『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第47弾~

2022年5月26日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年10回目の放送です。

本地洋一さん:本日のテーマは『胸の痛み』です。

松尾先生、一口に『胸の痛み』と言いましても、胸からお腹にかけては心臓だけへはなく、様々な臓器がありますよね!

また、ろっ骨などの骨や、筋肉も沢山あるので『胸の痛み』原因も様々であると思うのですが、どのようにとらえたらよいのでしょうか?

 

松尾仁司院長:我々循環器の医師が病院で診療している際、『胸の痛み』は患者様が訴えられる症状としては、最も多い症状の一つです。

一般の方々にとって『胸の痛み』はというと、心臓の痛みと思われる方も多いと思います。

我々循環器の領域では、急性心筋梗塞、解離性大動脈瘤・大動脈破裂、肺塞栓症といった命に関わる重篤な状態に陥る可能性がある疾患で『胸の痛み』を主症状とする病気があります。これらの病気は重症で、場合によってはご自身で血圧を保つことが出来なくなり、『胸の痛み』に加えて大量の冷汗やショック、意識障害を伴うこともあり、病院にたどり着く前に亡くなる方もお見えになります。

本地洋一さん:急性心筋梗塞というと、我々一般人でもなんとなく怖い病気であるという印象を受けますが・・・

松尾仁司院長:心臓という臓器は人が母親のお腹にいる時からその方がお亡くなりなるまで、ズーっと動き続けなければならない臓器で、心筋という筋肉でできているため、動き続けるためには、冠状動脈により酸素と栄養が供給され続けなければなりません。

心臓に酸素や栄養を運ぶ血管を『冠状動脈』といい、心臓の表面を冠(かんむり)が覆いかぶさるようにして心臓全体に血液を運んでいます。

年齢を重ねてきますと、冠状動脈が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりすることがあります。

動脈硬化自体には自覚症状はないのですが、ある時動脈硬化の起こっている部位に血栓という血の塊ができて急激に詰まることにより、一気に血流が途絶することがあります。そうなると心臓の筋肉に栄養が行かなくなって心筋は壊死を起こしてしまいます。これが『急性心筋梗塞』という病気です。

典型的な症状は胸の真ん中が締め付けられ、冷汗を伴う『胸の痛み』を訴えられる方が多いです。

先ほど本地さんが言われたように、胸、胸郭には心臓だけでなく、大動脈、肺や肋骨、大胸筋や肋間筋などの筋肉、さらに皮膚もあります。またお腹にも『胸の痛み』の原因となりうる臓器があるため、症状だけで『急性心筋梗塞』と診断するのは難しいです。

しかしながら、ほとんどの『急性心筋梗塞』は病院で心電図と採血検査を行うことによって診断がつきます。

また、冠動脈が詰まってから90分以内に再疎通出来ると、予後は良好であると言われています。一方で24時間以上詰まった状態が続くと心筋壊死が完成してしまうことが分かっています。一般的には発症から6時間以内に再疎通治療を行うことが理想的であると言えます。

 

急性心筋梗塞に対する緊急カテーテル治療

つまり、『胸の痛み』の原因が『急性心筋梗塞』の場合は、発症から循環器専門病院までできるだけ早く到着して、正しく診断し、一刻も早く再疎通療法を行うことが、心筋梗塞の壊死範囲を小さくし、予後の改善ばかりでなく、その後の生活の質を落とさないためにたいへん重要ということです。

岐阜ハートセンターでは循環器専門医が常に病院内に常駐する体制で、24時間体制で『心筋梗塞』をはじめとした循環器救急疾患に対応しています。少しでも早く正しい診断をするためには早期の受診をお勧めいたします。

本地洋一さん:ということは、急性心筋梗塞や、解離性大動脈瘤といった循環器の救急疾患は、早期受診できるかどうかによって救命率や予後、その後の生活に大きな影響を与えるということですね!

ほかには『胸の痛み』に関しての最新の知見などがあれば教えてほしいのですが・・・

松尾仁司院長:そうですね、今お話しした心筋梗塞や狭心症といういわゆる虚血性心臓病というのは、動脈硬化の進行によって冠状動脈が狭くなったり詰まったりすることが原因で起こる病気で、心臓の筋肉に十分な血流が行かないことにより、『胸の痛み』が出ることが知られています。

この動脈硬化による狭窄の描出は太さが数ミリメートルの冠動脈本管や側枝に関してはCTや冠動脈造影確認することが出来ますが、冠状動脈のずっと末梢の微小血管レベルのものは、細すぎて現在使われているCTや冠動脈造影装置では画像として狭窄を確認することは出来ません。

最近、この微小血管の閉塞や狭窄による心筋梗塞や狭心症があることが分かってきました。

患者様によってはで病院を受診し、CTや冠動脈造影検査をしても、治療対象となる冠動脈狭窄が認められません大丈夫ですと言われてしまうこともあります。

冠動脈造影検査で有意な狭窄を認めないこれらの患者様はメンタルな問題として片付けられていた場合もあったと思います。近年は欧米や日本の循環器学会でも心臓の微小血管をきちんと評価することが推奨されつつあります。まだまだ病態が完全には解明されてはいませんが、岐阜ハートセンターではカテーテル検査の際に圧ワイヤーを使用することにより、微小血管の虚血も評価する取組を始めています。

今後は、カテーテル検査以外のCTやMRI、心臓各医学検査などでさらに詳しい知見が分かるようになってくることが期待されています。

本地洋一さん:先生のお話を伺うと、循環器の領域というのは日進月歩で進歩しているということが良くわかりました。

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。

次回のハート相談所は2022年6月9日(木) 14:30からの放送になります。