『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第51弾~

2022年7月14日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年14回目の放送です。

本地洋一さん:今日は先週に引き続き『高血圧』について松尾院長にお話を伺いたいと思います。

松尾先生、もしお医者さんに“あなたは『高血圧』ですよ”と言われてしまった場合、我々はどのようなことに注意して、どのような生活を送っていったらよいかを教えてください。

 

松尾仁司院長:『高血圧』とは一般的には心穏やかに安静にしているときの上の血圧が常に140mmHgを超えているときに『高血圧症』という診断をします。

前回のハート相談所では、『高血圧』とはどのような状態で、何故血圧が高くなるのかを中心にお話ししました。

我々医師は『高血圧』の患者様にお薬を処方したり、塩分を控えるように指導したりします。

今回は、そもそも『高血圧』は何故治療する必要があるのか?からお話しします。

2019年高血圧学会が出したガイドラインによりますと、40歳以上の方では、血圧が高いほど、心血管イベントの発生率が高く、特に若い方の『高血圧』程その傾向が強いとされています。

たとえば、40~64歳の年齢層でみますと、収縮期血圧が180mmHgを超える方は、血圧が120mmHgの方に比べて心筋梗塞、大動脈解離、脳卒中といった恐ろしい病気にかかる確率が約10倍高くなることが報告されています。

一方で、『高血圧』の患者様に対してお薬などで血圧コントロールが出来た場合は、これらの心血管イベントの発生率が減少することも分かっています。

健康診断で、必ず血圧測定を行うのは『高血圧』をいち早く発見して、治療することにより将来恐ろしい心血管イベントを予防するためなのです。

(高血圧学会高血圧治療ガイドライン,2019)

本地洋一さん:『高血圧』を放置することによる恐ろしさはよくわかりました。

ただ、血圧が高いだけでは、症状がありませんのでなかなかお薬を飲み続けるのは難しいのではないでしょうか?

松尾仁司院長:おっしゃる通りです。日本における高血圧管理の現状も報告されています。

(高血圧学会高血圧治療ガイドライン,2019)

このグラフは高血圧学会のガイドラインから抜粋したもので、1980年から2016年までの『高血圧』の治療率を男女別、年齢別にみたものです。

『高血圧』の治療率は1980年から高くなり、2016年には70歳代の高血圧患者様の70%近くが治療をするようになりました。

その一方で、それらの患者様の血圧管理の難しさも指摘されており、血圧管理が出来ている割合は、年齢性別を問わず、40%~45%にとどまっていることが分かっています。

本地洋一さん:『高血圧』の管理について、もう少し詳しく教えてください。

松尾仁司院長:そのためには、『高血圧』について皆さんが正しく知る必要があると思います。『高血圧』には本態性高血圧と二次性高血圧の二種類があり、90%が本態性高血圧とされています。本態性高血圧は遺伝的要因もありますが、普段の生活の環境要因である食塩過剰摂取、肥満、運動不足、飲酒、ストレス、喫煙などが多数あることが分かっています。

つまり、高血圧の原因となりうる環境要因は、ご本人の生活環境を見直すことによって改善可能だということです。

したがって、『高血圧』に対する治療は医師が処方する薬による薬物療法だけでなく生活習慣の是正が大変重要となります。

具体的には一日の塩分量を6g未満におさえる。肥満に関してはBMI<25を目指す。運動不足に対しては毎日30分程度の有酸素運動の運動習慣を付ける。禁煙などです。

これらの生活習慣の改善により平均約4kg減少した場合や1時間程度の有酸素運動を行った場合、平均で約5mmHg程度の血圧の低下がみられたとの報告もあります。

本地洋一さん:あと、日本人にとって減塩は非常に困難ですよね!

吉田早苗さん:塩分1日6gってイメージがわかないです。

松尾仁司院長:厚生労働省が2018年に出した国民健康・栄養調査報告によりますと、日本人の一日の平均塩分摂取量は9.7gだそうです。ちなみにカップラーメンを汁まで完食すると5.5g、味噌汁だと1.5gの塩分を接種したことになります。

吉田早苗さん:どちらも大好きです。ラーメンと味噌汁のない生活はつらいですね。何か対策はありませんか?

松尾仁司院長:岐阜ハートセンターでは管理栄養士の方々が患者様に対して様々な栄養指導をおこなっていますので、今日の放送に向けていろいろ知恵を借りてきました。

それによりますと、ラーメン1杯の塩分は5.2gでその内訳は麺に0.3g、スープに3.2g、具に1.6gだそうです。つまりスープを半分残した場合の食塩接種は3.5g、全部残した場合は1.9gとなるそうです。ですので、麺類の汁やスープは必ず残す習慣をすることにより減塩をすることが可能です。

また、味噌汁などの汁物は1日に1回、なるべく具沢山にして汁を減らす工夫をしたり、調味料を醤油の代わりにポン酢や麵つゆに変更するだけでも減塩効果はあるとのことでした。

本地洋一さん:今日の放送を聞いてくださっているリスナーの皆様には、将来の心血管イベント予防のために、塩分一日6g未満という数字をしっかりと覚えていただきたいですね!

 

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。