『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第82弾~

2023年11月2日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 第82回目の放送です。

今回の放送のテーマは『不整脈①』です。

本地洋一さん: 今回と次回のこのコーナーは『不整脈』について松尾院長からお話をお聞きいたします。

『不整脈』と一口に言っても色々な不整脈があると思いますが、本日はどのようなお話をしていただけるのでしょうか?

 

松尾仁司院長:前回の放送では、『脈拍』のお話をいたしました。

心臓という臓器は人がお母さんのお腹の中にいるときから、お亡くなりになるまでのあいだ、1分間に約60回、1時間に約3,600回、ということは1日約10万回 24時間、365日、一生の間ずーっと休むことなく規則正しく拍動をつづけています。

安静時の脈拍数は一般的な成人で1分間に60~80回程度の方が多いといわれています。

また、心臓という臓器は身体が必要とする血液の量に応じて脈を増やしたり減らしたりすることが出来る大変賢い臓器です。

階段を上がったり、走ったりする際は、全身の筋肉に多くの酸素や栄養が必要となります。そういった際、心臓が正常に機能している場合であれば、心臓は脈拍数を120回~180回と増やしたり、血圧を上げたりして筋肉に多くの血液を循環させます。逆に寝ているときとか、動かずじっと座っている時には筋肉や脳、内臓といった身体の各器官は運動しているときに比べさほど栄養や酸素を必要としません。したがって、安静時は運動時に比べ脈拍数が少なくなります。

『動悸や脈の乱れ』を主訴に岐阜ハートセンターを受診される患者様は少なくありません。これらの患者様の症状の原因が『不整脈』である場合があります。


不整脈の種類

『不整脈』には、安静時の脈拍数が1分間に100回を超える「頻脈」、50回を下回る「徐脈」、脈が飛ぶ「期外収縮」、心筋がでたらめに動く「細動」などがあります。

本日は『徐脈』についてお話ししたいと思います。

先ほど、一般的な成人の安静時脈拍数は60~80回で、これが50回を下回る場合を『徐脈』と呼ぶと言いました。

しかしながら徐脈の方すべてが病気というわけではありません。

脳、心臓、肺、胃、腸、腎臓などの臓器や皮膚、骨、筋肉など体の各臓器は安静時にも常に血液によって運ばれてくる酸素や栄養を必要としています。

また、運動時には安静時に比べ全身の筋肉がより多くの酸素や栄養が必要となりますので、心拍数や血圧を上げることにより全身により多くの血液を起こり出しています。

マラソン選手や競輪選手などで1回拍出量が多い方の場合は、安静時脈拍数が30~40回/分でも全身が必要とする血液が十分に供給できています。

つまり、脈拍が50回/分を下回る方でも、全身の臓器が必要とする血液が十分に供給されていて、運動時にも特に自覚症状がない場合は病的な『徐脈』ではないため、特に治療を必要としません。

本地洋一さん: 治療が必要な『徐脈』についてもう少し教えてください。

松尾仁司院長: 脈拍数が少ないことにより全身が必要とする血液が供給できない『徐脈』や、たとえ安静時には症状が無くても運動をした際などに筋肉を始めとした臓器がより多くの酸素や栄養を必要とした場合でも脈拍が増えずに、眩暈や失神などの症状を呈する場合は病的な『徐脈』と考えられますので、脈拍数を増やすための治療を必要とします。

代表的な徐脈性不整脈を呈する病気としては、洞不戦症候群や房室ブロックがあります。

・洞不全症候群

洞結節が電気刺激をうまく発生できなくなると洞徐脈、更には洞不全症候群となります。

洞結節からの刺激がないため、心房収縮や心房興奮が生じず、心室収縮も消失するために心停止が起こります。心停止の時間が長いと脳に血液が送られず、めまいや失神などの症状が出現し、時に転倒して大きな外傷を負う場合があります。ペースメーカー治療の適応となります。

・房室ブロック

洞結節興奮が生じて、心房収縮があっても房室結節が上手く働かないと房室ブロックとなり、『徐脈』となります。また房室ブロックの中でもHis束、さらに下流の左右の脚枝に広範な障害がある場合は高度徐脈となることがあります。この時、緊急回避的に心室を収縮させるために、正常刺激伝導系とは異なる心室から補充調律と呼ばれる心室刺激が生じます。この補充調律は一般に心拍数が遅いために、この状態が長時間続くと色々な弊害が出現してきるため、やはりペースメーカー治療の適応となります。この補充調律がない場合は突然死することもあります。

吉田早苗さん: 心臓ペースメーカーって機械を手術で体に埋め込むんですよね!

松尾仁司院長: 「心臓ペースメーカー」とはその名の通りペース・つまり心拍を作る医療機器です。この場合のペースとは心臓の脈のことです。つまり重度の脈の乱れがある患者様に対し、心臓の脈を人工的に作るために植込む機械を「心臓ペースメーカー」といいます。ペースメーカー本体は500円玉より一回り大きなサイズで、厚さは500円玉3枚程度で、この中に電気回路や電池が組み込まれています。ほとんどの方は左胸の皮膚に3センチほどの皮下ポケットを作成して植込みます。心臓を刺激するリード(電線と電極)は静脈を通して心臓内に留置します。

特に最近のペースメーカーは技術の進歩でより小型化されており、植え込み手術も局所麻酔でおこなうため手術時間も1時間程度で終わります。また傷口も小さく目立たなくなってきています。

 

本地洋一さん: 心臓に直接電気刺激を加えて脈が遅くなった際にそれを補完する機械ということですね!

最近のペースメーカーは運動時にも脈を増やすことも可能だと聞いたことがあるのですがいかがでしょうか?

松尾仁司院長: 大変良い質問ですね!実は、「心臓ペースメーカー」には加速度センサーが組み込まれているため、階段を上ったり走ったりすることを感知して必要に応じて脈を速く打ってくれる機能を持っています。また、最近のペースメーカーはMRI(核磁気共鳴画像法)の強い磁力や電波を受ける検査も検査条件をクリアすれば受けることが可能となっています。

吉田早苗さん: 心臓ペースメーカーは一度植込むと死ぬまで植込んだままですか?

松尾仁司院長: 稀に感染などで取り出すこともありますが、基本的には一生ものです。ただ、先ほども申しましたように、心臓ペースメーカーを植込むことにより日常生活に支障をきたすことはほとんどありませんので心配には及びません。

本地洋一さん: 本日は、不整脈①として、徐脈性不整脈についてお話しいただきましたが、この放送効いているリスナーさんは、ご自分が病的な徐脈かそうでないかをご自身で知ることが可能なのでしょうか?

松尾仁司院長: 特に自覚症状がない場合方はご自分の脈拍をあまり気にすることはないと思います。

ハートセンターを受診される不整脈の患者様の場合、どのようなきっかけで受診されるかと言いますと、ひとつは自覚症状です。

たとえば“最近ちょっと動いただけで息切れがする”、“目の前が真っ白になる”、“一時的に意識が遠のく”といった症状で来院されて心電図で不整脈が分かる場合が多くあります。

また、健康診断の際に心電図で不整脈を指摘されることもあります。

吉田早苗さん: 私も健康診断で『徐脈』を指摘されましたが、特に自覚症状がなかったですし、そもそも『徐脈』といる単語も知らなかったので少し不安を感じました。

松尾仁司院長: 吉田さんの場合は、スポーツジムに通っておられるとのことですし、日常生活においても特に自覚症状もないとのことですので、病的な『徐脈』ではないと思いますよ。

ただ、中には受診した際に心電図を一度とっただけでは診断できず、特定の時間帯やある因子がきっかけで突然徐脈発作を起こす場合もあります。このような患者様の場合は長時間心電図を記録するホルター心電図検査で診断がつく場合があります。

本地洋一さん: 一口に脈が遅いといってもそれが病的な『徐脈』かそうでないのかはなかなかご自身で判断することは出来ないので、心配の方は専門医に診てもらうことが大切だということですね!

吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2023年11月9日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。