『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第88弾~

2024年1月18日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 令和6年2回目の放送です。

本地洋一さん:今回の放送のテーマは『血圧』についてお話を伺いたいと思います。

このコーナーでは今までも血圧や高血圧について取り上げたことがありますので、おさらいになるところもありますが、まず『血圧』とは何か?からお教えください。

『血圧は健康のバロメーターです』

松尾仁司院長: 血圧とは、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力のことで、心臓から押し出される血液の量と、血管の太さ、血管壁の弾力性によって左右されます。

言い換えると血圧とは脳や、内臓、筋肉、骨、皮膚などの全身の組織に、血液中の酸素や栄養を送り届けるための力と言えます。したがって、血圧が低すぎると組織への酸素や栄養の供給が滞ってしまいますし、血圧が高すぎると血管にかかる力がすごく大きいということなので脆い血管などは障害を受けやすくなります。

生きていくうえで血圧は絶対に必要な指標なのですが、その値が高すぎる場合を高血圧、低すぎる場合を低血圧といい、どちらも長く健康的な生活を続けるうえで好ましくありません。

『血圧は常に変動しています』

血圧は常に一定ではありません。運動することにより身体が多くの酸素を必要とした場合は、全身の組織により多くの血液を送り出すために血圧は高くなりますし、面接や試験で精神的に緊張したりストレスがかかった時にも血圧は上昇します。

本地洋一さん: 一日のうちでも血圧は変動するということを聞いたことがありますが・・・

松尾仁司院長: おっしゃる通りです。血圧には日内変動があり一日のうちでも血圧は朝の目覚めとともに上昇し、活動性が高い日中は交感神経が優位となりますので、やや高めで推移します。そして活動性が低下する夜間や睡眠中は、副交感神経が優位となり血圧は日中に比べると低くなります。

吉田早苗さん: ということは、血圧は一日に何回も測ったほうが良いということでしょうか?

松尾仁司院長: 理想的には朝・昼・晩と一日に3回測れると良いのですが、昼間はお仕事をしておられる方も多いでしょうから、朝起きて朝食前に測定し、夜は夕食後のリラックスした際に測定する習慣をつけていただくのが良いと思います。

『高血圧症は最も頻度が高い病気の一つです』

『高血圧症』は身近な病気の一つですが、歴史的には最初に気づいたのは紀元前の中国人で、強い脈は病的であるとか塩分の取りすぎは脈が強くなるといった記載が古文書にあるとのことです。その後、約2000年大きな発展はありませんでしたが、19世紀の末にようやく現在と同じ方法で血圧が測られるようになりました。つまり血圧が測定されるようになって100年そこそこです。

本地洋一さん: 正常な血圧とはどのくらいなのでしょうか?

松尾仁司院長: よく、“上の血圧”とか“下の血圧”という言い方を耳にしますが、上は心臓が収縮して血液 を送り出したときの「収縮期血圧(最高血圧)」のことで、下は心臓が拡張したときの「拡張期血圧(最低血圧)」のことです。

収縮期の血圧が110mmHg~130mmHgくらいが正常の血圧と言われています。

一般的には心穏やかに安静にしているときの上の血圧が常に140mmHgを超えているときに『高血圧症』という診断をします。

『高血圧症』を放置するということは、血管の壁に常に強い圧力がかかった状態が持続するということです。血管壁はその圧力に対して、次第に厚く硬く変化し、動脈硬化が進行しやすくなります。その結果、血管の弾力性が失われて、血管の内腔はますます狭くなり、さらに血圧が上昇するという悪循環に陥ることがあります。

この悪循環が長年続くと体の様々な臓器に恐ろしい合併症を起こしてくる可能性が知られているからです。

『白衣高血圧と仮面高血圧』

お家で測る血圧と病院の診察室で測る血圧が乖離している患者様がしばしばお見えになります。

白衣高血圧とは、日常生活における血圧は正常範囲内であるにもかかわらず、病院や診療所などにおいてのみ血圧が高くなる状況を指します。

仮面高血圧とは、病院や診療所などで測定した血圧(診察室血圧)が正常な範囲内に収まっていても、早朝や夜間、昼間など特定の時間、あるいは職場など医療機関以外の特定の場所で高血圧を示すことがあります。 このような血圧の状態を「仮面高血圧」と呼びます。

『高血圧症を放置しては危険です』

松尾仁司院長: 疫学調査では日本人の死因に最も強く影響を及ぼしているのは喫煙で、2番目が『高血圧』で、3番目が運動不足、4番目が高血糖あることが分かっています。

『高血圧症』とは安静にしている時でも全身の血管、特に動脈に常に高い圧力がかかった状態です。一口に動脈といいましても、大動脈のような太い動脈から脳、心臓、胃・腸・腎臓といった腹部の臓器、さらには目や手足の筋肉、骨など体中すべての臓器や器官に分布して酸素や栄養を届けています。

『高血圧症』を放置するということは、年余にわたり全身の動脈すべてに常に高い圧力がかかり、ストレスがかかった状態を放置するといっても過言ではありません。

つまり、『高血圧症』の放置により引き起こされる病気は全身に及ぶということなのです。

『高血圧症』の放置が引き起こす頻度の高い病気、頭でいうと脳梗塞、脳出血をあげることができます。特に脳出血は脳の血管が破れて血液があふれ出し、固まって「血腫」となって周囲を圧迫し、脳細胞を破壊してしまう恐ろしい病気で、血圧が高ければ高いほど脳出血の発生する頻度が高くなることが知られています。

 

今から50年以上前は高血圧と脳血管疾患の因果関係がわかっていませんでした。このため本邦では昭和30年~40年代後半は死因別にみた死亡率(人口10万体)脳血管疾患の死亡率が第1位でした。

これに対し、日本では高血圧治療の意義、血圧コントロールの重要性が広く啓蒙され、多くの人々が血圧コントロールの意義を理解し、意識するようになってきました。このため、昭和45 年をピークに減少しはじめ、昭和60 年には心疾患(高血圧性を除く)にかわって第3位となり、その後は死亡数・死亡率ともに減少と増加を繰り返しながら減少傾向が続き、平成30 年の全死亡者に占める割合は7.9%となっています(厚生労働省平成30年人口動態統計月報年計の状況より抜粋)。

 

本地洋一さん: なるほど、特に自覚症状がなくても血圧を適正にコントロールすることの重要性がよくわかりました。お薬をきちんと服用する以外に血圧を下げるために我々が日常生活で取り入れるべき方法があれば、教えてください。

『薬に頼らず血圧を下げる方法5選』

松尾仁司院長: 健康日本21というデータで上の血圧が4mmHg下がると脳卒中で亡くなる方が年に1万人、狭心症や心筋梗塞で亡くなる方は年に5000人へるということがわかっています。

ぜひ皆さんも以下の5選を取り入れてみてください。

方法1:減塩

減塩は確実に血圧を下げるというエビデンスが出ています。

減塩によって正常な血圧の方は2.4mmHg、高血圧の方は5.4mmHg血圧が下がるというデータがあります。

日本人が接種している食塩の量は平均12gと言われていますが、厚生労働省が推奨している食塩摂取量は1日6g以下です。しかしながら、実際6g以下の減塩食は味気なくてなかなか続きませんので、味付けに塩の代わりにコショウや唐辛子、酢を使ったり、だしを効かせるといった工夫をすると良いかもしれません。

方法2:減量

高血圧の予防には正常体重(BMI:18.5~24.5)の維持がとても大切です。

BMIが25以上ある方は、正常体重の方よりも高血圧になるリスクが1.5倍~2倍ほど高いことが分かっています。

一方で、体重を1kg減らすごとに、血圧がだいたい0.5mmHg~2mmHg下がると言われていますし、血圧が10mmHg低下すると脳卒中の発症リスクが27%、冠動脈疾患による死亡率が17%減少することが分かっています。

方法3:DASH食

DASH食とは『Dietary Approaches to Stop Hypertension』の略です。

アメリカ発祥の食べ物の考え方で、果物、野菜、ナッツ中心に飽和脂肪酸または総脂肪を減らした低脂肪食を食事の中に取り入れるというものです。

果物や野菜にはカリウムが多く含まれています。カリウムは身体の中で血圧を上げる大きな要因のナトリウムを体外に出してくれますので、結果的に血圧が下がります。

またナッツ類には血圧を下げる働きがあるマグネシウムが多く含まれています。

DASH食を取り入れることによって、収縮期血圧が8mmHg~14mmHg下がるというデータも出ています。

方法4:運動

定期的な有酸素運動を毎日30分、または週に150分行うことで収縮期血圧が4mmHg~9mmHg低下するというデータがあります。

しかしながら普段運動習慣がない方がいきなり、ジョギングを始めるのは長続きしませんので、まずは短時間の散歩などで敷居を低くして初めて見てはいかがでしょうか?

方法5:アルコールを減らす

飲酒の習慣がある方は、塩分の多いおつまみをとる場合が多いため、血圧にとってはさらに悪循環となります。

男性は1日2ドリンク以下、女性や体重の少ない方は1日1ドリンク以下にすることで血圧は2mmHg~4mmHg下がることが分かっています。

吉田早苗さん:これらを実行すると良いことはなんとなくわかるのですが、かなりストイックな生活を送ることになりますね!

松尾院長: 確かに病院で管理栄養士さんに塩分摂取を1日6g以下にしてくださいと言われても、多くの方はこの食べ物に一体何グラムの塩分が使われているかなんてわからないですよね。また、減塩についての書籍も本屋さんには沢山ありますが、最後まで読んで理解することも、難しくてなかなかできませんよね。

しかしながら、ラーメン屋さんに行く回数を少し減らしたり、スープやうどんやそばのおつゆは残す習慣をつけるといったちょっとした工夫から減塩を始めてはいかがでしょうか?

本地洋一さん: 健康的な生活をより長く続けるためには、ちょっとした工夫と無理なく続けることが大切だということですね。ありがとうございました。

 

次回のハート相談所は2024年2月8日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。