『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第111弾~

2025年1月9日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 新年 第1回目の放送です。

本地洋一さん: 今回の放送のテーマは『ヒートショック』についてです。

吉田早苗さん: 『ヒートショック』というワードは最近テレビでも良く取り上げられるようになってきていますし、耳にすることが多くなってきましたよね!

松尾院長: 確かにここ最近キーワードのように使われています。『ヒートショック』とは、急激な温度変化が体に与える悪影響を指します。

特に冬場の寒い時期に、暖かい部屋から寒い場所、またはその逆に移動した際、体温調節が追いつかず、血圧が大きく変動することがあります。このような変化が心臓や血管に負担をかけ、脳卒中や心筋梗塞、失神、場合によっては死亡につながることもあります。

 

『急激な温度変化が身体に及ぼす影響』

松尾院長: ヒートショックが起こる際には、体内で以下のような生理的変化が生じます。これらの変化は、急激な温度差に体が対応しようとする過程で発生します。

1. 血管の収縮と拡張

寒い場所に移動した場合:

 寒さを感じると、体は熱を逃がさないようにするために皮膚や末梢血管を収縮させます。

血管の収縮により、血圧が急上昇します。

暖かい場所に移動した場合:

暖かさを感じると、皮膚や末梢血管が拡張し、血流を増やして熱を外に逃がそうとします。

血管が急に拡張することで、血圧が急激に低下します。

2. 血圧の急変

急激な血圧変動は、心臓や血管に大きな負担をかけます。特に高齢者や心血管疾患を抱える人では、これが以下のような症状につながるリスクがあります:

脳卒中(脳出血や脳梗塞)

心筋梗塞

失神やめまい

3. 心拍数の変化

温度差により交感神経が活性化し、心拍数が増加します(寒冷ストレス)。

これが心臓に負担をかけ、虚血性心疾患や不整脈を引き起こすことがあります。

4. 自律神経の負担

急激な温度変化に対応するため、自律神経(交感神経と副交感神経)が活発に働きます。

寒冷刺激では交感神経が優位になり、血圧上昇や心拍数増加を引き起こします。

温熱刺激では副交感神経が優位になり、血圧低下やリラックス効果が生じます。

急激な切り替えが自律神経のバランスを崩し、体調不良を招く可能性があります。

5. 呼吸器への影響

寒い現境では呼吸が浅く速くなり、酸素供給が一時的に不足することがあります。

これにより、めまいや息切れを引き起こすことがあります。

6. 体温調節の困難

特に高齢者では、体温調節機能が低下しているため、急激な温度差に適応しにくくなっています。その結果、ヒートショックの影響を受けやすくなります。

 

『冬場の入浴とトイレではヒートショックに注意が必要です』

日本では年間約1万4000人の方が入浴中に亡くなると言われています。

その原因の多くは『ヒートショック』である可能性があります。

冬場の入浴では、暖かい居間から寒い風呂場へ移動するため、熱を奪われまいとして血管が縮み、血圧が上がります。

お湯につかると血管が広がって急に血圧が下がり、血圧が何回も変動することになります。

寒いトイレでも似たようなことが起こりえます。

つまり、冬場は気温の急激な変化が自律神経の揺さぶりによる血圧の乱高下を起こしやすい季節と言えます。

 

血圧の変動は血管や心臓に負担をかけ、心筋梗塞や脳卒中につながりかねません。

本地洋一さん: ということは、冬場はお風呂の入り方に注意が必要ということですね!具体的にはどの対策をしたらいいか教えてください。

 

『風呂場でのヒートショックを防ぐには』

松尾院長: 一般的にお風呂に入るというのはリラックスできますし、楽しみにしておられる方も多いと思います。入浴は40度未満のぬるめのお湯がおすすめです。また循環器医の立場からは、長湯はお勧めできません。入浴する時間帯は深夜よりは早めの時間帯を心掛け、心臓病や高血圧症の人は全身浴よりも半身浴をお勧めしています。

冬場の入浴の際には、

1. 脱衣所と浴室を温める

暖かいリビングから脱衣所に移動した際の温度変化を軽減するために、暖房器具を置くなどの工夫をすると良いです。浴槽にお湯が溜まっている場合にはふたを外しておくと浴室の温度を上げることが出来ます。また、一番風呂は翌日が十分に温まっていないので、なるべく避けましょう。浴室を温める方法としてシャワーを使って急騰することで浴室の温度を上昇させることが出来ます。また、浴室の床にマットやスノコなどを置いておくことも有効です。

2. お風呂の温度は低めに設定

お風呂の温度が42℃以上になると、心臓に負担をかけることが知られています。38~41℃に設定して入浴することが勧められています。また、入浴する際は手や足などの心臓から遠い場所にかけ湯をして身体をお湯に慣れさせましょう。首までお湯につかることも心臓に負担をかけるので、浸かる際は胸のラインまでにすることをお勧めします。

3. ゆっくりとお風呂から出る

お湯につかっている時は、身体が暖められ、血管が拡張して血圧が低下しています。その状態で急に立ち上がると心臓より上にある脳まで血液をはこぶことができず、眩暈を起こしたり、失神することがあります。お風呂から出る時はゆっくり立ち上がることを心掛けてください。高血圧症などで降圧剤を内服している人は特に注意が必要です。また、飲酒後は血圧が下がることが知られていますので、飲酒後の入浴は避けたほうが良いですし、入浴前には水分を摂取しておきましょう。

 

『サウナの入り方にも注意が必要です』

吉田早苗さん: 私の周りにはサウナが好きな方が何人か見えます。中には熱いサウナで汗をかいた後に冷水に飛び込んだりする方もお見えです。サウナ好きの方はこれを繰り返し行うことが気持ちよくて“整った”などと表現されることがあるようです!

一方でリスナーさんからサウナで意識を失ったといったメッセージもいただいたことがあります。

サウナでも汗をかいた後に冷水に飛び込んだりすることは、よくないことなのでしょうか?

 

松尾院長: サウナと冷水浴を交互に行うことに関してですが、この入浴法は血管を拡げたり縮めたりを交互に繰り替えることによって新陳代謝を活発にするということが狙いだと思います。

確かに、若くて生活習慣病や心臓病などがないいわゆる健常人にとっては問題ないといえます。

しかしながら、循環器医の立場から言わせていただくと高血圧症、糖尿病や肥満などの生活習慣病や心臓病の方、血管が痛んでる方にとってはあまりお勧めできません。

本地洋一さん:リスナーの皆様の中でも、ご高齢の方、心臓病や脳卒中の既往のある方はもちろん、生活習慣病をお持ちの方は今のお話が『ヒートショック』の予防につながると思います。

そういった病気をお持ちの方のご家族も協力してお家の中の環境を整えたりするとより効果が上がりますよね!

松尾院長: 冬場は『ヒートショック』を起こしやすい季節です。

『ヒートショック』を予防するためには寒さに気をつける温度差に気をつけるということを心がけてください。

 

吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2025年1月23日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。