2022年12月29日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第61回目の放送です。

今回の放送のテーマは『年末年始に注意すべき心臓病』です。

本地洋一さん: 年末年始になると、忘年会で普段会わない人と会ったり、親せきや知人が帰省してお正月に集まったり、寒い中初詣に行ったりと生活のリズムや食事が普段と変わったりしますよね!

松尾院長は、循環器専門のお医者さんですが、医師としてこの時期に気を付けることをお教えください。

『年末年始は心血管病を発症しやすい時期です』

松尾仁司院長: 今本地さんが言われたように、日本人にとって年末年始というのは特別な期間ですよね!

年末には大掃除や忘年会、年始には初もうでや新年会などで寒い中で外出したり夜更かししたり、暴飲暴食をしたりすることもあると思います。

私の専門とする心筋梗塞などの循環器疾患は、冬場の寒い日や雪の降る日に多く発症することが知られています。

また、心筋梗塞には発症しやすい時間帯もあり、日中に比べると深夜から明け方にかけて多く発症することが疫学的にわかっています。

つまり、大みそかの夜中に初詣に出かけてお参りしたり、夜中までご馳走をつまみにお酒を飲んだ後、寒い中初日の出を見に行ったりするのは、心臓病にとってあまりお勧めできることではありません。

『年末年始は心不全の増悪を起こしやすい時期です』

このように年末年始は寒さという普段と違った行動や食生活を行うことが多いため、は心不全の患者様にとっても注意が必要です。

心不全の増悪因子には①内服中断 ②通院中断 ③塩分・水分 ④過労 ⑤感染症(特に肺炎) ⑥血圧上昇 ⑦過度の運動 ⑧不整脈の悪化 ⑨貧血などがあります。

年末年始は、通常の外来が休診となっておる病院が多いためお薬が切れることに注意が必要です。加えてお正月早々病院に係るのは縁起でもないと体調が悪くても我慢してしまうこともあるかと思います。

また、おせち料理というものは、日持ちを良くするために濃い味付けで塩分も多いものが多いですよね。私もカズノコが大好きですが、これら味付けの濃い食べ物はお酒のつまみにもなりついつい塩分の過剰摂取になりがちですし、塩分の過剰摂取はのどが渇きますので、水分も過剰摂取するため心不全をより悪化させる原因となります。

冬場は風邪をひくことも多いですし、師走で忙しい中無理をして風邪をこじらせてしまうと心不全を悪化させる原因となります。

吉田早苗さん: 普段の生活のリズムをあまりにも極端に変えてしまうのは、心臓にとって良くないということですね!

松尾仁司院長: 若くて元気な人は別として、心臓に病気を持っている方や、心臓病でなくてもある程度お年を召していて、糖尿病や高血圧症、高コレステロール血症と言われているような方は、少し気を付けたほうが良いと思います。

本地洋一さん: 皆さんご自分の病気はわかっておられると思います。したがって、暴飲暴食や過労は良くないとご存じでしょうが、年末年始はどうしてもそれが守り切れないということが問題なのですね。具体的にはどのようにすればよいのでしょうか?

『年末年始の過ごし方』

食事は、おせち料理やお雑煮などはどうしても塩分の過剰摂取になりがちですので、少しくらいなら良いですが、食べすぎに注意してください。また、お雑煮などは塩分を控えめにして薄味でお願いします。

大掃除は一日で全て終わらせようとするとかなり大変で過労になるため、無理せずに何日かに分けて行うと良いと思います。

初詣は元日の込み合う時間帯は、人込みで長時間寒い外にいることになりますし、感染リスクも高まりますので、深夜や明け方は避けてできるだけ人出の少ない時間帯に寒くない服装で行き、帰宅後はしっかりと休養を取ることが重要です。

吉田早苗さん:ありがとうございます。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。