『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第52弾~

2022年8月4日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年15回目の放送です。

本地洋一さん:今日は先週の『高血圧』に引き続き『コレステロール』について松尾院長にいろいろ教えていただきたいと思います。

 

松尾仁司院長:わかりました。それではまず『コレステロール』とはどのようなものか?というところからお話ししたいと思います。

我々が、食事で摂取している食べ物には糖質、たんぱく質、脂質など様々な栄養素が含まれています。『コレステロール』とは脂質の1種であり、食事から摂取するほか、体内でも合成されます。

コレステロールは人間の全身を作っている細胞やホルモン、胆汁酸の材料になるもので、私たちの身体にとって不可欠なものです。

本地洋一さん:よく『善玉コレステロール』、『悪玉コレステロール』という言葉を耳にしますが、コレステロールには良いコレステロールと悪いコレステロールがあるのでしょうか?

 

松尾仁司院長:悪玉コレステロールとは、LDLコレステロールのことをさします。悪玉コレステロール(LDLコレステロール)は、肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割を担っています。善玉コレステロールとは、HDLコレステロールのことをさします。 善玉コレステロール(HDLコレステロール)は、増えすぎたコレステロールを回収し、さらに血管壁にたまったコレステロールを取り除いて、肝臓へもどす役割を担っています。

悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が高いと何故よくないのかを説明します。

血液中の悪玉コレステロールの値が高いこと自体で自覚症状はありません。ところが長年にわたり悪玉コレステロールの値が高い状態を放置するとやがて動脈硬化を促進してしまうことです。その結果、日本人の死因の第2位である心疾患、第3位の脳血管疾患などの病気を引き起こす恐れがあります。

心筋梗塞、狭心症、大動脈瘤、解離性大動脈瘤、脳卒中、閉塞性動脈硬化症、腎硬化症、腎不全など動脈硬化がその原因となっていたり、その病態に深くかかわる病気は数えきれないほど認められます。

 

本地洋一さん:血管というのは体中に網の目のように張り巡らされているので、その血管が動脈硬化を起こすと様々な臓器に障害が起こるということですね!

松尾仁司院長:ハートセンターでは、心筋梗塞や狭心症の患者様の詰まった冠動脈をステントで広げて血液の流れをよくする治療をたくさん行っています。これにより患者様の多くは胸の痛みなどの症状から解放されます。しかしながら、血液中の悪玉コレステロールの値が高いままだと治療した部位や時には別の場所が狭くなったり詰まったりすることがあります。

動脈硬化の進行を予防するためにも、心筋梗塞や狭心症の再発を防止するためにもコレステロール値をコントロールすることは大変重要です。

本地洋一さん:コレステロールの値を下げるためには、食事と運動、お薬が思い当たるのですが、具体的にはどうすればよいかを教えてください。

松尾仁司院長:心臓病や脳卒中等動脈硬化性の病気を発症された患者様については、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の値を70mg/dL以下に下げることが推奨されています。ここまで悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の値を下げた場合、動脈硬化はむしろ退縮することが期待できるといわれ、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の値を薬によって積極的に下げることは病気の再発防止のために大変重要であると考えられています。

本地洋一さん:年齢が比較的若く、元気な方はどれくらいの値を目安にどうすればよいのでしょうか?

松尾仁司院長:一般的にいわゆる健康で元気な方が定期的に受ける健康診断で悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の値が140mg/dLを超えると高コレステロール血症、120~139mg/dLの範囲を境界域高コレステロール血症と定義されています。

これらの方は、まず生活習慣を見直すことが重要であると言われています。

つまり、食事と運動です。

食事療法のポイントは3つあると言われています。

ポイント① 飽和脂肪酸を減らす

食事の脂質の主な成分は、脂肪酸という物質です。そのうち、悪玉(LDL)コレステロールを増加させる質の悪い脂肪酸が、飽和脂肪酸です。飽和脂肪酸は常温で固まる脂でお肉やバター、生クリーム、菓子パンにも多く含まれており、知らず知らずのうちに摂り過ぎてしまっているので注意が必要です。お肉やバターなどの乳製品を使う洋食よりも和定食の方が、飽和脂肪酸も少なく、食物繊維も多くなるので、選べるときには和定食を選ぶと飽和脂肪酸が少なくなります。

ポイント② 食物繊維をとる

食物繊維はLDLコレステロールを増えにくくしたり、心筋梗塞のリスクを下げるとも言われています。食物繊維の多い野菜やキノコ、海藻、玄米、もち麦などを積極的に食事に取り入れることがおすすめです。ごはんは玄米や麦ごはんなど、できるだけ精製されてないものを選ぶと食物繊維が豊富です。

ポイント③ コレステロールの高い食品は控えめにする

確かにコレステロールはその7-8割が体内で作られていますが、食事からの摂取量が多いと影響が出てきてしまいます。LDLコレステロールが高めの方は、コレステロールが多く含まれる食品を食べる場合、頻度や食べる量を調整しましょう。

心筋梗塞、狭心症、脳卒中といった、動脈硬化性の病気を発症された患者様については、その後の病気の治療、管理を行っていくうえで薬を用いて強力にコレステロールの値を下げることが、大変重要なポイントです。

本地洋一さん:よく食事と運動はセットのように言われていますが、運動療法についてはいかがでしょうか?

松尾仁司院長:コレステロールを下げるためにはどんな運動がいいのでしょうか?善玉のコレステロールであるHDLコレステロールについて、運動によって増加することが知られています。その運動効果について、最近の複数の研究をした結果では、少なくとも週120分の有酸素運動が必要であること、1回あたりの運動時間を長くするほど改善効果が高いこと、が報告されています(Kodamaら、Archives of Internal Medicine 2007)。このような研究から、HDLコレステロールを増やして、悪玉のLDLコレステロールを減らすためには、有酸素運動をしっかり行うことが大切です。頻度は週3~5日、1回あたり30~60分、週150分~300分を目標にしましょう。

消費エネルギー量を高めるためには、日々の何気ない活動で、少しずつ歩数を稼いで、1日の歩数=消費エネルギー量を高めることが大切です。日本人の平均歩数は男性7,500歩、女性6,500歩くらい。まずは平均歩数以上を目指してみましょう。それがクリアできれば男性9,000歩、女性8,000歩、更には男女ともに1日10,000歩を目指しましょう。

まずは歩数を増やしましょう!

本地洋一さん:お薬、食事療法、運動療法それぞれの役割をしっかり理解して継続することが重要なのですね。

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。

次回のハート相談所は2022年8月25(木) 14:30からの放送になります。

 

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。