は水分摂取が大変重要です』ということです!

人の体温は脳に組み込まれたサーモスタットの働きでほぼ37度に調節されていますが、何もしていないときでも、脳や心臓などの各臓器などから一定の熱が産生されています。特に運動を行った際には全身の筋肉が働くために熱の産生が高まります。

この際体はどのように体温の上がりすぎを調節しているかというと、汗をかくことにより体表面からの熱を放散です。つまり汗は自動車のエンジンを冷やすラジエーターの役割をしていると言えます。

成人の身体は、体重の約60%を水分が占めています。言い換えると体重100㎏の人は60kgは水分です。

普段私たちは身体から出ていく水分よりも体に取り込む水分の方ばかりに意識が向きがちですが、体の中の水分は尿や汗、さらに呼吸をする際の呼気としても体から排出されています。

実際毎日どれくらいの水分が人間の身体から出ていくかと言いますと、一般的な成人の場合、1日で出ていく水分は2.5Lと言われています(体重の8%)。本地さんや吉田さんはこの番組で4時間座ってお話をしていますが、その間に約200mlの水分が身体から失われています。

もちろん気温の高い夏の季節はより多くの水分が体内から喪失しています。

体内から1%水分不足になれば“のどの渇き”、2%喪失で“めまい、吐き気、食欲減退”が現れます。そして10-12%の喪失では“筋肉の痙攣や失神”、20%の喪失で生命の危機になり、死に至ってしまいます。

熱中症とは脱水によって発汗による体温の調節が働かなくなり、体温の上昇や眩暈、頭痛、痙攣、意識障害などを呈する病気です。

また、脱水症によって体内の水分が少なくなると血管内を流れる血液の粘稠度が上がりドロドロになり血栓が出来やすくなります。

暑さがピークを迎えるこれからの時期に注意したいのが、血管を詰まらせる夏血栓です。

血栓が生じることによって引き起こされる病態に、心筋梗塞、脳梗塞、下肢静脈血栓症を上げることが出来ます。心筋梗塞は心臓を栄養する冠動脈に血栓が生じる病態、脳梗塞は脳の血管が血栓で詰まる病態、そして深部静脈血栓症は下肢の静脈内に血栓が生じて、その血栓が肺へ移動し肺動脈を詰めてしまうと肺梗塞を起こします。これらはいずれも致命的な恐ろしい病気です。

本地洋一さん:つまり夏場は冬場に比べて汗を多く書くために脱水症になりやすく、脱水症は熱中症の原因となるだけでなく、血液をドロドロにして夏血栓が出来やすくなる。この夏血栓は心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な循環器疾患を起こす可能性があるということですね。

吉田早苗さん:じつは、この1か月で私の周りの80歳代の方が、立て続けに救急車で病院に搬送されました。そのうちの一人が私の母親でお風呂上りに突然左手が震えて、意識障害を起こしました。その際に頭のMRIや心臓の検査では異常はなく、脱水症といわれました。その際、診察していただいた医師からはお年寄りは喉の渇きを感じにくくなっているから注意が必要とのアドバイスを受けました。

松尾院長: 確かにお年寄りは口渇感を感じにくいと言われており、のどの渇きを感じてから水分を取っていては、追いつかない可能性があります。

対策としては、夏場などはコップ1杯程度の水を①朝起きたとき、②朝食時、③10時頃、④昼食時、⑤3時頃、⑥夕食時、⑦入浴後、⑧就寝前など1日に8回くらいのタイミングで接種する習慣をつけることが良いかもしれません。

ただし、水分をあまりとってはいけない病気の方もお見えになります。心不全や腎不全の持病をお持ちの方は、水分摂取に関しては主治医の先生と相談してください。

吉田早苗さん:スポーツドリンクでもいいですか?

松尾院長: 運動をしっかりされる方は、汗とともにミネラルも体外に排出されますので塩分やミネラルを含んだスポーツドリンクは良いと思います。ただし中には糖分も多く含まれたものもありますので、あまり運動をされない方は糖の過剰摂取になる可能性もあります。

本地洋一さん:さきほど、脳梗塞のお話が出ましたが、実際にはどのような症状が出るのでしょうか?

松尾院長: よく脳卒中と言われますが、脳卒中には脳内で出血が起こる脳出血と脳の血管に血栓が詰まる脳梗塞があります。さらに脳梗塞は脳の細い血管に動脈硬化が起こって詰まる「ラクナ梗塞」、脳の太い血管に血栓が出来て詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓の中にできて血栓が脳に飛んで詰まる「心原性脳梗塞」の3つのタイプに分けられ、「ラクナ梗塞」と「アテローム血栓性脳梗塞」は脱水で血液がドロドロになりやすい夏場が多いとされています。

症状としては、

 休に手足から力が抜ける

 片足を引きずっていると言われる

 ものにつまずきやすい

 言葉が出てこない、理解できない

 フラフラしてまっすぐに歩けない

 片方の手足がしびれる

 急に眩暈がするようになった

 片方の目にカーテンがかかったように、一時的に見えなくなる

 物が二重に見える

などがあります。

脳梗塞も、心筋梗塞同様一刻も早い診断と治療がその後の予後に大きく影響する病気なので、疑われる場合は直ちに救急車で病院を受診することをお勧めします。

合言葉はFASTです。

F:顔のゆがみ(Face)

A:腕の麻痺(Arm)

S:言葉の障害(Speech)

T:一刻も早く119番(Time)

吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2023年6月22日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。