『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第58弾~
2022年11月10日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第58回目の放送です。
本地洋一さん: 11月に入り、朝晩は冷え込む日が増えてまいりました。
そんな中、今回の放送のテーマは『寒さと心臓病』についてです。
先ほど、電話での打合せの際に松尾院長は寒くなってくるとハートセンターは忙しいんですよ!とおっしゃっていましたが、これは気温が下がる冬になると循環器疾患の患者様が増えてくるということなのでしょうか?
『冬は循環器疾患が増える季節です』
松尾院長: 心臓病を発症する患者様の数は季節に依存するということは明らかだと思います。
救急車で搬送される患者様の数も11月ころから多くなりますし、また重症患者様の数も増えてきた印象があります。
疫学的には、病気の発症には日内変動、週内変動、季節変動があると言われています。
心筋梗塞を例に挙げますと、夏場よりも冬場に多く発症することは疫学的には証明されていますし、一日のうちでは血管が攣縮を起こしやすい早朝に多く発症することが知られています。また週内では週末よりも月曜日に多く発症するという統計学的データもあります。
具体的には、以前にこの放送でお話ししたことのある急性心筋梗塞や急性大動脈解離などの命に関わるようなおそろしい循環器疾患の発生率は冬場が最も高いという疫学的調査結果がでています。
また、脳出血や心原性の脳梗塞も冬場に多いということも知られています。
本地洋一さん: 冬場は日によっては気温が氷点下になることもありますが、冬に循環器疾患の発生率が高くなるというのはこのような気温の低下が原因と考えられているのでしょうか?
『冬場はヒートショックの危険性が高い季節です』
松尾院長: 気温の低下もそうですが、それよりも恐ろしいのは気温の急激な変化です。冬場は家の外は氷点下の気温でも家の中に入ると暖房のおかげで20度以上あることが多いですし、家の中でもリビングとお風呂の脱衣所やトイレでは気温差が大きくなりがちです。
急激な温度の変化で体がダメージをうけることを『ヒートショック』といいます。
日本では年間約1万4000人の方が入浴中に亡くなると言われています。
その原因の多くは『ヒートショック』である可能性があります。
冬場の入浴では、暖かい居間から寒い風呂場へ移動するため、熱を奪われまいとして血管が縮み、血圧が上がります。
お湯につかると血管が広がって急に血圧が下がり、血圧が何回も変動することになります。
寒いトイレでも似たようなことが起こりえます。
血圧の変動は心臓に負担をかけ、心筋梗塞や脳卒中につながりかねません。
本地洋一さん: ということは、冬場に脳卒中や心筋梗塞、大動脈解離などの恐ろしい病気にかからないように注意すべきことが、いくつかあるということですね!
どんなことに気を付ければよいのでしょうか?
『冬場の入浴とトイレではヒートショックに注意が必要です』
松尾院長: 若くて動脈硬化もなく、健康な方は少々の血圧の変動で脳卒中や大動脈解離、心筋梗塞を起こすことはまずありませんが、高齢で様々な生活習慣病をお持ちの方は血管そのものが既にダメージを受けていることが多くあります。そこに急激な温度差によるは『ヒートショック』が加わると心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患を発症するリスクが若くて健康な方と比較して高いことが分かっています。
冬場の入浴やトイレの際には、
1. 脱衣所やトイレを小型の暖房機で温める
2. ふろ場の床にスノコやマットを敷いておく
3. 浴室に入る前にシャワーのお湯で浴室全体を温めておく
4. すでに浴槽にお湯がたまっている場合は、入浴前にふたを開けておく
5. トイレは暖房前座を設置する
など『ヒートショック』にならない工夫をすることをお勧めします。
吉田早苗さん:私は42度くらいの熱いお湯につかるのが好きです。また、サウナでも汗をかいた後に冷水に飛び込んだりしますよね。これらもあまりよくないことなのでしょうか?
松尾院長:入浴は40度未満のぬるめのお湯がおすすめです。また循環器医の立場からは、長湯はお勧めできません。入浴する時間帯は深夜よりは早めの時間帯を心掛け、心臓病や高血圧症の人は全身浴よりも半身浴をお勧めしています。
サウナと冷水浴を交互に行うことに関してですが、この入浴法は血管を拡げたり縮めたりを交互に繰り替えることによって新陳代謝を活発にするということが狙いだと思います。これに関しても血管が痛んでる方にとってはあまりお勧めできません。
吉田早苗さん:本地さんは、サウナは危ないんじゃないですか?
本地洋一さん:私は、サウナには入らないようにしていますし、熱いお湯に長く浸からないように注意していますよ!
それだけではなく、高齢者や高血圧症、糖尿病や肥満などの生活習慣病や心臓病の方は、冬場は特に急激な温度差に身をさらさないよう生活環境を整える必要があるということですね!
『冬場の運動では急激な温度差に注意が必要です』
松尾院長:今まで、このコーナーでは循環器疾患にかからないため、悪化させないために生活習慣病をコントロールしましょう!その一つに運動を習慣にしましょうと言い続けてきました。
夏場に関しては、炎天下を避けて早朝とか、夜間にお散歩などの運動を行うことを推奨しますが、冬場の屋外での運動に関しては、気温が低い早朝や夜間は注意が必要です。
特に暖かい室内から、寒い外に出る際に運動をすると汗をかくからと言って、薄着でいきなり外へ出ると急激な温度差によって自律神経が刺激されて血圧が急激に変動し、その身体的ストレスが心臓や血管に過度の負荷をかけます。さらに屋内に比べてはるかに気温の低い屋外では心臓を栄養する冠動脈に過度に収縮をきたしやすくなります(冠攣縮性狭心症)。
本地洋一さん:リスナーの皆様の中でも、ご高齢の方、心臓病や脳卒中の既往のある方はもちろん、生活習慣病をお持ちの方は今のお話が『ヒートショック』の予防につながると思います。
そういった病気をお持ちの方のご家族も協力してお家の中の環境を整えたりするとより効果が上がりますよね!
吉田早苗さん:やせ我慢しないことも大切ですよ、本地さん。
また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。