『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第37弾~

2021年12月23日午後3時10分、『本地洋一のハート相談所』第37回目の放送です。

本地洋一さん:今日は岐阜ハートセンター循環器内科医師の佐橋勇紀医師にお越しいただきました。先生は普段岐阜ハートセンターの循環器内科医師としてどのようなお仕事をされているのでしょうか?

佐橋勇紀医師:私は岐阜ハートセンターで不整脈チームの一員として徐脈性の不整脈にペースメーカーの植込み手術を行ったり、不整脈に対してカテーテルアブレーション治療を行ったりしています。

本地洋一さん:なるほど、つまり脈が乱れる病気の患者様の診断や乱れた脈をコントロールするための治療を主に行って見えるということですね。

吉田早苗さん:大変若くてさわやかなイメージの先生ですね!先生のお顔を見ると私までドキドキと脈が乱れてしまいそうですwww。

実は今日はリスナーの方からの質問が来ています。

「循環器疾患のため経過観察中ですが、天候により気圧が変化すると血圧が変化します。今のところ体に異常はないと思うのですが、このまま様子見でよろしいでしょうか?」

佐橋勇紀医師:天気や気圧の変化が血圧に影響を与えることはあると思います。この質問をくださったリスナーさんは、体調に関しては特に問題がないとのことなので、このまま様子を見てもらえばよいと思います。

しかしながら、血圧変化の原因が、お天気や気圧の変化だけによるものなのかは少し気になるところではあります。血圧に影響を与える因子としましては、食事で塩分の取りすぎがあります。ストレスや内服薬の飲み忘れ、暖かい部屋から寒い外へ出たときなどの急激な温度変化でも血圧は変化します。

本地洋一さん:つまり、お天気だけでなく生活環境の様々な要因で血圧は変動する可能性があるわけですね!

ところで、本日のこのコーナーのテーマは「心臓ペースメーカー」ですが、そもそもこれはどのような病気の患者様に使われるのでしょうか?

佐橋勇紀医師:「心臓ペースメーカー」とはその名の通り「ペース」、つまり心拍を作る医療機器です。この場合の「ペース」とは心臓の脈のことです。つまり重度の脈の乱れがある患者様に対し、心臓の脈を人工的に作るために植込む機械を「心臓ペースメーカー」といいます。

本地洋一さん:心臓の脈というのは走ったりして負荷がかかると早くなり、寝ているときは遅くなったりしていると理解していますが、それが上手くコントロール出来ない病気があるということですか?

佐橋勇紀医師:一般的に安静時の脈拍というのは1分間に60~80回と言われています。しかしながら、加齢や病気によって、脈拍をうまく作れなくなることがあります。脈拍が1分間に20~30回と少なくなってしまうと、心臓から全身に送り出される血液量が少なくなってしまうため、息切れや眩暈を感じたり、場合によっては失神するといった症状が出ることがあります。このように脈拍が正常より遅くなる不整脈を徐脈性不整脈と言います。

そのような方には「心臓ペースメーカー」を植込んで、脈を人工的に作ってあげる治療を行います。

本地洋一さん:不整脈には脈が遅くなる病気と異常に早くなる病気があると聞いています。脈が異常に早くなる病気にはどのような治療があるのでしょうか?

佐橋勇紀医師:脈が異常に早くなる不整脈の総称を頻脈性不整脈と言い、その一つに心房細動という病気があります。

心房細動とは心房の電気刺激生成が300-600回/分と非常に速い状態です。心房が色々な所から刺激されて、規則的な収縮が出来ず、痙攣を起こしている様な状態です。このようになると、心房波は一定の形を示さず、不規則な波となります。またすべての心房波が心室に伝導してしまうと、心室の拍数が速くなりすぎて、血液が有効に送り出せなくなります。

この病気に対しては、脈拍数を抑える薬や、カテーテルアブレーションといったカテーテル治療を行っています。

一方で、脈が遅すぎる徐脈性不整脈に対しては、脈を速くする薬や脈を速くするカテーテル治療はありません。

本地洋一さん:なるほど、脈が異常に遅くなる徐脈性不整脈の場合、「心臓ペースメーカー」を植込んで、人工的に脈を作るしかないということですね。先ほど先生からそのペースメーカーのサンプルを貸していただいたのですが、これを手術で植込むのですか?

佐橋勇紀医師:ペースメーカー本体は500円玉より一回り大きなサイズで、厚さは500円玉3枚程度で、この中に電気回路や電池が組み込まれています。ほとんどの方は左胸の皮膚に3センチほどの皮下ポケットを作成して植込みます。心臓を刺激するリード(電線と電極)は静脈を通して心臓内に留置します。

本地洋一さん:我々は階段を上ったり、走ったりすると脈がはやくなりますが、「心臓ペースメーカー」を植込んだ患者様は必要に応じて脈が速くなったりするのでしょうか?

佐橋勇紀医師:大変良い質問ですね!実は、「心臓ペースメーカー」には加速度センサーが組み込まれているため、階段を上ったり走ったりすることを感知して必要に応じて脈を速く打ってくれる機能を持っています。

また、最近のペースメーカーはMRI(核磁気共鳴画像法)の強い磁力や電波を受ける検査も検査条件をクリアすれば受けることが可能となっています。

本地洋一さん:「心臓ペースメーカー」は、電池で動いていますよね。電池寿命はどのくらいなのでしょうか?また、定期的なメンテナンスは必要なのでしょうか?

佐橋勇紀医師:「心臓ペースメーカー」の電池寿命は10年くらいと言われています。メンテナンスに関しましては1年に1回程度は病院に来ていただいて誤作動がないかなどのチェックを受けていただいています。

近年は「心臓ペースメーカー」の遠隔診断が進んでいます。これは、お家の中に不整脈のチェックとペースメーカーの機能を自動診断して結果を送信できるトランスミッターを設置することにより、1か月に1回患者様の不整脈の状況やペースメーカーの作動状況を病院で確認できるシステムがどんどん普及してきています。

本地洋一さん:すばらしいですね。このように小さな機械を植込むことにより、かなりご高齢の方でも日常生活のみならず、軽い運動まで出来てしまうとは、これからの超高齢化社会になっても、「心臓ペースメーカー」は徐脈のために寝たきりになる人を減らすためにも大変有用な医療機器ですね。ありがとうございました。

吉田早苗さん:心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。

次回のハート相談所は2022年1月13日(木)14:30からの放送になります。