『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第75弾~

2023年7月27日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 第75回目の放送です。

今回は本地洋一さんがお休みのため、ピンチヒッターとして小松 肇さんが吉田早苗さんとともにパーソナリティーを務めます。

小松 肇さん: 松尾先生はじめまして本日はよろしくお願いいたします。

さっそくですが、今回の放送のテーマは『心臓と腎臓の深い関わり』と伺っております。

吉田早苗さん: 心臓と腎臓って響きが似ていますね!今までは、心臓についてのお話が多かったのですが、腎臓ってそもそもどのような臓器なのでしょうか?

 

 

松尾院長: お二人は腎臓が体の中にいくつあるかご存じですか?

小松 肇さん・吉田早苗さん: 2つですよね!

松尾院長: そのとおりです。それでは、腎臓が身体のどこにあってどのような働きについてはいかがでしょうか?

小松 肇さん・吉田早苗さん: ・・・おしっこをつくることですか?

松尾院長: そのとおりです。この臓器の主な働きは血液から尿を作ることです。

それでは、まずはじめに、腎臓とその働きについてお話ししますね!

腎臓は腰よりやや上の背中側に左右1つずつあります。形は一見するとそら豆のようで、握りこぶしほどの大きさで、1つが150g程度の重さの臓器です。

つまり、2つで300gですから体重60kgの方だと腎臓は体重の200分の1程度の重さの臓器だと言えます。この小さな臓器に心臓が全身に送り出す血液の20%の血液が流れ込みます。

そして多くの血液を受け取った腎臓は、人が生きていく上に大変重要な役割を果たしています。

『腎臓の働き』

・体内の余分な水分を排泄する

人は生きていく上に必要なエネルギーやビタミンなどの物質を主に腸から吸収しています。この時これらの物質は水に溶けた状態でなければ吸収できないので、毎日腸から多くの水分を吸収する必要があります。こうして吸収した水分は、一部は汗や呼気中の水蒸気や便の水分として排泄されますが、それでも毎日1L~1.5Lの水分は余ります。腎臓はこの余剰水分を尿として体外に排泄する役目を果たしています。

腎臓の働きが正常であれば、水分を過剰摂取しても体内の水分量を調節してくれるのですが、腎臓の働きが悪化すると体に水分が溜まってしまい、むくみや息切れが現れたりします。

・老廃物を排泄する

腎臓の働きが悪化すると、体から老廃物がたまってしまうため、尿毒症といって重篤な症状を起こす場合があります。

・ミネラルやpH(酸性度)のバランスを整える

体内のミネラルの濃度は、濃くても薄くてもよくありません。また、身体のpH(酸性度)も、賛成に傾いてもアルカリ性に傾いても様々な不具合を生じてしまいます。これらのバランスを調整している臓器が腎臓です。

・造血ホルモンをつくる

血液中の赤血球は脳や内臓、筋肉、骨、皮膚といった臓器に酸素を運び、二酸化炭素を運び出す働きをしており、骨髄で作られています。骨髄で赤血球を作るために造血の指令を伝えるエリスロポエチンというホルモンは腎臓で産生・分泌されています。赤血球数が減少する貧血という状態になると腎臓がそれを感知してエリスロポエチンの量を調節しているのです。

・ビタミンDを、その効果が発揮される状態に活性化する

・血圧を調節するホルモンを作る

血圧の調節に関係のあるホルモンは沢山ありますが、そのうち腎臓が分泌を調節しているのがレニンというホルモンです。レニンには、ほかのホルモンと協力して全身の血圧を調節する働きがあります。

吉田早苗さん: びっくりですね! 2つ併せて300gの臓器がそんなに多くの仕事をしているとはしりませんでした。

その腎臓の働きが心臓とも密接につながっているとはどういうことでしょうか?

『腎臓と心臓の深い関わり』

今お話ししたように、腎臓は人が生命活動をしていくにあたり大変重要な働きをしているため、その機能が低下すると様々な不具合が生じてきます。

たとえば、身体に水分が溜まってしまい浮腫みや呼吸困難がおこったり、血圧が異常に高くなってしまったり、貧血になってしまったりすると、心臓に過度な負担がかかります。

逆に心臓の機能が低下して全身に充分な血液を送り出すことが出来なくなると、常にたくさんの血液を必要としている腎臓の働きも悪くなります。

岐阜ハートセンターは循環器疾患の専門病院なので多くの心臓病の患者様を診ていますが、心機能が低下すると腎臓の働きも悪くなりますし、腎臓の病気が原因で心臓や血管に過度な負担がかかり循環器の症状呈する患者様も多くお見えになります。

したがって、我々は心臓の治療と並行して腎臓の治療も行っているのです。

小松 肇さん: 我々一般人にとっては、腎臓は心臓に比べてわき役と言いますか、心臓程重要な臓器という感覚はないのではないかと思うのですが、実は大変重要な臓器なのですね!

松尾院長: おっしゃる通りです。腎不全の患者様が心臓病になる確率は、腎臓が正常何とに比べて男性で3倍、女性で4倍と言われています。つまり、心臓と腎臓はどちらか一方が悪くなるともう一方も悪くなってしまうことが多いため、腎臓と心臓には大変深いかかわりがあると言えます。

『腎臓病と心臓病の予防は動脈硬化の危険因子コントロールです』

吉田早苗さん: 腎臓と心臓が密接に関係していることはよくわかりました。それでは、心臓と腎臓をどちらも悪くならないようにするために我々はどのようにすれば良いのでしょうか?

松尾院長: 心臓の心筋細胞や脳細胞は一度障害を受けて壊死すると再生しないということは多くの方がご存じだと思いますが、腎臓の細胞も同じで再生することはありません。

つまり、腎臓病は心臓病同様に予防することが大変重要となります。

今までの放送で、心臓病の予防、あるいは再発の防止には糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、肥満、喫煙などの動脈硬化の危険因子をコントロールが大変重要ですと繰り返しお伝えしてきました。

常に多くの血液が流れ込む腎臓という臓器にも大小非常に沢山の血管があるため、腎臓病の予防は動脈硬化の予防なのです。

『尿管結石に関する質問』

吉田早苗さん: リスナーさんからの質問です。

“今まで尿管結石を2回経験しており、腎臓の中に小さな石があると言われています。主治医からは経過観察と言われて10年ほど経過していますが、このまま様子を見ていて良いのでしょうか?”

松尾院長: 結石も出来る部位や大きさによって様々で、中には手術や破砕術を行う場合もありますが、特に腎臓や尿管にダメージを与えなることなく、症状がない場合は経過観察していることも多くあります。

吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2023年8月10日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。