『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第73弾~

2023年6月22日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 第73回目の放送です。

本地洋一さん:今回の放送は『あしの病気』とういテーマで松尾院長にお話を聞いていきたいと思います。

吉田早苗さん:あしの病気ですか?心臓とはずいぶん離れているように思えるのですが、あしの病気と心臓病は何か関係があるということでしょうか?

本地洋一さん:ところが、あしと心臓には密接な関係があるということらしいですよ!岐阜ハートセンターは心臓の病院というイメージがあるのですが、あしの外来という特殊外来があるそうですね!

そこでは、どのような診察や治療が行われているのでしょうか?

 

 

松尾院長: 実は、あしの症状でお困りの方は結構な頻度でお見えになります。

実際当院のあしの外来を受診された方の症状は、あしが痛い、あしのむくみ、あしがむずむずする、あしのむくみなど多岐にわたります。

昨年1年間で当院のあしの外来を受診した95名の患者様の内訳は、静脈の流れが悪くなってあしのむくみや症状がでるという機能性静脈不全の方が約36%で、あしの動脈の狭窄や閉塞する末梢動脈疾患(PAD)の方が22%、その他にはあしの表面の静脈が拡張してぼこぼこに膨らむ下肢静脈瘤が19%という結果でした。

本地洋一さん:これらのあしの病気の中に心臓の病気が隠れているということなのでしょうか?

『あしの疾患と心疾患には密接な関係があります!!!』

松尾院長: 先ほど吉田さんが、あしと心臓は、離れた部位にあるにもかかわらず、あしの病気と心臓病に何か因果関係があるのでしょうか?と言われましたが、実は密接な関係があります。

たとえば、末梢動脈疾患の危険因子は、喫煙・糖尿病・高血圧・高脂血症ですが、これらは、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心臓病の危険因子でもあります。また末梢動脈疾患も冠動脈疾患もいずれも血管内皮機能に障害を起こすことが動脈硬化の原因であることが知られています。

本地洋一さん: つまり、あしと心臓は離れた場所にあるけれども、末梢動脈疾患も冠動脈疾患も病気の背景は極めて似ているということですね!

松尾院長: 歩行の途中で足のだるさや痛み、しびれなどの間欠性跛行の症状で岐阜ハートセンターのあしの外来を受診し、末梢動脈に動脈硬化による狭窄や閉塞が見つかった方は、心臓を栄養する冠動脈にも動脈硬化がある方がかなりの頻度でお見えになります。

本地洋一さん: 一般の方は、あしの症状があるとまさか心臓にも病気があるとは考えないですよね!

吉田早苗さん: 整形外科を受診する方も多いのではないでしょうか?

松尾院長: おっしゃる通りで、あしの症状は多岐にわたりますし、またあしの病気には様々な病気が隠れている可能性がありますから、一般の方がご自分の症状だけでその判断をすることは出来ません。整形外科の先生から岐阜ハートセンターに下肢動脈硬化症の疑いで紹介される患者様もよくあります。

岐阜ハートセンターのあしの外来はその交通整理の役割も果たしていると言えます。

『岐阜ハートセンターのフットケアチーム』

本地洋一さん: 岐阜ハートセンターでは様々な職種の専門家がチームで様々な循環器疾患の治療を行っているとお聞きしたのですが、その点をもう少しお教えください。

松尾院長: 岐阜ハートセンターにはあしの病気に対し、外科医、内科医、形成外科医、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、ソーシャルワーカーなどで構成されたフットケアチームが協力して治療にあたっています。

あしの壊疽が起こるような重症なあしの病気である重症下肢虚血の患者様には、カテーテル治療や足のバイパス手術といった侵襲的な結構再建術のみでなく、形成外科医や看護師による創傷処置、下肢の運動療法や適切な靴や装具の使用、内服調整や服薬指導、栄養指導を含めた生活指導などをそれぞれの専門家が意見を出し合い患者様にとって最良のアウトカムを得られるような体制をとっています。

本地洋一さん: 重症下肢虚血などは、末梢動脈疾患の最重症な病気だと思いますが、その他にも足の症状を呈する様々な病気、例えば最も頻度が高いと言われる機能的静脈不全に対してはどのような治療が行われているのでしょうか?

松尾院長: 機能的静脈不全の患者様は、末梢の血液が心臓に戻りにくいため、あしがむくんだり、あしの色が悪くなるいわゆるうっ血による症状で来院されます。この病気は、比較的高齢で普段あまり歩かない方に比較的高頻度におこります。

うっ血が軽度であれば、弾性ストッキングによってむくんだ足を圧迫することに改善することが多いですし、患者様が歩ける状態の方であれば、歩行習慣をつけることによりうっ血の改善が期待できます。

一方であしの静脈に血栓という血の塊が出来ても下肢のうっ血によるむくみは起こります。

この場合は、お薬によって血栓を溶かす治療を行いますが、血栓量が多い場合、血栓が肺の血管に移動してしまうと肺塞栓と言って突然死の原因になるような非常に危険な状態に陥る場合があります。その場合は下大静脈フィルターといって下肢の静脈から移動する大きな血栓が、肺へ行かないように止めるフィルターを一時的に留置する治療を行うこともあります。

吉田早苗さん: 先ほど弾性ストッキングのお話が出ましたが、私も長時間座った仕事をしているせいかよく足がむくみます。市販の弾性ストッキングも沢山ありますが、これらをはいたほうが静脈血栓や、機能的静脈不全の予防につながるのでしょうか?

松尾院長: 弾性ストッキングをはくことにより、静脈血栓を予防することが可能です。

たとえば、病院で手術をした場合、術後はベッドで安静に寝ている時間が長くなるため、まれに足の静脈に血栓が出来てそれが肺塞栓を起こすことがまれにあります。近年ではこの術後安静による肺塞栓を予防するために、多くの病院では弾性ストッキングを術後患者様に履いていただくことを推奨しています。

本地洋一さん: 一口にあしの病気と言っても様々なものがあり、それらの中には命を脅かす恐ろしい循環器疾患が隠れている可能性があるため、きちんとした診断と適切な治療が必要だということですね!

 

吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2023年7月6日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。