『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第36弾~

2021年12月2日午後3時10分、『本地洋一のハート相談所』第36回目の放送です。

本地洋一さん:以前に冬場は夏場に比べて循環器の病気にかかる人が多くなるとお聞きしました。これから本格的に寒くなってくると、胸の症状を訴える方が増えてくるということだと思うのですが、患者さんが感じる様々な自覚症状の中で、特に気を付けなければならない危険な症状、危険な痛みについて教えてください。

松尾院長:岐阜ハートセンターのような循環器専門病院は胸の症状を訴える患者様が多くお見えになります。特に冬場は室内と屋外の温度差が大きいため、血圧の変動が大きく、また血管が痙攣をおこしやすいということもあり、夏場に比べて受診される患者様が多くなります。

なかでも、循環器領域で一刻を争う処置が必要となる病気に急性心筋梗塞と解離性大動脈瘤という病気があります。いずれもの病気も今まで経験したことのないような激烈な胸の痛みを特徴としていますが、その起こり方の種類は異なります。

急性心筋梗塞の痛みはグーッと締め付けられる前胸部の痛みが持続して、冷汗を伴い、30分から1時間経過しても改善しないのが特徴です。

急性心筋梗塞は、一刻も早い治療が必要となります。これが遅れると救命できない場合や後遺症として重症の心不全が残ることがあります。

したがって、冷や汗を伴い、締め付けられる胸の痛みが20分以上続く場合は急性心筋梗塞を強く疑う症状ですので、直ちに救急車を呼んでください。

解離性大動脈瘤という病気もかなり特徴的な痛みが起こります。

この病気は大動脈内膜に生じた小さな亀裂から血液が血管壁内(中膜)に流入し、外層と内層に壁が解離を起こす。つまり、大動脈の中膜に裂け目が出来てそこから末梢に向けてメリメリと血管が裂けてしまう病気です。

症状としては経験したことがないほどの非常に強い胸痛、背部痛から腰痛で、血管の裂け目が末梢に向かって進んでいくにつれて、痛む場所が胸から背中、お腹に向かって移動していくのが特徴的です。

この病気も極めて緊急的な治療が必要となりますので、このような症状がある場合は救急車で循環器の専門病院に行ってください。

本地洋一さん:救急車を呼ぶというのはなかなかハードルが高いですね。我々の年代なんかですと、痛いけど我慢できるなら朝まで我慢してしまうと思うのですが・・・

松尾院長:日本人は、ご近所の目をずいぶん気にされる方が多くて、救急車が来るとご近所に迷惑がかかると思ってしまう方が少なからずお見えになります。

しかしながら、急性心筋梗塞も解離性大動脈瘤も一刻を争う病気で、いずれの病気も出来るだけ早く専門医の診察を受ける必要があります。

繰り返しになりますが、今まで経験したことがないほどの強い痛み、冷や汗を伴い長時間持続する痛み、時間とともに胸から背中、腰へと移動するような痛みは要注意ですので直ちに救急車を呼んでください。

一口に胸の痛みと言っても、“ズキンとする”、“グーッと締め付けられる”、“胸がモヤモヤする”、“なんとなく変な感じがする”など患者様によってその表現の仕方は様々です。

極めて緊急性が高い症状がある反面、我々医師がさほど重症ではないと考える症状もあります。

たとえば、症状の持続時間が極めて短い“ズキンとした痛み”、あるいは痛みの部位が1本の指で指せるような極めて痛む範囲が狭く限局している場合や、押さえると痛いという場合は心臓をはじめとした内臓由来の痛みというよりも、筋骨格系の痛み可能性が高いと思います。

本地洋一さん:ほかにも気を付けておくべきことがあればお教えください。

松尾院長:今までもこのコーナーで何度もお話ししてきましたが、高齢、肥満、喫煙、糖尿病、高血圧症、高コレステロール血症などの循環器疾患にかかりやすいリスクをお持ちの方は胸の症状を感じられたら病院で一度相談していただくことをお勧めいたします。

特に既に狭心症の診断がついていてニトログリセリンなどのお薬が処方されている患者様などは、胸の症状がニトログリセリンを舌下しても改善しない場合は心筋梗塞に移行している可能性があります。このような場合は、救急車で一刻も早く循環器専門の病院を受診してください。

本地洋一さん:わかりました。つまり、普段経験したことのないような異常な痛みを感じた場合は素早い行動が必要ということですね!

吉田早苗さん:特にこれからの寒い時期は注意が必要ということですね!

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。

次回のハート相談所は2021年12月23日(木)14:30からの放送になります。