『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第50弾~

2022年7月7日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年13回目の放送です。

 

本地洋一さん:今日は『高血圧』について松尾院長にお話を伺いたいと思います。

『高血圧』といいますと、それなりの年齢なるとかなりの方が、お医者さんから“血圧が高いですね!お薬を出しておきましょう”と言われたことがあるのではないかと思います。

『高血圧』は年齢に高い方が多い印象があるのですが、これには何か理由があるのでしょうか?

松尾仁司院長:大変良い質問ですが、難しい質問ですね!

『高血圧』とは一般的には心穏やかに安静にしているときの上の血圧が常に140mmHgを超えているときに『高血圧症』という診断をします。

そもそも血圧とは、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力のことで、心臓から押し出される血液の量と、血管の太さ、血管壁の弾力性によって左右されます。つまり、心臓が送り出す血液の量が多くなると血管の壁にかかる力が強くなり、血圧は高くなります。また、手足などの末梢の血管が何かしらの理由で収縮したり、動脈硬化などで硬く細くなった場合でも血圧は上がります。

比較的高齢の方に『高血圧』が多いのは、血管が老化によって硬くなることによります。

血管というのは本来柔らかいゴムチューブのようなものなのです。子供の頃は血管が柔らかく、弾力があるため、収縮期血圧(上の血圧)が80~90mmHg程度であることが多いです。

しかしながら年を重ねてくると柔らかいゴムチューブのようであった血管が、徐々に硬く硬化してきます。血管が硬くなると、心臓の圧力である血圧を吸収することができなくなるため、低い血圧では手足の筋肉や骨、脳、内臓に血液が届きにくくなります。このため心臓は強く収縮して血液の流れを維持する必要があり、血圧が高くなります。

年齢が70歳を超えますと、収縮期血圧が140mmHgを超える方が70%程度お見えになると言われています。

つまり、『高血圧症』とは高齢者ではかなりポピュラーな病気と言えます。

 

吉田早苗さん:最近はご自分で血圧計を購入されて、お家でご血圧を測っている方も多いですよね。その場合、測る時間帯や体調によっても血圧はずいぶん変動しているように思うのですが・・・

松尾仁司院長:おっしゃる通りです。血圧は日内変動といって常に一定ではありません。昼間起きているときは交感神経が優勢ですので、夜間眠っているときより高くなりますし、精神的なストレスや怒りなどで興奮した場合も血圧は高くなります。また、運動によって手足の筋肉に大量の血液が必要になった場合は、普段の血圧が120mmHgの方でも200mmHgまで血圧が上昇することは珍しくありませんし、これらの場合の血圧上昇は正常な反応と言えます。

よく外来の診察室で、患者様から“家で測った血圧と病院で測った血圧値が随分違うけれど、うちの血圧計が壊れているのでしょうか?”といった質問があります。

これは、白衣高血圧という現象で、病院という特殊な環境で緊張するせいで血圧が上がる現象です。我々医師はこのことを十分理解していますので、高血圧と診断するうえで、あるいは血圧をコントロールしてゆくうえで常に気を付けています。

また、最近の調査では高血圧の方のうち、20%から30%の方では、朝起きて1時間以内の血圧が1日の血圧の中で最も高くなっていることが分かってきました。これはモーニングサージと言います。

もともと脳卒中や心筋梗塞などは朝方に発症することが多く、このモーニングサージと、これらの心血管イベントの発症とは関係があると考えられています。

これらのことから、我々医師は高血圧の患者様には朝1回、夕方から夜に1回、1日に2回の血圧測定をお勧めしてそれを診察室でチェックするようにしています。

本地洋一さん:正常な血圧値とはどれくらいなのでしょうか?また、どのくらいの血圧になったら薬を飲む必要があるのでしょうか?

松尾仁司院長:どのくらいの血圧になったら、薬を飲む必要があるかという点につきましては現在、日本高血圧学会2000年版、日本老年医学会2002年版をもとに判断されることが多いため、紹介しておきましょう。

 

本地洋一さん:常に血圧が高い状態、特に朝方の『高血圧』が、命に関わる脳血管疾患を起こす可能性があるということですね!

ほかにも『高血圧』によって引き起こす病気もあるのでしょうか?

松尾仁司院長:『高血圧』の影響はまず、血管の壁が弱い細い血管に現れるため、細動脈と呼ばれる細い血管が多い臓器ほど早く障害されます。具体的には脳や腎臓、目(網膜)などです。

血圧が高いこと自体では、特に自覚症状はありませんが、『高血圧』の状態が5年、10年、15年と長く続いた場合には脳卒中、腎硬化症などの恐ろしい病気にかかる頻度が徐々に増えていくことが知られています。

よく患者様に“私は特に自覚症状なないのですが、この高血圧のお薬はこの後一生飲み続けなければいけないものですか?”という質問を受けます。

『高血圧』とはいわばシロアリのようなものです。シロアリを放置しておくと、気づかないうちに徐々に家の柱などが食い荒らされてしまい、ある日突然家が倒れてしまいます。

元気な老後を満喫するためには、お薬を飲み続けるのと同時に普段の生活習慣にも気を付ける必要があります。

 

 

本地洋一さん:血圧を甘く見るなということですね!それでも、症状がないとしばらくすると内服や通院を止めてしまう患者様も多いのではないですか?

松尾仁司院長:たしかに、患者様に対して“あなたは、『高血圧』ですから、お薬を出しておきます”だけでは、患者様はなかなか薬を飲み続けることは難しいかもしれません。内服を続けていただくためには、何故血圧をコントロールする必要があるのかをきちんと説明して患者様に薬を飲み続ける大切さをきちんと理解していただく必要があります。

吉田早苗さん:先生、一つ質問があります。

ご自分の意志とは別に無意識に首を小刻みに振る方が時々お見えになりますが、血圧と何か関係はあるのでしょうか?

松尾仁司院長:脳からの神経伝達の問題で不随意運動が起こることはありますが、首の不随意な動きと血圧は直接的な因果関係はないと思います。

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。