『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第46弾~
2022年5月12日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年9回目の放送です。
本地洋一さん:本日のテーマは『たこつぼ心筋症』です。
聞きなれない病気ですが・・・
吉田早苗さん:『たこつぼ』って・・・病名ですか? 初めて聞きました。
松尾仁司院長: 蛸壺とはウィキペディアによりますと、タコを捕獲する目的で漁師が使う壺で、古くは首の部分のくびれた単純な素焼きの壺がもちいられたとあります。
一方心筋症は心臓の筋肉の異常により心臓の機能が損なわれる病気です。
『たこつぼ心筋症』とは1990年に日本で命名された二次性の心筋症です。心臓の左心室は本来円錐状の形をしていて正常時には左室全体が収縮して全身に血液を送り出しています。
一方『たこつぼ心筋症』になると左心室の先のほう(心尖部)を中心とした領域の収縮異常をきたし動かなくなり、左室の出口近く(基部)のみが収縮するのが特徴で、左心室の収縮末期像が:『たこつぼ』に似ていることから『たこつぼ心筋症』と命名されました。
本地洋一さん:『たこつぼ心筋症』の原因や病態をもう少し詳しくお話しいただけますでしょうか。
松尾仁司院長:『たこつぼ心筋症』の典型的な臨床症状は、ストレスが誘発する二次性の心筋症と言われていて、強い精神的や肉体的ストレスの後に胸痛や動悸、呼吸困難、吐き気といった心筋梗塞とよく似た症状で発症します。
強い精神的ストレスとは、例えばご家族が亡くなったとか、阪神淡路大震災や東日本大震災に被災したとかいう場合などです。また肉体的ストレスとは、外科手術がきっかけでこの病気が発症することがあるという報告もあります。
また、この病気の特徴の一つとして、高齢の閉経女性に多く発症することが知られています。
男女比は1:7で、平均の発症年齢はだんせいで65.9歳、女性で68.6歳という報告もあります。
本地洋一さん:『たこつぼ心筋症』は心筋梗塞とよく似た症状で発症するとのことですが、診断はどのようにして付けるのですか?
松尾仁司院長:『たこつぼ心筋症』の場合、急性期には心電図であたかも急性心筋梗塞を彷彿させる急性変化を認め、採血上も心筋障害マーカーの上昇をみとめます。
急性心筋梗塞が、冠動脈が閉塞することにより、その還流領域の心筋が壊死を起こし、壁運動障害が起こるのに対し『たこつぼ心筋症』では、冠動脈閉塞による血流障害とは異なるメカニズムで心筋障害が起こるため、冠動脈には病変が無いという特徴があります。
したがって、急性心筋梗塞との鑑別のためには、通常カテーテルによる冠動脈造影を行います。
近年は冠動脈造影CTでも冠動脈の評価は可能ですが、急性心筋梗塞の場合は早急なカテーテル治療が必要な場合が多いため、『たこつぼ心筋症』と心筋梗塞を鑑別するためにも、カテーテルによる冠動脈造影を行うことが一般的です。
本地洋一さん:『たこつぼ心筋症』は初期には心筋梗塞とよく似た臨床症状を起こすとのことですが、その後の予後も心筋梗塞と同様の経過なのでしょうか?
松尾仁司院長:『たこつぼ心筋症』の経過は軽症から重症まで様々です。急性期の合併症も心筋梗塞とよく似ており、急性心不全、僧帽弁閉鎖不全、心原性ショック、不整脈、心破裂などが重篤なものとして挙げられます。しかしながら、通常は時間の経過とともに壁運動障害は徐々に改善しますので、一般的には長期予後は健常人と差はないと言われています。
吉田早苗さん:亡くなる方も見えるのでしょうか?
松尾仁司院長:『たこつぼ心筋症』全体の死亡率は4%程度だという報告があります。ただ、直接死因の多くは基礎疾患による非心臓死であり、死亡例の約80%に急性腎不全、呼吸不全、脳卒中、非心臓手術などが関与すると言われています。
吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。
次回のハート相談所は2022年5月26日(木) 14:30からの放送になります。