『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第92弾~

2024年3月28日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 令和6年6回目の放送です。

本地洋一さん: 今回の放送のテーマは『腎臓と心臓のおはなし』です。

松尾仁司院長: 今日の主役は腎臓です。

まずはじめに、腎臓とその働きについてお話ししますね!

腎臓は腰よりやや上の背中側に左右1つずつあります。形は一見するとそら豆のようで、握りこぶしほどの大きさで、1つが150g程度の重さの臓器です。つまり、2つで300gですから体重60kgの方だと腎臓は体重の200分の1程度の重さの臓器だと言えます。この小さな臓器に心臓が全身に送り出す血液の20%の血液が流れ込みます。

そして多くの血液を受け取った腎臓は、人が生きていく上に大変重要な役割を果たしています。

『腎臓の役割』

体内の余分な水分を排泄する

人は生きていく上に必要なエネルギーやビタミンなどの物質を主に腸から吸収しています。この時これらの物質は水に溶けた状態でなければ吸収できないので、毎日腸から多くの水分を吸収する必要があります。こうして吸収した水分は、一部は汗や呼気中の水蒸気や便の水分として排泄されますが、それでも毎日1L~1.5Lの水分は余ります。腎臓はこの余剰水分を尿として体外に排泄する役目を果たしています。

腎臓の働きが正常であれば、水分を過剰摂取しても体内の水分量を調節してくれるのですが、腎臓の働きが悪化すると体に水分が溜まってしまい、むくみや息切れが現れたりします。

・老廃物を排泄する

腎臓の働きが悪化すると、体から老廃物がたまってしまうため、尿毒症といって重篤な症状を起こす場合があります。

・ミネラルやpH(酸性度)のバランスを整える

体内のミネラルの濃度は、濃くても薄くてもよくありません。また、身体のpH(酸性度)も、賛成に傾いてもアルカリ性に傾いても様々な不具合を生じてしまいます。これらのバランスを調整している臓器が腎臓です。

・造血ホルモンをつくる

血液中の赤血球は脳や内臓、筋肉、骨、皮膚といった臓器に酸素を運び、二酸化炭素を運び出す働きをしており、骨髄で作られています。骨髄で赤血球を作るために造血の指令を伝えるエリスロポエチンというホルモンは腎臓で産生・分泌されています。赤血球数が減少する貧血という状態になると腎臓がそれを感知してエリスロポエチンの量を調節しているのです。

ビタミンDを、その効果が発揮される状態に活性化する

血圧を調節するホルモンを作る

血圧の調節に関係のあるホルモンは沢山ありますが、そのうち腎臓が分泌を調節しているのがレニンというホルモンです。レニンには、ほかのホルモンと協力して全身の血圧を調節する働きがあります。

・ 体内の余分な水分を排泄する

本地洋一さん: 驚きました、小さな臓器なのに非常に多くの働きをしているのですね!

松尾仁司院長: そのとおりです。ですがら、腎臓がきちんと働いてくれないと人の身体はうまく機能しないといっても過言ではありません。

『今、増えている慢性腎臓病』

慢性腎臓病とは3か月以上続けて尿にタンパクや赤血球が出現したり、尿を作る力が落ちている状態を表します。生活習慣病とも深く密接な関係があるこの病気は日本でも増加しており、患者数は1330万人、20歳以上の成人の8人に1人が慢性腎臓病に該当すると推定されています。

また、腎臓は自覚症状が出にくい臓器で、健康診断で指摘されてもほとんど症状がなく放置されることが多いのが特徴の一つです。かなり重症化するまで無症状に進行することが多い臓器です。

腎機能が高度に低下してはじめて、食欲不振、息切れ、倦怠感、むくみ、体重増加、呼吸困難などの自覚症状が現れます。

本地洋一さん: 本日のテーマは、『腎臓と心臓のおはなし』ですが、そうなると腎臓の機能が悪化すると心臓にも影響が出てくるということでしょうか?

松尾仁司院長: そのとおりです。

慢性腎臓病の患者様が心臓病になる確率は、腎臓が正常な人に比べて男性で3倍、女性で4倍と言われています。つまり、心臓と腎臓はどちらか一方が悪くなるともう一方も悪くなってしまうことが多いため、腎臓と心臓には大変深いかかわりがあるといえます。

本地洋一さん: それはどのような理由なのでしょうか?

『なぜ慢性腎臓病になると心臓病を起こす人が多いのでしょうか?』

松尾仁司院長: 慢性腎臓病の患者様の場合、高血圧、脂質異常症、糖尿病、身体の中の活性酸素が増えることが知られています。高血圧、脂質異常症、糖尿病では糖尿病性腎症、活性酸素は内皮細胞機能を傷害し、腎臓を傷めます。これらは心血管病の危険因子です。

つまり、慢性腎臓病も心血管病も病気を発症する危険因子がオーバーラップしているため、慢性腎臓病の患者様は心臓病を併発することが多いですし、逆に心臓病の患者様も慢性腎不全を合併することが多くなります。

さらに、心臓の機能が低下すると腎臓にも悪影響を及ぼします。これは、

① 心臓のポンプ機能が低下することで、腎臓への血流が減り、腎機能そのものが低下するということです。また、②体静脈のうっ血により、静脈還流が悪くなり、腎静脈もうっ血し、腎静脈の血圧が高くなることで、腎臓に負担がかかります(血液が出ていかないので機能が低下する)。また、カルシウム代謝の異常が心臓や大血管の動脈硬化を促進したり、慢性腎臓病により引き起こされた貧血が心臓に負担を与えたりすることも心不全をさらに悪化させるという悪循環に陥ることもあります。

本地洋一さん: 腎臓が悪くなる要因と心臓が悪くなる要因が共通している場合が多いということですが、両方の臓器を守るためにも高血圧、脂質異常症、糖尿病などをしっかりコントロールする必要があるということですね!

松尾仁司院長:腎臓の細胞は一度壊れてしまうと皮膚や骨などのように再生することがありません。それだけに、早期発見が重要になります。

今までもこのハート相談所で健康診断の重要性を何度もお話ししてきましたが、定期健康診断の採血や尿検査でも腎臓の状態がスクリーニングできます。腎機能が低下すると採血上クレアチニン値が上昇しますし、尿検査で、尿中にタンパクや潜血がでたりします。

本地洋一さん: さきほど腎臓は一度壊れると再生しないとのことですが、健康診断で腎臓が悪いと指摘された場合にはどのようなことに気を付けた生活をしたら良いのでしょうか?

『もし慢性腎臓病と言われたら?』

松尾仁司院長: 慢性腎臓病では病気の進行を抑え、心臓病を予防するために生活習慣

1. 禁煙

2. 肥満

3. 飲酒

4. 過剰な塩分摂取

5. タンパク質を多く含んだ食事摂取

などを見直し、改善することが大切です。

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。

次回のハート相談所は2024年4月11日(木)14:30からの放送になります。