『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第45弾~

2022年4月28日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年8回目の放送です。

本地洋一さん:本日のテーマは『心臓の腫瘍』です。

心臓に出来る腫瘍の話はあまり聞いたことがありませんが、心臓にも腫瘍ってできるのですか?

松尾仁司院長:一般の方が腫瘍ときくと、真っ先に思い浮かぶは癌だと思いますが、腫瘍は必ずしも癌のように悪性のものばかりではありません。

腫瘍とは、体を構成する細胞に由来し、進行性に増えたものです。このうち、異常な細胞が周りに広がったり(浸潤)、別の臓器に移ったり(転移)して、臓器や命に重大な影響を与えるものが悪性腫瘍です。

一方で、浸潤や転移をせず、周りの組織を押しのけるようにしてゆっくりと増える腫瘍を良性腫瘍と言います。

肺や胃などの臓器同様、心臓にも腫瘍が発生しますが、心臓腫瘍自体稀な病気で、頻度的には全剖検例の0.1%以下と言われています。

また、心臓の腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍の割合は良性腫瘍が70%、悪性腫瘍が30%です。

本地洋一さん:全剖検例の0.1%ということは、心臓は腫瘍にかかりにくい臓器だということですね。

中でも、悪性腫瘍は少ないとのことですが、それはどうしてでしょうか?

 

松尾仁司院長:大変良い質問ですね!確かに心臓には、いわゆる癌は少ないとされています。

これには諸説あります。

悪性腫瘍の中でも、体や臓器の表面などを構成する細胞(上皮細胞)からできる「癌」と、血管・骨髄・骨や筋肉などを構成する非上皮細胞からできる「肉腫」に分類されます。

心臓の心筋細胞は横紋筋という無数の筋線維で構成されているため、心臓に出来る悪性腫瘍は平滑筋肉腫と呼ばれています。

1. 心筋細胞は高度に分化しており、細胞分裂を起こさないため、細胞の異常増殖の病気である癌や肉腫を発生しない。したがって、心臓に出来る悪性腫瘍は厳密には「肉腫」とよばれるものです。

2. 心臓は常に収縮を繰り返し血液を全身に送り出しているため心臓を通る血流は早く、ほかの臓器由来の癌細胞が流れて来ても心臓には取り付く島がなく、転移しにくい。

3. 癌細胞は35℃前後で最も増殖し、39℃以上になると増殖が止まり、42℃を超えると死滅すると言われています。心臓は身体の中心で最も体温が高いため、心臓では腫瘍細胞が増殖できにくい。

4. 心臓からがん抑制ホルモンが出ている。心房から分泌されるナトリウム利尿ペプチドというホルモンが癌を抑制しているのではないかという説が有力になりつつあります。

本地洋一さん:心臓の悪性腫瘍に治療法はあるのですか?また、予後はどのくらいなんでしょうか?

松尾仁司院長:治療法としては、外科手術による切除が原則です。通常は全身麻酔下に人工心肺という心臓と肺の肩代わりをする装置を用いて、心臓を一時的に停止させて行います。

予後につきましては、悪性の平滑筋肉腫の場合、発見された際にはすでに全身に転移している場合が多いこともあり、予後は極めて不良です。

本地洋一さん:心臓の良性腫瘍についてもお話しください。

松尾仁司院長:心臓に出来る良性腫瘍の中で最も多いものは粘液腫で、原発性良性心臓腫瘍のの30%~50%を占めるとの報告があります。これは粘液状の器質が豊富に存在する腫瘍で、見た目は赤茶色のゼリー状の腫瘍です。

粘液腫の多くは、心房中隔から発生し、大きさや可動性の有無によりいろいろな症状を起こしてきます。

本地洋一さん:良性腫瘍とはいえ様々な症状を引き起こすのですね。具体的にはどのような症状でしょうか?

松尾仁司院長:症状的には大きく3つに分けることが出来ます。

1. 心腔閉塞症状:心房内の粘液腫が大きくなると、心房と心室の間の弁を塞ぐため、僧帽弁狭窄症や、三尖弁狭窄症と似た病態を呈します。さらに、心臓の弁口を完全に塞いだ場合には失神発作や突然死に至る場合もあります。

2. 塞栓症:腫瘍の一部が心臓から飛び出して脳動脈や腎臓、腹部大動脈、四肢動脈などに全身性の塞栓症を起こす場合があります。

3. 全身症状:全身倦怠感、食欲不振、発熱、体重減少、貧血などを認めます。

本地洋一さん:粘液腫の診断と治療について教えてください。

松尾仁司院長:診断には心臓超音波検査が有用です。針を刺したり、薬を使用することのない非侵襲的な検査ですし、腫瘍の大きさ、付着状態、可動性について情報を得ることができ、さらに経食道心臓超音波検査によりさらに詳細な情報が得ることが出来ます。

CTでは心筋浸潤や心膜への進展の程度が評価できます。また、MRIでは腫瘍表面や内部組織の性状が描出されます。

療は手術切除が基本です。通常完治しますが、1~5%の症例で再発を認めることがあります。

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。

次回のハート相談所は2022年5月12日(木) 14:30からの放送になります。