皆様、ぎふチャンのラジオ番組で『きょうもラジオは!? 2時6時 』ってご存じでしょうか?

12月10日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第12回目の放送です。

心臓や血管の病気は急激に症状が悪化したり、重症化したりするケースが少なくありません。「どんな治療法があるのか?」、「急に悪化した場合どうすれば良いのか?」

「予防策として、普段の生活でできることは何か?」など、岐阜ハートセンターの松尾仁司院長とパーソナリティの本地洋一さん、吉田早苗さんが対談の中で、地域の皆様の命を守るのに役立つ情報を発信していきます。

今回も3密と飛沫対策されたスタジオからの放送でした。

今回のテーマは高血圧症に引き続き『高血圧症が引き起こす血管の病気』のなかで、特に症状が激烈で、恐ろしい『急性の大動脈解離』についてです。

が、その前にリスナーさんからの質問のお手紙紹介からコーナーが始まりました。

鈴木早苗さん:匿名さんからのお便りです。この方のご主人は長年乾癬で苦しい思いをしておられたそうですが、今度は不整脈になって今年の8月にペースメーカーの植え込み手術をされたそうです。そのあと乾癬が少しづつ良くなってきたそうです。そこで松尾先生に質問ですが、『不整脈とペースメーカーの関係と、乾癬は何かの感染があるのでしょうか?』

松尾仁司院長:たいへん難しいご質問どうもありがとうございました。乾癬というのは皮膚の角質部分が過剰に増殖する病気です。免疫学的な異常が関与していると考えられていて、この免疫異常に加えてストレスとか喫煙などの様々な外的因子が重なってこの病気が起こってくる、あるいは悪化すると言われています。今回のご質問はペースメーカー植え込み術をしてから症状が良くなってきているとのことですが、調べてみてもペースメーカー植え込みと乾癬の因果関係を示す文献や論文を見つけることはできませんでした。おそらく、医学的に因果関係を証明できるようなデーターはないと思います。ただ、少し考えられるのは、ペースメーカーは金属でできていて、これを体内に植え込むと患者さんの免疫機能に影響、つまり免疫機能を修飾する可能性はあるかもしれません。あくまでも推察ですが、これがご主人の乾癬の病態に影響を与えたかもしれませんし、不整脈が改善されて精神的ストレスが軽減した、禁煙をしたなどの外的因子の変化が、乾癬の病態の変化に関与している可能性もあります。

いずれにせよ、ご主人や奥様、そして主治医の先生の努力があって、乾癬が良くなってきているのではないでしょうか?

本地洋一さん:そろそろ本題に入りましょうか?松尾先生、本日のデーマである『急性大動脈解離』についてわかり安く教えてください。まずこの『急性大動脈解離』はどんな病気で、どのような症状なのでしょうか?

松尾仁司院長:大動脈というのは3層構造になっていて、いちばん外側を外膜、真ん中を中膜、いちばん内側を内膜と言います。

『急性大動脈解離』とは、大動脈内膜に生じた小さな亀裂から血液が血管壁内(中膜)に流入し、外層と内層に壁が解離を起こす。つまり、大動脈の中膜に裂けめが出来てそこから末梢に向けてメリメリと血管が裂けてしまう病気です
(https://gifu-heart-center.jp/aortic_disease_treatment/#2)。

非常に緊急を要する病気で、症状としては強い背部痛から腰痛で、大動脈が上から下、つまり、胸から背中、お腹に向かって裂けていくにつれて、大動脈に沿って痛みが抹消に向かって移動していきます。

『急性大動脈解離』は非常に致命的な病気で、発症から2日以内に50%以上の方がお亡くなりになると言われているため、一刻も早く病院を受診する必要がある疾患です。

本地洋一さん:大動脈が裂けてしまうと体の中で出血が起こるのでしょうか?

松尾仁司院長:さきほど、中膜に裂け目ができると言いましたが、血流が本来の血管内ではなく、裂け目から末梢に向けて入り込んでしまいます。中膜というのは非常に薄いので高い血圧で力がかかると、血管が破れて血液が体内にあふれ出すことがあります。これが急性の大動脈破裂といい、さらに救命が困難な状態に陥ってしまいます。

また、裂け目がどんどん末梢に広がると本来血液が流れる血管の内腔である『真腔』が解離によってできた『偽腔』の拡大によって圧排されてしまいますので、『真腔』を流れる血流が悪くなり、腹部の臓器や下肢、時には脳が血行障害による虚血に陥ることもあります。

本地洋一さん:『急性大動脈解離』の治療はやはり、外科手術が一般的ですか?

松尾仁司院長:『急性大動脈解離』は解離した部位によりStanford A型と Stanford B型に分類されます。大動脈の根元から脳への血管が分岐するまでの「上行大動脈」に解離が及んでいるものがA型、及んでいないものがB型となります。上行大動脈は破裂しやすくまた、心臓周囲の出血や心筋梗塞の危険性がありますので、基本的にA型は緊急手術の対象となります。手術は大動脈瘤と同様に人工血管置換術を行います。救命のための手術であり、解離した大動脈全部を取り替えるわけではありません。

特に、非常にリスクの高い患者様には、当院では開胸しての人工血管置換とステントグラフトを併用することにより、何とか救命につなげるハイブリッド手術も行っております。

B型においては血流障害や破裂がない限り、血圧管理および安静確保による経過観察(降圧保存療法)を行います。

このように、『急性大動脈解離』は命に関わる循環器疾患の代表的な病気ですし、激烈な背部痛や胸部痛を主症状としています。したがって、お話ししたような症状がある場合は一刻も早く救急車で外科手術ができる病院に搬送していただくことが大切です。

最近はドクターヘリや防災ヘリでの患者搬送が可能となったため、かなり遠くから来院され、緊急手術によって一命をとりとめる症例もあります。

本地洋一さん:今回の『急性大動脈解離』は『高血圧症が引き起こす血管の病気』の第2弾としてお話しいただいているのですが、やはり予防するとなると血圧を含めた基礎疾患のコントロールということしょうか?

松尾仁司院長:『急性大動脈解離』は基本的には加齢と動脈硬化の進行によって発症する場合が多いことがわかっています。血圧値、血糖値、コレステロール値のコントロール、禁煙の4つは動脈硬化の進行を防ぐために、重要であり、これが結果として『急性大動脈解離』の発生リスクだけでなく、多くの循環器疾患の予防につながると考えられます。

本地洋一さん:というと、お医者さんが出してくれるお薬をキチンの飲むということでしょうか?

松尾仁司院長:お薬プラス生活習慣の改善ですね!

本地洋一さん:高血圧症も糖尿病も脂質異常も自覚症状が出にくいのでどうしても食事や運動、内服を継続するのが難しいです。何かいい方法はありますか?

松尾仁司院長:確かに、モティベーションを維持し続けることは難しいですよね。診察室で多くの患者さんを診ていますと、比較的ご高齢で高血圧症が引き起こす様々な病気の怖さをきちんと理解している方は、内服や生活習慣の改善のためのモティベーションを維持できているように感じます。一方で健康診断で高血圧症や糖尿病を指摘されて来院される若い患者様は、今まで怖い病気と向き合った経験がないうえに自覚症状もないため、『急性大動脈解離』のような病気は自分とは無関係だと思いがちです。このため内服や生活習慣の改善のためのモティベーションを維持することがなかなかできない方が多い気がします。

このような方に上手にお話しして将来起こりうる恐ろしい合併症にかかりづらくするための意識改革のお手伝いをすることも我々医師の仕事だと考えています。

ここで、視聴者の方からE-mailが届きました。

『兄は 以前から心臓の薬を処方されていましたが、体調が良くて、薬をやめていたら この急性大動脈解離になって、自分の血管を利用した手術を受けました。やっぱり今の話じゃないですけど、薬をやめたらいかんな―って言ってましたよ!』

吉田早苗さん:この続きは12月10日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。

きょうもラジオは!?2時6時 | ぎふチャン | 2020/12/24/木  14:00-16:00 https://radiko.jp/share/?sid=GBS&t=20201210143325

聴取可能期限:2020年12月18日 19:10まで