『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第89弾~
2024年2月8日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 令和6年3回目の放送です。
本地洋一さん:今回の放送のテーマは『コレステロール』についてお話を伺いたいと思います。
まずは、『コレステロール』とは一体何なのか?まずはそこから教えてください。
松尾仁司院長:『コレステロール』というのは健康診断の採血項目では花形と言ってよいほど皆さんがその値を気にされる項目ですよね!
『コレステロール』とは血液の中の脂分の一つで、専門的な言い方で血中脂質といいます。これは文字通り血液に含まれる脂肪分を示しまして、最近よく耳にすることが増えてきた『LDL(悪玉)コレステロール』、『HDL(善玉)コレステロール』、『中性脂肪(トリグリセリド)』などの総称をいいます。
善玉コレステロールと悪玉コレステロール
水と油ということわざにもある通り通常水に油は溶けにくいのですが、コレステロールはあるたんぱく質と結合することにより血液という液体に溶け込んでいます。『コレステロール』はこのたんぱく質の種類の違いによって善玉になったり悪玉になったりするわけです。
その理由は、『LDLコレステロール』は肝臓で合成された『コレステロール』を全身の組織に運搬する働きをしています。つまり『LDLコレステロール』が多ければ多いほど全身の組織に多くの脂肪分が運ばれるため、組織の一つである血管内にもその脂肪がしみ込んで蓄えられ、これが動脈硬化の原因となります。そうすると、それをマクロファージという貪食細胞が血管の中にはいってきてコレステロールを食べて掃除しようとします。その後、食べて死んでしまったマクロファージの死骸が血管内にたまってしまいます。この死骸は『粥腫』といって動脈硬化のもととなります。
動脈硬化は全身で起こります。頸動脈や脳の血管で動脈硬化が起これば脳卒中の原因になりますし、心臓を栄養している冠状動脈に動脈硬化が起これば、狭心症や心筋梗塞の原因となることが知られています。
このため『LDLコレステロール』は『悪玉コレステロール』と呼ばれているわけです。
逆に『悪玉コレステロール』の値を低く維持することが出来れば、動脈硬化の進行を押さえたり場合によっては動脈硬化を退縮させることが知られています。
一方『HDLコレステロール』は全身の組織に蓄えられた『コレステロール』を肝臓に戻す働きをしています。そのため『HDLコレステロール』多いと組織にたまった脂肪を取り出してくる働きをしているため、『HDLコレステロール』の値が高いということは組織に脂分が沈着しにくくなり、動脈硬化の発症を抑えることが分かっています。これが『HDLコレステロール』が『善玉コレステロール』と呼ばれている所以です。
本地洋一さん:なるほど、『コレステロール』の値は、ある意味健康のバロメーターといえるのでしょうか?
松尾仁司院長:『コレステロール』の約80%は体内で合成され、残りの20%が食品から取り込まれることが知られています。したがって『コレステロール』の値は、体調によって変化するというよりは体質によって高くなりやすい方とそうでない方が見えます。
吉田早苗さん: 体質で左右されるということは、『コレステロール』の値が高い方は遺伝的要素が強いということでしょうか?
松尾仁司院長: 大変良い質問ですね!
血液中の『LDLコレステロール』は、通常肝臓の表面にあるLDL受容体という蛋白に結合して、肝臓の中に取り込まれ、代謝されますが、生まれつきLDLコレステロール受容体などのコレステロール代謝に関わる遺伝子に異常がありLDLコレステロールが増加する家族性高コレステロール血症という病気があります。
この病気の患者様は、子供の頃から血中のLDLコレステロール値が高いため、20歳代で心筋梗塞など動脈硬化性の恐ろしい病気を発症することもあります
本地洋一さん: 先ほど松尾先生は、『コレステロール』の約8割は体内で合成され、残りの2割が食品から取り込まれるといわれましたが、食事を始めとした生活習慣を見直すことによって『LDLコレステロール』の値を下げることは可能なのでしょうか?
コレステロールを下げるには
松尾仁司院長: 食事は大変重要です。基本は、栄養バランスのとれた食事を3食きちんと食べることですが、ただわかっていても毎食実践するのはなかなか大変ですよね!
ポイントとしては3つあります。
① 飽和脂肪酸を減らす
飽和脂肪酸は常温で固まる脂で御肉やバター、生クリーム、菓子パンにも多く含まれているため、知らず知らずのうちに摂りすぎてしまっているので注意が必要です。
② 食物繊維をとる
食物繊維はLDLコレステロールを増えにくくしたり、心筋梗塞のリスクを下げるともいわれています。野菜やキノコ、海草、玄米、もち麦などを積極的に食事に取り入れることがおすすめです。
③ コレステロールの高い食品は控えめにする
肉・魚の内臓類、魚卵、卵、シュークリーム・カステラ等卵を使った菓子類などにはコレステロールが多く含まれています。LDLコレステロールが高めの方は、コレステロールが多く含まれる食品を食べる場合、頻度や食べる量を調整しましょう。
吉田早苗さん: 本地さんは、カステラ大好きですよね、一気に1本とか食べないようにしないとだめですよ!
ところで、先ほど『HDLコレステロール』は、組織にたまった脂肪を取り出してくる働きをしているとのことでしたが、私の場合『LDLコレステロール』の値が少し高いのですが、『HDLコレステロール』の値も高いといわれました。この場合はどうなのでしょうか?
松尾仁司院長: 心筋梗塞などの動脈硬化性の病気がない方で『悪玉コレステロール』が少し高いけれど、『善玉コレステロール』も高く、悪玉の比率がそれほど高くない方にお薬でコレステロールを積極的に下げる治療をするかどうかを我々医師が判断する際には、頸動脈エコーという検査を行い、頸動脈内膜の肥厚の有無を確認します。最近のエコー装置は大変進歩していて頸動脈の動脈硬化性変化を大変正確に見ることが出来ます。
この検査で、頸動脈に粥腫や内膜肥厚がある場合はお薬で積極的にコレステロールを下げたほうが良いと思います。
吉田早苗さん: あと、女性の場合加齢によって『悪玉コレステロール』が高くなると聞いたことがあるのですが、そのあたりを教えてください。
松尾仁司院長: 心筋梗塞をはじめとして動脈硬化性の病気の発症頻度には性差があり約8割が男性で、2割が女性です。この理由は女性ホルモンが動脈硬化の進行を予防するからですが、女性の場合更年期以降に女性ホルモンの分泌が低下すると急激に動脈硬化性の病気の発症率が上がることが知られています。
本地洋一さん: 今日はお事始めの日です。リスナーの皆様もこの放送を機にコレステロールについて勉強して、生活習慣の見直しを始めても良いと思いますよ。
吉田早苗さん:次回のハート相談所は2024年2月24日(木)にお送りいたします。
また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。